かめだや・東京都羽田
2016.5.8号
いよいよ夏の絶好機! 東京湾奥・浅場のシロギス
今年は5月5日が立夏で、暦の上ではもう夏。東京湾ではシロギスが最盛期に入る時期だ。“夏ギス”が大挙して乗っ込む浅場は広範囲に探るのが鉄則。そこで東京都・羽田『かめだや』のシロギス担当・鈴木祥太船長から、片テンビンで投げてはサビく“ラン&ガン釣法”の優位性をアドバイスしてもらった。
いよいよ浅場へ移動し始めた
今や1年中釣れまくる東京湾のシロギス。小物釣りの目標に束釣り(100匹以上)という言葉があるが、同湾ではもう珍しい釣果ではなくなった。とにかくここ数年のシロギスは異常とも思えるほど。温暖化ゆえか?……天敵がいなくなったのか?……いずれにしても、昔から船釣りデビューの定番として位置付けられているだけに、ビギナークラスでも数釣りの期待が高くなって、嬉しい限り。しかも、これから夏に向けてが、一年のうちで一番釣果が上がる。
「少し前までは中ノ瀬の水深15~20mを流していましたが、最近は12mラインでも食い始めたんです。メスは卵も持ち始めましたから、今後は浅場、浅場へと移動していきます。いよいよ夏の釣りが始まりますネ」と船長。まあ、15~20mという深さも十分浅い部類なのだが、今季は暖冬で、そのラインが事実上の“越冬場所“と化していた。つまり、そこから浅場へ“乗っ込み”始めたということだ。
広範囲に探れる片テンビンはもう一つの利点が
「夏は12、13cmから15cmくらいのピンギス(小型)が交じるようになるので、数が伸びるようになるんです。比率からいうと23~25cm以上の大型2割、20cm前後の中型3割、小型5割の感じ。それらが木更津沖や盤洲の浅場、ともすると海底が見えるほどの水深2~3mまで広がります。こうなると、片テンビンの釣りが有利」と話す。
なぜ有利かというと、一般的にはシロギスは警戒心が強いという性質からきている。浅場になると船の影ははっきり海底に映る。エンジン音も響く。そしてシロギスは警戒して、船の近くから散ってゆく。夏場にシロギス船がパラシュートアンカーで船を流すのは、静かに釣りたいためでもある。ゆえに遠投して広範囲をバリバリ探る=ラン&ガン釣法=という理屈になる。しかし、鈴木船長が言っているのはそれだけではない。実はもう一つ利点があるという。
「浅場でも胴突き仕掛けで構わないんですよ。でも考えてみて下さい。浅場に入ると警戒心を起こしたシロギスの群れは、上層には広がらず、より海底に張り付くようになる。それを胴突き仕掛けで釣ろうとすると、1本バリにするしかない。2本バリでもたるませれば上部のハリを底近くに出来ますが、1匹目が掛かっているわけですから、かなりのリスクを負うことになります。その点、片テンビン仕掛けなら2本バリでも3本バリでも底層近くを自然にトレースできるわけです」(図参照)。
夏の浅場は食い気がバリバリで、ハリ数全部に掛かる率も高いから、両仕掛けは1投で2倍、3倍の差がつく可能性があるわけだ。ビギナーは手間取る片テンビン仕掛けの遠投だが、マスターできるならば、しておいたほうがいいと言われるのは、そんな理由もあったわけだ。
アンダースローの遠投をマスターしよう
さて、遠投は安全のためアンダースローで行うが、やはりビギナーには慣れるまで、少し手強い。『かめだや』では申し出れば、基本を船長が教えてくれるから、あとは実釣で回数をこなすしかない。「もう慣れですから、失敗を恐れずどんどんトライして下さい。コツとして、腕を振り回して投げるのではなく、手首のスナップを効かせてピュッと投げる感じがいいですネ」とのこと。釣り開始時はうまくいかなくても、昼過ぎくらいになると上手にできるようになる人が多いというので、ぜひ頑張ってほしい。
餌に食いつく間を与えるのがコツ
『かめだや』では竿は2本出しまでOK。 夏の時期は1本はチョイ投げで置き竿、もう1本でラン&ガン釣法を実践。後者は前述の通り、遠投してはサビく繰り返しで、竿を45度くらいに立て、チョンチョンと竿を2、3回あおってサビいてくる。重要なのはあおった後に竿を止めること。「チョンチョンは餌の青イソメを躍らせてのアピール。しかし、そのままだと寄ったシロギスが食いつく間がないので、ピタッと止めて、食いつきやすくしてやるのがコツです。これをするとしないでは、だいぶ違いますよ」と船長。アタリは高活性期だから竿先に小気味よくビビビンッとくる。現在主流のPE道糸の場合は伸びないので、ほぼ合わせはいらず、竿をピタッと止める程度で大丈夫だ。
なお、2匹目あるいは3匹目の追い食いは、1匹目のシロギスが掛かって餌が適度に踊るので、道糸にテンションを掛けたまま待っていればOK。ただし、あまり待っても手返しが悪くなるので、10~15秒待って食わなければ巻き上げたほうが効率がよい。
置き竿は、周りが誰もやっていなければ船下でもいいが、やはり少し投げたほうがいい。この場合には胴突き仕掛け(1本バリ)も有効だ。とはいえ、あまり遠投して放っておくのはラン&ガン釣法の邪魔になってしまうので、状況を見て距離を決めよう。注意点は道糸をたるませないように。アタリが出ないし、他の人とのオマツリを招いてしまう。道糸を張っていればアタリはしっかり出る。こちらは糸のたるみを取る程度に竿を立ててフッキングさせる。2本竿の場合、どちらかの竿は必ずポイントに入れておくことが大事。ダブルヒットしたらまず置き竿は合わせてから置いておき、ラン&ガンを回収して再び投げ、仕掛けを海底に落ち着かせてから、素早く置き竿のほうを回収しよう。
最後にもうひとつ、「常連さんは餌の青イソメの付け方を工夫しています。置き竿には食い込みがいいように頭をカットしたもの、手持ちのラン&ガンには何回も使い回せるよう、頭部を付けたまま付けます。垂らしは高活性なら短くて2cm前後、低活性なら長くて3、4cmです」と話してくれた。夏の船のシロギスは、アタリも分かりやすく、引きもよいのでビギナーも楽しめる釣り。ぜひ今夏にチャレンジしてみてはいかがだろう。