鴨下丸・横浜磯子八幡橋
2016.8.8号
やっぱり夏を釣らなきゃ! 東京湾の照りゴチ絶好
東京湾で近年、大人気のマゴチ。ここ数年は早くも3月中旬頃から開幕し、序盤にサイマキ(エビ)餌で大型が続出する。しかし本来、通称“照りゴチ”と言われるように、猛暑の夏が最盛期。カンカン照りで煮え切った東京湾際の浅場は、大型交じりで数釣りが可能だ。そこで「やっぱコチは夏釣らなきゃ!」と豪語する横浜市磯子八幡橋『鴨下丸』の望月亮英船長に、ビギナー必釣術をインタビュー。
真夏の浅場が濁るとより活性化する!
「最近は春の序盤戦で派手に大型が連発するから、梅雨に入るとなんだかしぼんできちゃうマゴチ釣りだけど、本来は夏が旬の魚だからね。カンカン照りに釣らなきゃ」とは、東京湾のマゴチ釣りでは一目置かれる望月船長。『鴨下丸』は序盤戦も好調だったが、梅雨そして真夏の現在と、衰え知らずで快調に飛ばしている。サイズもまだまだ60cm級は頻繁に出るし、暑さ対策で午前、午後の半日船にしているものの、トップは頻繁に5匹を超えてくる。
「東京湾奥は夏の猛暑で照り込み、プランクトンなどが死んで海が赤っぽくなるでしょ。そうなると底は暗くなってマゴチの警戒心が薄れ、浅場にいるハゼやキスを狙って活発化する。これが“照りゴチ”。この時期は浅いのに引きが強いから面白いですよ~」と船長。余談だが、この時期は“追いゴチ”と言って、釣れたメスの尻を追ってオスが海面まで追ってくることがあるそう。それを玉網ですくったことは一度や二度ではないと言う。それほど活性が高いということだ。真夏に『鴨下丸』が狙うのは、この時期でも比較的大きいサイズが揃う目の前の富岡沖一帯。水深は10mより浅く、多少根の荒いポイントだ。例年10月中旬までマゴチを狙うが、照りゴチを楽しめるのは8月一杯とのことだ。
真夏はハゼ餌が主流でハリを軽く
タックルはいたってシンプル。マゴチ竿&小型両軸リールのセットにPE道糸2号、船宿のオリジナル三日月オモリ15号を介し、ハリス&ハリを結ぶだけだ。このシンプルさが首振りダンスの名人と言われるマゴチのファイトをより楽しくさせるのだ。序盤戦と照りゴチ期で少し違うのはハリ。
「春から餌はサイマキ(クルマエビの幼体)を使っていましたが、夏は暑くて持たないんですよ。だから照りゴチのメイン餌はハゼになります。その分、餌への負担を軽くするために、ハリをスズキバリからチヌ5号にします。これは今の時期のデキハゼに合わせてます。
ちなみに大きいハゼならチヌ7号です」。なお、ハゼは生きがいい方がいいのは当然だが、もっか『鴨下丸』の船着き場でバリバリに釣れるので、早めに来て確保するのも一手だという。もちろん、半日船で3匹(サイマキかどちらか)付いており、足りない場合は1匹100円で販売もしている。
ビギナーは7秒待ちのアワセでゲット!
「この釣りは餌の違いによっても釣り方が違うけれど、同じ餌だったとしても各人によって、またレベルによっていろいろな方法があります。今回はビギナーが何とか1本ゲットできるように、超シンプルで分かりやすい方法をレクチャーしておきます」と船長。
マゴチ釣りといえば、どこで合わせるかが最大の問題点だが、紹介するのは、そこをきっちりきめてしまうタイム釣りだ。全員の基本はオモリ着底後、1mオモリを切って待つ。これは絶対に守るセオリー。だがハリスによって違ってくるはず……と思うのは当然。違ってくる場合は、実は船長が“ハリスの長さ”を変えてと指示するわけだ。こちらのほうが合わせやすいから。次に、待ちぼうけだとタナが合わなくなってくるから、オモリを着底させて棚の取り直しをする必要があるが、これも船長が細かく「●秒に一回、タナを取り直して」などを指示を出してくれる。これで後はアタリを待つだけだ。
ではもし、アタリが到来したら……ここからがビギナー向けのタイム釣り。「コツンとかググッとか、竿先に何か違和感を察知したら、若干(10cmくらい)竿を送り込んで7秒数えましょう。そして、ゆっくりめで竿をしっかり立ててアワセを入れる。ハリ掛かりすれば、竿を頭上で保持したところでググググッと引き込まれていく。これを確認したら、テンションを保ったままリーリング。声を掛けてくれていれば、海面まで来たらすぐ玉網ですくってあげますからネ」とのことだ。ちなみに望月船長のタモ取りは芸術的速さだが、ちゃんと理由がある。とにかくマゴチの口は堅い部分が多く、ちゃんと刺さらずにテンションだけで上がってくる魚も多いのだとか。
そういう魚は海面に出た途端、バレる場合が多い。これを何とか防いでいるわけだ。「アタリの約半数はバラシだよ」と船長が言うほどなのだ。アワセを最初ゆっくりやるのも、口の中を滑らせて、ハリがしっかり掛かる所を探す意味もあるという。バシッという鋭いアワセでは、すっぽ抜けも多いわけだ。なるほど、マゴチ釣りは奥が深い。「ビギナー大歓迎。マゴチの魅力をしっかり教えてあげますから。それに暑さ対策で半日船ですから、子供さんでも飽きずに楽しめますヨ」と船長。この夏、是非とも一度チャレンジを。ハマりますよ~。
血抜きをしないで神経締めが美味しく食べるコツ
マゴチは高級魚。鮮魚店にはなかなか出ないし、出てもいいお値段だ。それだけおいしいってことだ。「だからゲットしたら、いい状態で持ち帰って、おいしく食べてもらいたい。それには神経締めが一番。帰港後に言ってくれればやりますからネ」と船長。頭部に包丁をサクリと入れて、血抜きする方法もあるが、船長曰く、血にも旨みがあるから、血抜きはしないほうがいいと……実際、食べてそう感じる人も多いそうだ。締めた後は内臓をとらずにそのままで新聞紙にくるんで冷蔵庫へ。これで1週間はもつという。
まあ、プリプリの刺身がいいなら当日でもよいが、大体、締めてから4日後くらいが旨みも出ていいという。「これだと時間があるときに捌けばいいしね。なお、内臓周辺は身の中へ抜きずらい骨が入っていますが、これは慣れていないと身をズタズタにしてしまい、刺身どころではなくなります。いい方法は身の後ろの方を刺身にして、内臓があった周辺は唐揚げなどにするといいですヨ」と話してくれた。とにかく知識が豊富な望月船長。当然、ハイテクニックなども熟知しているから、ステップアップを望んでる中級者も、訪れてみてはいかが。