蒲谷丸・神奈川県金沢漁港
2017.2.8号
東京湾口の深場LTウイリー五目が面白い!
2月は世間でニッパチと言われ、売り上げが伸びない月らしいが、釣り船でも2月はどちらかというと閑散期。最低水温期プラス釣り物が少ないためか、よくそう言われる。しかし、神奈川県金沢漁港『蒲谷丸』が予約制で出船させている深場LTウイリー五目船。これは現在、意外と楽しい! さすがにバカスカ数は伸びないが、良型アジなどを中心にマダイ、アマダイ、マハタ、マトウダイ、クロムツなどうれしいゲストが多彩に顔を出し、楽しいことこのうえない。蒲谷政徳船長から深場のウイリー術をインタビューしたので、ぜひチャレンジしてみては、いかが。
閑散期の2月にも楽しめる深場の五目釣り
船釣りにとっての2月とは、一般的に言われる年末年始休暇から成人式連休の一連で資金を使い果たし、軍資金がないという意味合いよりも、最低水温期を迎えたうえ、ターゲットが少なくなるという意味合いの方が強い。
浅場メバルなど一部魚の開幕はあるが、総じて釣り物選びに困るのが2月といえよう。その点から考えると、今回の深場LT(ライトタックル)ウイリー五目は渡りに船。確かに入れ食いになったりはしないのだが、アジを中心に、小気味良くてしかも美味しい魚たちがコンスタントに掛かり、楽しさでは特筆なのだ。
「深場ウイリーは南房館山沖から洲崎沖、また内房保田沖から三浦の剣崎沖と、ポイントが若干遠くはなるんですが、いい魚が揃うのが魅力ですね。今は水温が一番低くなる厳寒期で、多くの魚が深めにいますから、狙う水深は平均して100m前後。
そのラインの魚礁とか根周りを狙っていきますが、基本的にアジなど濃い魚探反応が出た所を中心に狙っていきます」と船長。そういう反応が出ている場所の方が潮が良かったり、地が良かったりすることが多く、反応が出ているアジなどのほか、他の魚も活性がいいことが多いのだ。
「深場ウイリーはいつでもできますよ。うちではちょっと休んでいたけど、1月14日から再開してます。土日に出船することが多くなるんですが、これから6月くらいまではやりますね」とのこと。まあ、この時期、浅場のターゲットは結構きつく、この水深だと安定感があることは確か。
マダイ、アマダイ、マハタなど多彩なゲストは脂が乗っていてうまいし、電動リールがあれば深すぎず、浅すぎずのお手頃水深。防寒をしっかりして臨めば、楽しい釣りになるだろう。
水深100m前後でプラビシ60号はありがたい
この釣りは名の通りウイリー釣法が基本になるが、この釣法にはバリエーションがある。 暖期で高活性、餌取りの小魚も多いときは仕掛けを全部ウイリーバケにして、シャキシャキとしゃくりあげてくるが、低活性期だと全部ウイリーバケでは食いつきが悪い場合もある。
だから現在は一番下のハリは空バリにして、餌の沖アミを付けて使用する。『蒲谷丸』の標準仕掛けも、もっかこの仕様。
「まあ、季節やその日、その時の状況にもよるので、一概には決められませんが、厳寒期ですから餌を使うパターンは多いです。その分、魚の活性に合わせ、シャキシャキやらずにソフトめに誘っていくことが大切ですが」とのことだ。
なお、竿はプラビシにFL60号を使うのと、水深100m前後でのシャクリを考えて、通常のウイリー専用竿がお勧め。出船名はLT(ライトタックル)となっているが、LT仕様のウイリー竿だと40号くらいのオモリが標準で若干軟らかく、扱いづらくなるかもしれないため。だから出船名の“LT”とは水深100m前後なのに、軽いプラビシ60号を使えるという意味でのLTだ。
また、深さが深さなのでリールは電動が重宝する。この場合、中型電動より、最近アマダイやマルイカで定番の小型電動が、竿とのマッチングがいい。道糸もPE1.5~2号が推奨だから、同サイズにピッタリなはずだ。
もうひとつ、クッションゴムは付けるか付けないか。ウイリー釣法の場合、通常は付いているが。
「これも一長一短。ただ、アジが多い場合は外した方がいいみたい。弾力によって弱い口のハリ穴が広がってしまうから。なお、付けるとしても1mm径以下で長さは30cm。あまりゴツいのだと“オモリ”になって、うまく仕掛けが動かなくなりますから」と船長。
要は仕掛けの先の沖アミやウイリーバケが、どう動くかにかかっているので、あるのと、ないのでは大きな差である。クッションゴムの脱着は面倒くさい作業ではないので、臨機応変にやっていこう。
シャクッた後に食いつく“間”を必ず入れる!
深場のウイリー釣法というと一見難しそうだが、LT仕様で道糸が立ちやすいので底ダチも取りやすく、プラビシなどが比較的潮にも乗りにくいので、ビギナーでも大丈夫だ。プラビシが着底したら、糸フケを巻き取って糸を立て、天ビンから先の仕掛けが馴染むのを少し待つ。そこからウイリーシャクリの開始。
竿はリール部を包むよう(パーミング)に持ち、竿尻位置は脇の下。これで竿先を海面へ向けて下げ、竿を水平正面位置までシャクる。そうするとプラビシからコマセが出て、天ビンの反動で張った仕掛けが踊りつつコマセの煙幕に入る。つまり、このコマセに寄った魚が煙幕の中のウイリーバケや付け餌に食いつくわけだ。その後はリールで糸を巻き取りつつ竿先を始めの下向きに戻し、再びこの一連を繰り返す。それを船長の指示ダナまで繰り返していく。
「魚の低活性期なので、ウイリーバケ&餌の動きは緩めが基本、シャーッシャーッと動いても魚は対応しきれない。竿先海面向きから水平正面まで、普通は1度でシャクリあげますが、今はショートピッチ2回で鋭く短くシャクるのがいいですね。
ウイリー&餌が大きな幅で動かず、かといって緩慢には動かないのがミソです。そして、重要なのが、しっかりと水平正面で“止め”の間を作ること。これはウイリーでは常道手段ですが、この時期は長めに取り、しっかりと低活性の魚に食う間を与えてください」と船長は解説してくれた。長めと言ってもなかなか定義しづらいが、具体的には4~5秒といったところである。
一つだけ、船長がダメ出しする方法がある。コマセマダイ釣りのような竿先海面から頭上まで一気の大振り。ロングハリス1本バリならそのくらいしないと餌は踊らないが、全長が3mほどで短い枝ス間をもつウイリー仕掛けにはおおざっぱで、踊り過ぎるわコマセに同調しないわで、意味はない。
船長も「これやる人は自爆する人が多いですよ」と言っているから気を付けよう。 寒い海ながら、忙し過ぎず暇過ぎずにコンスタントに釣れ上がり、ジャミも少なくて掛かるのは、それなりの大きさの美味しい魚たち。意外とはまりますヨこの釣りは。