長崎屋・神奈川県横浜本牧港
2017.5.22号
東京湾の夏はやっぱりシロギスでしょ!
昨年から少し様子がおかしいぞ?…などと言われていた東京湾の超優良株シロギスだが、やっぱり本番の夏を迎えて釣果はググッと上がってきた。そこで先日、ショート船ながらトップ99匹を叩き出した横浜本牧港『長崎屋』の長崎功船長にインタビューすると、例年とはちょっと違う、面白い様相が浮かび上がってきた。夏の対策法と併せて紹介しておこう。
東京湾の初夏には珍しく20㎝以上の良型がメイン
江戸期から続く東京湾のターゲット、シロギスは今や一年中釣れる魚になったが、本来は初夏から夏にかけて深場から超浅場へ乗っ込んでくるのを狙うのが本式であった。昨今の一年中狙うパターンは、釣り具の進化という面もあるが、温暖化などにより年間を通して釣れっぷりが変わらない=魚影が濃いというのが主要因と言えるだろう。そのシロギスが久々に不安材料を醸し出した。なにやら昨夏から釣れ具合や群れのいる場所のムラが出始めたなどと、どこからともなく噂が立ったのである。
確かに冬場から春にかけて昔のように数が落ちたが、好シーズンを迎えるべく5月を過ぎて、やはり本番に値する釣果をどの船宿も出し始めた。 シロギスを十八番にする『長崎屋』も5月17日、トップが“束”に1匹足りない99匹を釣ってきた。
「確かにここ数年に比べて数はちょっと伸びない。ただ、釣れるサイズはほとんど20㎝級以上なんです。18㎝以下はあまり交じりません。これにはちょっとビックリです。ですから引きが強くて面白さは特筆ですね。まあ、本来の夏は小型が交じりだして数が伸びるわけですから、その意味ではちょっと不安はあるわけですが……」と船長。もっかポイントは中ノ瀬のちょっと千葉寄りで水深15m前後。これは水温17~17.8℃と気持ち低めのためで、もう少し高くなれば10mより浅場を狙うようになる見込み。
「そうなれば、うちの港から近い神奈川県側を狙えますから、もっと長い時間狙え、釣りやすくもなります。その頃にどっかからピンギスが現れてくれれば、トップ2束も狙える安泰状況になるんですが」と船長。まあ、トップ束前後でも十分と言いたいのだが、それを許さないのが東京湾シロギスのもっかの宿命と言えようか。
仕掛けは特徴があるので船宿特製がおすすめ
本牧『長崎屋』のシロギスと言えば仕掛けが胴突き一辺倒なので有名。胴突きの1本か2本バリである。また、ハリがキス競技用9号と大きく、釣具店ではまず売っていない仕掛けなので、船宿特製を購入するのが一番。1本バリ(2組200円)と2本バリ(2組300円)で出船中の船内でも購入可能だ。
ところでなぜハリが大きいか。「普通、シロギスと言ったら6号とか7号が標準と言われていますよね。でもね、それだと飲み込んでくれるけど、スッポ抜けが多いんですよ。形がキス競技用なら長軸で幅が狭いですから、9号でも比較的太めのアオイソメ餌を装着してハリ先がしっかり出るし、飲み込んでもくれる。そして、飲み込むなら大きい方が掛かる率は絶対に上です」と船長。
これは小型のピンギスでも同じだという。ならば現状の良型ぞろいでは、さらに好都合と言えそうだ。
竿はシロギス専用がベストで長さは1.6~1.8mが推奨。他にオモリ15号に対応できるゲームロッド系など船小物竿も流用できる。
リールはスピニング、両軸とも可。魚影が濃いので昔のように超遠投の必要がないため、少し投げるテクニックさえあるなら両軸でもいい。
何より胴突きで真下を狙う場合に糸の出し入れがしやすいからだ。ただ、スピニングの方が投げるのに簡単なのは当然なので、ビギナーならスピニングをおすすめか。
まあ、一長一短なので、好みでいいとしておこう。
大きいシロギスには長い餌!
胴突き仕掛けの釣り方は難しくない。仕掛けが絡まない程度に前方に軽くキャストして、オモリ着底後、ゼロテンションと、やや糸フケが出た状態を、竿先を極ゆっくり上下させながら保つ。それを7~8秒やったら20~30㎝オモリを静かに上げ、またゆっくり着底させて前記の繰り返し。ちなみにオモリをズルズル引きずるのはご法度だ。アオイソメが底にベタッと付いてしまわず、わずかに上層をふわふわとナチュラルに漂っている状態をイメージして操作すること。
「アタリはしっかりビビビンッと出て竿先を叩きます。この後しっかり合わせてください。強くなくていいですから、竿を平行に上げる感じの、いわゆる聞きアワセで。ここでアワせないとスッポ抜けの元ですから、注意してください」と船長。掛かれば小気味良い引きが竿を襲うから、楽しみながら巻き上げてくればOK。
ここで現状のマル秘アドバイスを2つ、功船長から入手。まず、高活性期だから2本バリの方が効率がいいと思いきや、さにあらず。「実は現在、赤い糸状のクラゲが多いポイントがあるんです。これが餌や糸に絡むとまず食ってこない。だから1本バリの方が絡む確率が低いので推奨しています。このクラゲも、もうすぐいなくなると思います」。同じ理由で、頻繁に仕掛けを巻き上げて、クラゲが付いていないか確認するもの大事。これは仕掛けの探り場所入れ替えに繋がるので、やった方が得策だ。
2つ目は、やはり高活性期だから餌は短めがいいと思いきや、さにあらず。「本来なら、ピンギスが出始める時期なので、それでいいんです。ただ、今季は活性は高いにせよ、大型がメインですから餌は長め。垂らしを3~4㎝にします。不思議なもので大きいキスは短めの餌じゃ食いつかないんですよ。
これは如実に差が出ますから、注意してくださいね」とのことだ。毎年回ってくる初夏でも状況によってこれだけ違う。シロギス釣りは昔から数が釣れるけれども奥が深いと言われてきたが、なるほど納得。皆さんもぜひ、シロギスフリークになって、あの手この手で攻略してみてほしい。