長崎屋・神奈川県 横浜本牧港
2016.11.22号
横浜沖のマダコ快調、正月おせち用をゲットしよう!
もうすぐ師走の12月。年末はあっという間だから、早めにおせち料理の段取りをしておかなくては……そんなことを考えている釣りファンに持ってこいのターゲットが、東京湾のマダコだ。釣魚にはおせち料理の適材になるものが多いが、その代表がタコ。縁起の言葉“多幸”からきているが、もっか横浜沖一帯でツ抜けをするなど快調だ。そこでマダコの老舗、横浜本牧港『長崎屋』の長崎恵夫・大船長に必釣法のアドバイスをもらった。
絶品の江戸前マダコがトップ10杯超の好況
東京湾のマダコは兵庫明石産と並んでブランドものだ。最近はモロッコなど外国産のものでさえ結構な値段がするが、地ダコと書かれて売られている日本沿岸産はひと際、値段が高い。その頂点に君臨するのが明石産と、江戸前と呼ばれる東京湾産というわけだ。また、釣りとしても、羽子板のような板に引っ掛けバリが装着された“テンヤ”という道具が昔からあり、カニなどを縛り付けて釣っていた歴史がある、由緒あるターゲットなのだ。
そのマダコ釣り、同湾のアジやシロギスなど他のジャンルに比較して愕然と釣果の数字が低い。はっきり言ってヒトケタ違う。 5杯で上出来、10杯釣れればウハウハ。オデコ(0杯)でも、普通の釣りなら激しく落ち込むが、マダコなら「まあ、しょうがないか」くらいである。最近こそ、温暖化の影響か常時よく釣れるようになったが、それでも通常は水温が低くなる冬場は釣果が落ちる。しかし、今季は11月半ばになっても状況は良い。
「今期は今頃になってもツ抜け(10杯以上)が結構出るんですよ。この前は15杯なんて人もいたし。さすがに開幕の初夏から晩夏みたいにオデコ無しなんてことにはならず、残念な人も出てしまいますが、それでもオデコ率は低め。軟らかくてうまい500~800gくらいのやつが中心に掛かっているけど、これは9月の遅生まれのやつだね。それが多いから安心だ。もちろん春生まれの2kg前後の大型も交じってくるから、スリルもあるし。今季も12月いっぱいは乗合を出せる状況ですよ」と大船長。
しかも、マダコは生でも茹でてからも、冷凍しておけば最低でも2カ月くらいはもち、味も落ちない。早めに釣行してゲットし、正月用としてお母さんに差し出せば、株が上がること間違いなし。また、変な話、タコ釣りは“腕”が絶対というわけではなく、終日、一生懸命飽きずに小突いている人がいい思いをすることが多い。だから、お父さんだけではなく、初心者のお母さんや息子君が直接チャレンジしにいっても、なんら問題はない。正月を“多幸”尽くしにするよう、ぜひとも頑張ってほしい。
道具は全て無料レンタルが初心者には魅力
マダコ釣りは前述したように、イシガニなど餌を巻き付けたテンヤという道具を、糸を介して海底を小突く釣り。釣り竿を使わない特殊な方法なので、一式すべてを無料貸し出している船宿が多い(テンヤは紛失すると500円)。もちろん『長崎屋』もそうなので初トライでも安心だ。ただし、マイタックルを所有したい人のために釣具店で各種販売もしているため、一応、仕掛け図を提示しておくので、参考にしてほしい。
「初心者が気を付けたいのは根掛かり。もともと、うちはマダコの好適地である横浜市の沖一帯の岩礁帯をメーン釣り場にしているため、全く根掛かり無しという保証はないです。テンヤも頑丈だし糸も太いだけに、掛かると外すのにコツがいる。初心者も闇雲に引っ張るだけだと反動でケガや落水の危険もあるので、ガッチリ掛かってしまったら無理にやらず、申し出てください」とのこと。
なお、釣れたマダコはクーラーなどボックス物に入れても、ほんのわずかな隙間からニュルッと出てしまうことが多い。だから口を結べる袋が必要になり、野菜の玉ネギなどが入っていたネット袋や、洗濯ネットをが多用される。これもない人には船で用意しくれるから安心だ。
もうひとつ、船上のマダコの保管には氷を使わないので、乗船代に氷は付かない。飲料用など自分のクーラーに使用するなら持参しよう。
道糸にモタッとしたアタリを感じたら長めに待て!
「正月用マダコの必釣法?うーん、夏も冬も飽きずに小突き続けるのが第一ですよ。一日にアタる回数がそう多くないから、これが結構、忍耐が必要で難しいんですヨ。 でも、今期は今のところ、オデコが少ないから期待して小突き続けてください」と大船長。
シーズンを通した基本的な釣り方は図にしておくので参考に。なお、それでも冬期のちょっとしたコツはないかと聞いたところ、あえて言えば当たってからの待ち時間だという。
「マダコは水温が高いほど活性がいいので、低水温の冬は動きが悪いんです。小突いているうち、モタッと少し重たくなるのがアタリですが、夏は5~6秒待って大アワセと教えます。ただ、冬場は10秒くらいそのまま小突き待ちをした方が、ガッチリ掛かり、水面などでのバラシを抑えられますよ・・・とアドバイスしています」。やはり、冬場は餌付きテンヤを見つけて足を掛けてから、頭部付近まで覆いかぶさるのに、時間が掛かるようだ。ただ、長く海底にテンヤを置くと根掛かりが心配にもなる。
「当たっている場合は、すでに当たった時点で足などがハリの先を覆い始めているので、待ってもまず根掛かりはないんですよ」と船長。なるほど納得。だから、長く待った後は、思い切って一手二手としっかりアワセを入れたほうがよい。もうひとつ、乗船人数が少ない(10名くらいまで)と左舷の片舷流しにする。これは各人が常に新しい場所を探るので確率的には平等。ただし、人数が多めだと、普通にスパンカーを立てて両舷に釣り人を乗せる。この場合、他の人が探った同じ場所を探ってしまうこともあるので、少しテンヤを投げたりしてコースを変えるのも一策だ。
最後に、マダコの調理法をレクチャー。生を冷凍保存する時は、内臓も何も取らないでそのまま冷凍すること。使うときは冷蔵庫で解凍していき、完全に戻る前の、僅かにシャーベット感が残るときに内臓を取り、塩もみでヌメリを取るとやりやすい。冷凍するとヌメリがかなりなくなるが、表面や吸盤周りの汚れもあるので一度も塩もみなしはNG。
生の場合は、まず頭部を裏返して内臓をきれいに取り、適度な塩(1kg級で、ガバッと一つかみ程度)で揉み、水洗いしてヌメリ&汚れを取る(生はこれを2回ほど繰り返し)。茹では沸騰した鍋に足から入れていく。茹で時間は中小型(500g~1kg)1~2分。大体、kg=1分が目安なので、500g級は半分だから30秒と考えておけばよい。茹で過ぎると冷めてから硬くなるので注意。茹でダコにした後は、酢ダコやマリネなど、各人自慢のおせちレシピでどうぞ!