信栄丸・千葉県南房乙浜港
2016.7.22号
夏イカのシャワー満喫、南房乙浜のスルメイカ快調!
夏のイカと言えばスルメイカ。最近は釣期がはっきりせずに苦戦気味の年も多かったが、好釣り場のひとつ、千葉県南房乙浜沖では今季、5月後半から安定した乗りを見せ、トップがほぼ50匹台をキープと快調だ。イカを得意とする乙浜港『信栄丸』の安田仁船長に好釣術を聞いてから是非、スルメの豪快な水鉄砲をブシューッと浴びにいこう!
今季の南房スルメイカは超安定優良株
スルメイカと言えば昔は春から秋にかけてがシーズンで、特に夏が魅力。イカの中でも獰猛(?)、それとも食いしん坊(?)のゆえか、爆発的な乗りを見せるイカとしてファンを楽しませてきた。暑い真っ盛りにグングン育ち、すぐ肉厚で胴長40cm近くの大型になって、竿をひん曲げる。3~4匹掛かろうものなら電動リールが悲鳴を上げて道糸も止まってしまう。しかも、取り込み時に容赦なく釣り人に浴びせる水鉄砲の威力は、強いながらも夏には爽快で、嫌がりながらも夏の風物詩として享受しているファンは多いのである。そのスルメイカも震災以降、少し釣れるパターンが変化し、ベテラン船長たちの間でさえ、把握できなくなりつつある。しかし、今季の南房乙浜沖は、今のところ例年通りのパターンにはまっていて好調をキープ。ムラが少なくイカファンにも釣行しやすくなっている。
「今期はいいですねえ。ニセイカ(昨年の遅生まれとも言われる)が交じって当歳ものの25cm級が良く乗っています。北は江見沖あたりから南は目の前の白浜沖辺りまで狙っていますが、群れは大きくてほうぼうにいるし、新しい群れも結構見つかるんで。この分だと、昔の通り、ヤリイカと端境期になる9月まで、ちゃんと全うしてくれそうですね」と船長は話す。『信栄丸』は5月のゴールデンウイーク明けから狙い始めたが、イサキ優先で出船していたため、本格的に出船し始めたのは6月初めから。すでに幼少ムギイカ期を通り越した25cmが主体に乗り、これに28~30cm超のニセイカサイズがちらほら。しかしながら釣果はトップ平均50匹前後と良く、ものすごいバカ釣れがない代わり、トップがヒトケタ以下などというド貧果もなく、いたって優良な成績を現在まで続けている。
まあ、「イカのことはイカに聞け」という船長もいるくらい、沖のイカの動向はつかみにくいが、現状の釣果のムラのなさから判断すると、終期の9月まではしっかり乗ってくれそう。スルメイカは一潮ごとにグングン大きくなるから、後半になればなるほど豪快さは増す。8月になればもう、身の厚さが1cm近くもあるやつが主体。胴を開いて船上干しにしておけば、バッチリ良い仕上がりとなるのである。
もっかサバは少なくビギナーはブランコ式でもOK
獰猛なスルメイカだが、最近は少しではあるがおとなしくなった、あるいは頭が良くなった感がある(?)。一昔前のスルメ釣りの代名詞“ツノ直結電動シャクリ”は現在では、ほとんど通用しないのだ。「もう、昔みたいに夏のスルメイカはやみくもに、ガシャガシャ電動リールでしゃくりまくって、イカの方も勝手に乗るという釣法は消え去りました。よりヤリイカ釣りの方法に近づいてきて、しっかり探ることが大切になってきます。ただ、獰猛さが失われたわけじゃないですよ。乗ればグイグイきますから」と船長。
その割には、仕掛けに関してはそう神経質になる必要がないのが不思議。プラヅノはカラーが薄ブルー、濃いブルー、ケイムラなど青系一辺倒の組み合わせでも全く問題なく、よほど状況の悪い時でなければ薄ピンクや若草色は交ぜる必要はない。長さも14cm、18cmどちらでもOK。ただ、今後は大型が中心になってくるので全般に頑丈な(カンナ=針=が太軸など)18cmがお勧めだ。仕掛け方式は、どうしてもツノが縦になる直結式が有利だが、取り込みが不安というビギナーにはブランコ式もOK。今のところサバが少ないので、プラヅノを飲み込まれて、えらく苦労するという事態は少ない。「ただ、直結式もツノ数をそう多くする必要はないと思うんです。一般的には7~8本でよく、よほど自身がある人でも12~13本でいいのでは。潮回りして1投勝負ですぐ移動という釣りなら、多点ツノも有効かもしれませんが、南房ではあまりそういう釣りはしないので手返しを優先した方がいいです。今のところ、ブン流しの場合もかなりありますから」。
なお、道糸の号数はPE3~4号を推奨。昔のヤリイカ仕様と言えるが現在は糸も進歩して強くなっているし、昔ながらの5~6号では潮が悪いとフケがすごく、イカの触りも分からなくなってしまう。昔の電動直結なら太い方がいいのだが。ただし、電動リールのパワフルさは必要。中型でドラグがしっかりしている物を選ぼう。35cm以上の大型が5~6匹乗ってしまうと、ガチガチにドラグを締めてもズルッと滑る場合があるという。最悪、モーター焼き切れという場面も……まあ、それはそれで語り草になって勲章になるとも言えるが…。
指示ダナ上限からの落とし込みで乗せろ!
「今は圧倒的に落とし込みで乗せる方法が主流で、釣果もいいです。これは直結式もブランコ式も同じです。私が指示ダナをアナウンスしたら、その上限から始めて乗るまで、乗らなかったら下限まで落とし込み誘いをやってください。仕掛けが下限まで来てしまったら、そこから段シャクリで誘い上げてきますが、これは長く続けても乗りません。さっさと見切って指示ダナ上限まで巻き取って、再び落とし込んでいった方が有効です」と船長は話す。
落とし込の方法にもひとつ、決まり事があって“必ずしっかり止めを入れる”こと。この動作はイカがプラヅノに抱き着く「間」を与えることと、各泳層でプラヅノをしっかり見せること。「現在は水深が130mくらいから深くて200mくらいまでですが、浮いている反応が良く出ます。大体140mからが多いです。例えばのその指示ダナなら、まず140mで親指でサミングして止め、20~30秒待ちます。このとき竿先は下向き。水平くらいだと当たったとき竿を聞き上げて掛けられないですから。そして当たらなければ、5~10m落とし込んで、また繰り返しです」。止めている時にググッとした乗りや糸がフケるなどしたら、聞き上げて乗りを確認すること。スルメイカが大型化しているので、このあたりの変化の出方は意外と分かりやすい。
なお、乗ったら追い乗りを期待して、電動リールの低速でまずは20~30m巻き上げてみる。上部のツノに乗った場合は下のツノがヒット点を通過したときに乗る可能性があるからだ。もし、追い乗りがなければその後は中速で巻き上げていく。
「深いので乗りが渋いと置き竿にしてしまう人がいますが、出来れば手持ちで頑張っていただきたい。その分釣果も伸びますから。また、活発な日はいいですが、渋い日は1度乗ったタナを、次回にしつこく何回も落とし込んでみることも大切です」とのことだ。夏のスルメ釣りはその重量感や引きの強さ、取り込みでの派手な水鉄砲攻撃など、イカ釣り全体でも一、二を争うパワフルさ。ぜひ一度チャレンジしてみてほしい。