新盛丸・千葉県内房勝山港
2016.6.8号
沖のイカファン待望、千葉房総のスルメイカ本格化!
イカファンにとっては初夏のムギイカ戦線が不発気味だったのは残念だが、真夏のスルメイカは期待に応えてくれそうな気配。千葉県内房勝山港から周年イカを狙う『新盛丸』では、5月20日前後からスルメイカ主体に狙いだし、5月末にはトップが30~50杯前後と本格化。そこで担当の艫居正悟船長から今後の展望をレポート。
最近の房総はヤリイカからすぐスルメイカ狙いの傾向
関東近県では寒期のヤリイカ釣りの後はマルイカ、ムギイカ、スルメイカの順でシーズンインすることが多いが、今季はマルイカが撃沈。ムギイカも消化不良で時期を逸する気配が濃厚。こうなるとスルメイカに対する期待が高まるが、今のところ夏へ向けて順調に上昇カーブを描いているようだ。
「うちの港の5~6月は本来、富浦沖から金谷沖辺りまでの浅場でマルイカ、ムギイカだったんですが、東日本大震災以来、とんと見なくなってしまった。だから最近は終期のヤリイカ狙いから、すぐスルメイカ狙いに切り替えていますネ」とは艫居正悟船長。終盤のヤリイカ狙いではスルメイカも交じる。その動向をみながら切り替えを判断していく。今期は5月初旬にヤリイカの模様が悪くなったので中旬からスルメイカを探り始め、23日に21~34杯、24日に36~47杯と好釣。以降も25日2~28杯、26日9~29杯などと序盤戦としてはまずまず。サイズは25~35cmで、遅生まれのニセイカと、ムギイカからすでに育ってしまったスルメサイズ。ポイントも南房の川名前から白浜沖160~200mなので、夏のスルメイカ釣りそのものの様相になっている。
「序盤にしては深いけどねえ。ちょっと潮が明るくなったからかな。まあ、長年イカ船長やっていながら言うのはなんですけど、イカは気まぐれですから探すのは難しい。でも僚船では80杯も出たので、まめに探し回れば釣果は付いてきますから心配はしていませんヨ」とのこと。今後、一潮ごとに成長して、夏の爽快シャワー“スルメイカの水鉄砲"もどんどん強烈になる。秋のヤリイカとの端境期まで、熱いシーンを繰り広げることになるだろう。
やはりスルメイカは直結有利、3本ヅノでも初体験すべし
スルメイカと言えば強烈な引きの大型が何杯も掛かり、巻き上げでも硬い竿が満月というのがイメージ。だからパワータックル推奨で、電動リールもシマノで4000番、ダイワで500番クラスが安心。「中型でもいいですが何回使って壊れ、結局大型を購入したという人が多いです」と船長。まあ、ヤリイカ狙いだと中型でも大丈夫なので難しいいかところだが、大は小を兼ねるので、大型を買って兼用にする手もある。なお、その割に道糸の号数はPE3~4号と細いのがお勧め(通常だとスルメイカは6号)。これはイカ釣りの鉄則の一つ「できる限り速く仕掛けを落とす」ことを実現したいためと、潮が速い場合に余分な道糸フケが出てほしくないためだ。「その分、注意は必要ですよ。5杯も6杯も乗っているのに高速で巻いたらプツンの可能性は高い。竿に伝わる感覚などで掛かり数を察知して、臨機応変にスピードを調整してください」と船長。
仕掛けも昨今は直結が優勢だが、やはり取り込みが問題点。初心者にはブランコ式をお勧めするが、サバなどの邪魔でどうしても釣りにならないなら、直結3本ヅノでトライしてもらう場合もあるとか。「プラヅノの数が少ない分、どうしても乗る確率は低くなりますが、マスターすれば、その後の5本ヅノ以上の通常システムへの道が開けていますから。親切に教えます」という。ただし、ブランコ式も全く必要ないというわけではない。直結で大苦戦の時は、案外ベタ底でブランコ式がフワリと言うときに乗る場合がある。ベテランでも一応、ブランコは少しタックルバッグに忍ばせてあることが多いので念のため。
プラヅノはイカが大きければ18cm、中くらいなら14cmが目安だが、その日のイカの好き嫌いもあるので、乗り具合で臨機応変だ。船長のお勧め銘柄はミラクル針、ピッカピカ針、そしてMDスティックミラーなど。カラーは通常ならピンクとマリンブルー系中心にケイムラをちらりと交ぜれば問題なし。潮が澄んだら薄ブルーなど若干薄めを中心にしていく。
シャクリ後に必ず乗る間を与えてやろう
近年は夏のスルメイカと言えば電動直結。プラヅノ直結で電動リールをONにし、ガンガンとシャクりながら上層へ巻き上げてきたパワフルな釣りが一世を風靡したが、最近はそれだけでは好釣果が出なくなりつつある。「電動直結が全くダメというわけではありませんが、通用しない場面も多くなってきました。ここ数年、イカがおかしいと言われているじゃないですか。その頃からです。だから今、お勧めしているのは手巻き直結。電動は巻き上げ時だけです」と船長。そのものズバリ、電動巻きを手巻きに代えた釣法だ。
電動では竿先を下へ向け、巻き上げスイッチを入れて振り幅を小さくシャクリ続けていく。 ツノは横ブレをしながら上層へ昇る。手巻きも、その横ブレを演出すべく、竿先下向きから水平少し下までのシャクリを入れつつ、手巻きを加えていく。つまり、ブレ幅と巻き速度の微調整が“手巻き直結"ではやりやすいので、その日のスルメの乗りパターンをより正確につかみやすい、ということだ。
なお、船長がやってはいけない事柄を一つ。「竿を振りっぱなし、つまりシャクリっぱなしは絶対にダメ。乗りませんネ。これは一段シャクリや二段、三段シャクリを繰り返すブランコ式も同じ。直結は何回かのシャクリに1回、ブランコ式は1ストローク終わりの竿先頭上の位置で静止状態、いわゆるポーズして、ツノに飛び付く“間"を与えてあげるのが大切です」とのことだ。最後にもうひとつ。船長の指示ダナは海底からも多いが、中層、例えば「水深160mだけど中層に反応があるから、下が120mで上90mまで探って」の指示もでる。この倍、仕掛けの落とし込みで乗ってくることも多い。落下中に糸フケが出るなど竿先に変化が出たら、とりあえずクラッチを入れて仕掛けを止め、乗りを確認してみよう。
これから秋までどんどんパワフルになりつつ、身は厚く、お目当てのキモもグッと大きく立派になっていく。身の船上干しは定番レシピ。移動時など時間を見つけてせっせとイカを割こう。また、自家製の塩辛もいいが、ワタを崩さずそのまま凍らせて輪切りにして賞味するルイベも、暑い夏に食べるからまた絶品。夏のスルメイカにぜひチャレンジを。