つちそう丸・静岡県網代港
2016.8.8号
東伊豆・網代沖のクロムツ、好機到来!
ようやく東日本で梅雨明けが発表され、いよいよ夏本番! 夏の釣り物は色々あるが、観光客で賑わいを見せる静岡県東伊豆エリア人気の釣り物と言えば、網代沖のクロムツだ。今回のレポートでは、網代沖の上潮と底潮の温度差がクロムツの喰いにどう影響するか、そして今後の群れの捕食&移動傾向、そして気になる今後の釣果の予想を網代港『つちそう丸』土屋通大船長に聞いた。
上潮は夏の潮だが、底潮は…1ヶ月遅れ!?
「7月半ばくらいから半夜クロムツ船をスタートさせました。初日こそ、潮も悪く一桁でしたが、日を追う毎に竿頭の釣果は伸びていますヨ。直近ですと、24匹なんて日もありましたが、一番良い時期には竿頭70~80匹行く時もあるので、さらにこれから少しずつ数が伸びていくと思います」と船長。船に設置されている海水温計を見ると、表層は26℃。シイラなどの回遊もあって一見すると夏の潮だが、戻ってくるオモリも冷たく、底潮はかなり温度差があるようだ。「底潮がまだまだ冷たくてね~。クロムツは中深場に住んでいる魚なので、本格化するのはもうちょっとという感じです。底潮は凡そ1カ月遅れだと思います」と船長。クロムツが日中生息している水深は100~200mと深みにいる。海底付近の潮が冷たいと、そこからクロムツもなかなか浅場へ捕食しに移動してこないと言う訳だ。
クロムツのベイトは2~3cmの小魚“クサヤ”
「この辺では昔から漁師の間では“クサヤ”って呼ばれている2~3cmの小魚がいるんだけども、その魚は海流(潮)に乗って回遊してくるんです」。クサヤはカタクチイワシのように表層ではなく、底層を回遊するため、底付近に住んでいる魚は勿論その回遊を、今か今かと待ちわびているわけだ。
「この前も近くの定置網にクサヤを捕食している40cm級のマアジが入ってね。それはたまげるくらいに脂が乗っていたらしいんです。恐らくこのアジもクサヤを追ってきて網に入ったんでしょうね」。このアジと同様にクサヤなどのベイトを追って定置網にクロムツが入る事も良くあるそうだ。「クロムツを釣った時に口からクサヤをドバッと吐き出す事があるんです。そうなったらクロムツにも脂が乗っていますし、釣果も上がりますね」と船長。網代港の沖合には水深800~1,000mの熱海海溝がある。クサヤはそこから上がってくるのだろうか。
盲点!魚は自分の遊泳層より下は見えない?
「今年はサバの回遊もほんと少なくてね。いつもなら6月には回遊して8月ともなると嫌でも釣れてくるんですが、ようやくここ1~2日回遊してきたような感じですネ」。船上で明かりを炊いて40~50mまでは小魚が集まるのだが、本来80mくらいの場所まで明かりがぼんやり届いて、そこにも小魚が集まる。、それを目がけてムツが水深90m付近の底から約10m上がってきて、捕食をし始めるのが理想なのだ。そこへ釣り人の仕掛けが入り、活性の高いムツの群れを釣る。船長はそれを狙い日々出船していると言うわけだ。 「今年はこの80mラインのベイトがまだ集まらなくてね。魚の視界は上には広くて100mほど上まで見えているんで、80mくらいまでなら全然上がってくるんです。逆に下は全然見えていないんだよね(笑)。私の親父は網代の中でも素潜りの名人だったんだけど、イシダイを突く時には海底の岩に身を潜めて魚が自分の上を通るのを待って真下から一突き。
そうすれば簡単に取れると私が子供の時に教えてくれたもんだよ」。その修正を応用した釣り方が、サンマのミンチに塩を混ぜ、サンマのダンゴを作り、その中にサンマの切り身を刺したハリを仕込む。魚群探知機で上から反応を見て、60mラインにいるであろうマダイの反応に目がけて海面から落としていく。すると、60mラインにあったマダイの反応が40mラインまで上がってくるのが魚群探知機でもわかるのだとか。魚の上層に対する注目度はそれほど高いのだ。
三又サルカンはマストアイテム!
竿は2m前後で120号のオモリが背負えて、軽くて使い慣れているものがベスト。調子はあまり関係ないが、オモリ負荷80号くらいだと若干竿がオモリに負けるくらいなので、ちょうど良い。ワラサ用のワンピース竿がある人はそれでもOK。オモリは120号。潮が速くても船中全員統一して使用する。リールは中型電動リール、道糸はPE5号300m。仕掛けは幹糸12号枝間は1m20cmで枝スの数に応じて三又サルカン(中)を入れる。枝スは8号50~60cm、ムツバリ16号を使う。
仕掛けを自分で作成する人は3~5本仕掛けを作ってきて、サバが多い時には3本。餌取りが少ない時には5本を使用すると良い。釣り場までの航程は約10~15分。水深は75~90mのカケアガリで変化のある場所を狙う。付け餌はサンマの切り身が無料で配られるが、サバが釣れた場合は自分で捌いて短冊にしよう。「サンマは食いが良いけど、餌取りに取られて落ちる可能性があります。新鮮なサバの切り身は餌持ちが良いので、それを考えて時々で餌を変えるのがベストですね。ドジョウみたいなものはかえって釣果を落とす可能性があります。どうしてもやりたい人は試してください(笑)」。
時合と見たら手返し良く数を伸ばそう
「クロムツが釣れた場合、右利きの人は左手で三又サルカンを持ち、右手で魚を外し、餌をつけて、すべて釣れた魚が取れたらすぐに落とす。漁師はそのやり方で時合に釣果を伸ばします」。オモリが海面下に吊り下がっていた方がテンションがかかってやりやすいのだ。
「ハリは16号あれば、クロムツにも飲まれなくて簡単に外せます。ハリが小さいと飲まれてしまって手返しが悪くなりかえって逆効果なんです。」と船長。狙いダナは船の明かりが効いていない時には底から1~5m。明かりが効いてくると3~10mでそこまで上になれば大きな40cm級のアジも交じるのだとか。9月末まで狙えるクロムツ釣り、夏休みには最高の釣り物だ。