野毛屋釣船店・神奈川県金沢八景
2017.4.08号
東京湾の黄金アジは一年中浅場で入れ食い!
東京湾のアジが一年中狙えるのはもはや周知の事実だが、ここ数年は同湾で一番水温が下がる2月~3月でさえ、浅場で入れ食いになっているのは正直、驚きである。しかも湾内産は“黄金”と言われる極上のアジ。もっか日並がいいと軽くトップが50匹を超えてしまうのだ。そこで半日の午前LT船で連日好釣果を記録している、神奈川県金沢八景『野毛屋』の黒川俊之船長から見通しと実釣アドバイスをリポート。
ここ数年、東京湾のアジは深場に落ちていかない!
温暖化の影響か東京湾内の浅場にまでアジの群れが大挙して入り出してから、もう何年になるだろうか。その影響でビシ釣りは通常の130号から、40~50号を使うライトタックル(LT)が生まれた。LT誕生当時は真冬になるとさすがにアジが水深100m前後へ深く落ちて、130号ビシの独壇場になったが、それももはや昔の話になりつつある。今やさらに水温が上がって通年、浅場のLTアジが楽しめるようになったどころか、入れ食いの毎日が続いているのだ。超優良株と言わざるを得ない。
「ここ数年の動向だが、いいかげん水温が落ちないですねえ。昔は2月ごろに最低水温が9度とかヒトケタになっていたけれど、今年もせいぜい10度台。だから水深30mに居座って、深い外(観音崎沖以南)へは出ていかない。この水深はもろにLTの独壇場です。そして、もう水温が上がり始めちゃったから、再びさらに浅くなり始めて肉付きも良くなってくる。本来夏の魚だからね、アジは。 最近はこんなサイクルだから、人気が衰えませんね」と船長も太鼓判だ。ちなみにメインに狙っている目の前の八景沖はもっか、40cm級の特大こそめったに出ないが、25cm級の良型を筆頭に17~18cmまでの中アジ。背がまさに黄金色した、ちょうど手ごろで旨そうなアジだ。
食い渋ったら長めの仕掛けに分があり
タックルはごく普通のライトタックル仕様。釣具店では定番商品になりつつあるので、ビギナーが購入するならより取り見取り。ただし、実釣なしに選ぶのはなかなか難しいので、最初は船宿のレンタルがおすすめ。
『野毛屋』では無料で貸し出ししているから、まずは使ってみて購入の参考にするとよい。仕掛けはベテランなら3本バリでもいいが、2本バリが標準。それより船長が気にするのは仕掛け全長だ。
「私は仕掛け全長が1.8~2mの物を推奨しています。これは一般的なビシアジ仕掛けの長さです。LT用で2本バリだと、たまに1.6mとか短い全長のやつがあるんですが、これはあまりおすすめしていません。
食いがいい時は何でもいいんですが、食い渋りの時に差が出るみたいなんですよ。以前、ポツポツ程度の食い渋りの日ですが、全く食わない人がいまして、なぜかと探ってみると、なんか仕掛けが短い。
それで、長めの船宿製を使わせてみたらポツポツ食うんです。その後、同様のことが何回かありまして、やはり食い渋り時は、コマセ煙幕の中をより自然に漂う餌の方が、どうも食うみたいです」とのことだ。
東京湾の黄金アジはタナが命!
東京湾のアジのビシ釣りはセオリーがある。食いダナ=指示ダナがほぼ底から2~3mということだ(相模湾などではかなり上ずったりする)。これは通常の130号ビシでもLTビシでも同じ。潮など状況によって船長から「2m」とか「3m」とアナウンスされるので、そこをしっかり守るのが、まずは第一だ。
具体的にはビシが着底後、2~3回に分けてイワシミンチコマセを振り出しながら指示ダナに合わせ、アタリを待つだけ……ではあるが、やはりそこは、いろいろなテクニックがある。
まず指示ダナを守るのは鉄則だが、これが簡単なようで意外と難しい。「アジ釣りはタナが命です。ただ、LTは軽いオモリを使っているだけに、落ち着きが悪いんです。つまり、ちょっと潮が速いと、ストンと落ちてくれない。流されるわけですネ。だから糸が斜めになっていて、2m巻いても1mちょっとしかビシが上がっていなかったりする。しっかり糸の角度を見て巻く長さを調整、またはビシで底をトントンしながら糸を立てる作業が大事になります。タナが命ですから、これは結構大切ですネ」。ただし、ある程度タナが把握できたら、より高めのタナで食わすこと。これは、アジが下からハリに食いつく方が、上からよりもハリ掛かり率がいいという理由からだ。
また、コマセの量も大切。船長曰く“寄せるのもコマセ、散らすのもコマセ”だという。「あまりに少ないと寄りませんし、出し過ぎるとそのコマセに乗っていってしまい、アジは船の周りから離れてしまいます。ケース・バイ・ケースで、具体的な指示が出せないのが難しいところ。
大体、1投入でコマセワークを2サイクルやって、ちょうどビシのコマセが空になるくらいです。強く振れば大量に出ますし、弱く振れば少量が出る。この加減を当日の状況に合わせて実践してください」という。
最後に、効率よく釣るためには1匹ヒットの後、追い食いさせて一荷で掛けること。1匹目が掛かったら、竿をあおらず水平のまま、1mほど極ゆっくりとリールを巻いて追い食いを誘う。「ゆっくりの意味は、仕掛けを食いダナから外すなということ。よく、掛るとスーッと竿を頭上に聞き上げる人がいますが、これだと仕掛けが不自然に動くし、食いダナを外すことになりかねないので、おすすめできません」とのことだ。
東京湾の黄金アジは、中型でも刺し身、塩焼き、干物、ナメロウなど何でも絶品。今ならビギナーでも10~20匹は釣れるというので、ぜひチャレンジを。