船宿まる八・東京都平和島
2016.10.8号
やはり東京湾の顔! LTアジ船は秋も安泰
東京湾のスタンダードな釣り物と言えば、季節に関係なく釣れ盛るシロギスとアジ。今秋、シロギスは少し落ち込んだが、アジは夏の小型の数釣りから引き続き好調を維持。しかもLT(ライトタックル)船の湾奥狙いでは、超浅場で25~38cmの大中型が乱舞。そこで、東京平和島「船宿まる八」のLTアジ担当、高橋広司船長から浅場LT術をレクチャーしてもらった。
数釣りは好調そのもの、秋はさらにサイズアップ
「夏の小型数釣りは依然続いていますが、今度は25cm以上の良型が盛んに食い始めました。ちょっと前まで木更津~長浦沖で20cm前後の束釣りなど数釣りをしていたんですが、そろそろ横浜の方もどうかなと9月下旬に試してみたら、25cm以上、最大38cmまでがバリバリ食ってきたので、現在は鶴見~本牧沖をメインに狙っています。このエリアはLTアジの鉄板ポイントなんですが、潮が濁っていたり、曇天だと水深8~9mなんてところで食いますから、面白さはピカイチです」と船長。現在の水深は8~30mで、平均的には15~20m。釣果はトップで60匹台以上、最低は悪い時で15匹程度。型が型だけに十分な状況と言えよう。
確かに夏の海から秋の海へと変わる端境期だが、まだ海水温が25℃前後もあるところを考慮すると、当分は浅場の釣りが続くはず。というよりも、近年は冬になっても上記の水深で釣れ続けるパターンが多いので、ベテラン、ビギナーを問わず楽しめること請け合いだ。
クッションゴムを付けずに微細なアタリをキャッチせよ
タックルは定番でOK。ライトタックル・アジのタックルと言えば今や釣具店にはばっちりラインアップされており、多少の調子などの差はあれ、大きな違いはないから、好みでよし。ただ、仕掛け全長が2m前後なので、ビギナーはあまり短い竿だと取り込みなど扱いに苦労するかもしれない。仕掛け系で船長が気にするのはハリスの号数。
「湾奥の標準はハリス&枝スとも2号なんですが、食い渋った時は1.5号をお勧めします。たった0.5号の差なんですが、断然食いが違ってきます。それと同じ理屈で、食い渋り時は3本バリの方が確率的には高くなります。 ビギナーの方には最初、標準の2本バリを勧めていますが、慣れたら3本バリにするのもコツですヨ」とのこと。
もう一つ、『船宿まる八』流は片天秤とハリスの間に装着するクッションゴムは付けない。「食いがいいとはいえ、やはり浅場なので潮の色や空の明るさなど、ちょっとしたことで影響を受けやすく、アジは警戒心を高めるんです。
その場合、アタリがチョンチョンチョンなど、かなり細かくなる。クッションゴムが付いていると、その微妙なアタリが消されてしまう。天秤からハリス直結だと、これが出てくれますから」との理由からだ。
コマセ振りの後は、ゆっくりタナ合わせがコツ
LTアジはイワシミンチを寄せ餌に使ったコマセ釣り。海中に振り出したイワシミンチが漂っている場所に、いかにアジを寄せ、仕掛けのハリに付いた餌を食わせるかだ。『船宿まる八』流を紹介しておくので、釣行したらぜひ実践してほしい。東京湾内のアジ釣りのタナは、昔から「底から2m」という言葉がスタンダードとして受け継がれている。つまり群れは海底からあまり浮かないということだ。ちなみに相模湾などでは、底から10m前後上層など、浮く場合がある。
このため、イワシミンチ・コマセを撒く方法にもベーシックな方法が普及しているが、各船宿では船長たちが長年、釣りに携わっているから、微妙に御当地流が存在する。どの方法もなるほどと思えるテクニックばかりで感心するが、『船宿まる八』の高橋船長流はタナ合わせでの繊細テクだ。
「ビシ着底後、1m上げてコマセを一振り、さらに50cm巻き上げてもう一振り。これでアジの群れがいる低層にイワシミンチが拡散し、アジが寄り始めます。この2度振りまでは、どの船宿もあまり何mの差はあれ、ほぼ変わりません。まる八流はここから50cm上げて食いダナの2m合わせる時のアクション。
2度目のコマセを振ったら、すぐ50cm巻き上げないで、少し待ちます。これで全長2mの仕掛けが潮に馴染む。つまり天秤を支点に斜め下に伸びて、コマセと同調する。それからごくゆっくりと50cmを巻き上げてきます。大体、この巻き上げ時に一発でいいアタリがでますから」と船長。
これは、ハリスが馴染んだ状態=張り気味だからいいアタリが竿に出るわけだ。こういう良いアタリの時は、LT釣りでも通常ビシ釣りでも、ヒット時にハリ先が上を向いていて上アゴにガッチリ掛かり、バレにくい時が多いのだ。
たった50cmの何気ない動作だが、かなり重要な項目であることは明白。特にビギナーの皆さんには実践していただき、おいしい東京湾の金アジの釣果を伸ばしていただきたいものだ。