釣りビジョン

2011.11.1号

ムツ六釣船店・神奈川県久里浜港
深場で狙う秋の“幽霊”タチウオ攻略法!

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移動が早く一瞬で群れが消えたり現れたりすることから“幽霊”との異名を取るタチウオ。獰猛な顔に似合わず神経質で、釣果にムラが出やすい船長泣かせの魚だ。しかし、様々な攻略法やパターンフィッシングが存在するようにゲーム性が高いのもこの釣りの魅力。また、食味のいい事でも知られ非常に人気の高い釣り物でもある。深場に落ちた秋のタチウオを狙い、神奈川県・三浦半島、久里浜港『ムツ六釣船店』に出掛けた。

釣り座は先着順!

この看板が目印!
出掛けたのは10月25日(火)。久里浜港は、千葉県・金谷港へ渡る東京湾フェリーの発着場としても有名。初めて車で行く人も横浜横須賀道路・佐原ICを降り、フェリー乗り場へ誘導する看板通りに進めば迷うことはない。『ムツ六釣船店』の釣り座は先着順、朝3時半以降に乗船場にある看板前にクーラーBOXを置いておけば良い。

タチウオ?マダイ?

出船は7時15分。遊漁船専用の広い駐車場に6時に到着。『ムツ六釣船店』代表の榎本幸司船長は、顔を見るなり「ここんとこタチウオはイマイチなんです…マダイ取材に変更しますか?」と言う。どんな釣りでもバクバクに喰っているドンピシャ!のタイミングで船に乗れれば最高だが、タチウオは特に「昨日は良かったのに…」という事が良くある。逆に言えば、「今日突然良くなる」可能性だってあるのだ。ということで、ここは当初の予定通りタチウオ狙いに腹を決め、タチウオ船担当の榎本修船長に挨拶した。

お茶目な榎本修船長!
この日乗る「第二十一東丸」
秋晴れの空には鱗雲

釣り場は観音崎沖

仕掛け図
定刻通りに出船。航程約15分で観音崎沖80mラインに到着。ここは、この季節定番の釣り場、各港のタチウオ船が続々と集結しつつあった。暫く魚群探知機で群れを探していた船長から「ハイ、どーぞ!水深80m。底まで落として15m上まで探ってみて下さい」とアナウンス。7時40分に開始となった。この日は私を含め6人が乗船。南からの強風がウネリとなり相当船が揺れて釣り難い状況。そして10分も経たないうちに移動の合図。群れの魚探反応が消えたようだ。小移動直後、左舷ミヨシ(船首)でいきなりヒット。強烈に竿が絞り込まれ、何度となくノサれそうになりながら上がって来たのは、“指4本”強のナイスサイズ。「この季節は型が良いよね!」と船長も一安心。そして10分後にも同じ人にヒット!銀ピカの魚体が船縁から抜き上げられ美しく弧を描き宙を舞った。

餌はサバの切身をこのように付ける
船中のファーストヒットがこのサイズ!
すぐに2尾目をキャッチした!!

これが“サーベルフィッシュ”の美しさ!

「釣りビジョン」の熱心な視聴者様!
いきなりの連続ヒットにこちらもホッと一安心。すると、今度は右舷ミヨシの釣り人が大きな合わせをくれた。タチウオは、細長い魚体からは想像出来ない程パワフルな引きをする。強い引きに対して素直に竿先を送ってやるようなやり取りで上がって来たのは“指3本”強の中型サイズ。更に10分後にも再度同じ人にヒット。置き竿で竿先を見つめながら不可解な変化があると見るや、すぐ手持ちにして誘い上げ、豪快な合わせを決めた。今度は“指4本”オーバーの大型だった。そして同時に背後で朝イチに“連チャン”した人にもヒットが続いていた。
以前、調べたところによると、タチウオには鱗が無い代わりに銀色のグアニン質という層が身体を覆っている。このグアニン層は常に生成されていて魚体を保護しているという。この銀箔はその昔、模造真珠やマニキュアに入れられるラメの原料として使われていたそうだ。釣った直後の魚体は怪しく青味がかった金属的な光沢を放ち見惚れてしまう。まさに“太刀魚”。俗に“サーベルフィッシュ”とも呼ばれるが、欧米では、“リボンフィッシュ”と言う。洋の東西で随分と印象が違うものである。また、“立ち泳ぎ”をすることから“タチウオ”となったという説もあるそうだ。

同じく「釣りビジョン」フリークでした!
鋭い牙には注意が必要!
とにかく太くて長い!!

アタリダナは一緒!

タチウオ名物大船団!
連続ヒットした人達にアタリダナを聞くと、全て下から10m上げた所で喰って来たとの事。タチウオは上下のタナを自由に行き来できる器用な魚。アタリダナは常に変化するだけに、釣れている人に常に情報収集を怠らない事だ。 しかし、時計が10時を回る頃になると、アタリはポツリポツリといった感じになってしまい、観音崎沖に集合していた“タチウオ船団”もバラバラに散って行った。

実釣開始!

今回も船宿のレンタルタックルで挑む!
ここで左舷胴の間(中央)で竿を出した。船宿で借りた電動リールセットは、とても快適!久しぶりのタチウオ釣りである。竿をシャクる腕にも力が入る。釣り方は様々だが、私はひとシャクリして1m巻いて止め、またシャクッて1m巻いて止めての繰り返しで船長の指示ダナまで仕掛けを上げた。この止めのタイミングでアタリを捉え、上手く合わせて行きたいのだが、そのアタリが遠い。「まずはアタリダナを探す…」と心に決め丹念に探った。水深は90m弱。連続ヒットの後半には群れが浮き、下から20mまで反応があったと聞いていたので、指示ダナの最後まで気は抜けない。すると下から15mの位置で待望の初アタリ!慎重にコツコツとアタリを聞きながら竿先をゆっくり上げて、敢えて餌を動かし続け、完全に魚の重みを確認してから大きな合わせを入れた。乗った!ロッドの胴に想像以上の重量感が加わり「これは大型!」と、心の中で叫びながら慎重に電動リールで巻いてきたのだが…残念ながら途中でバレてしまった。「惜しかったね!ひょっとしたら大きかったのかもね」と船長に励まされてしまった。上がってきた仕掛けをチェックしてみるとハリスが切れたわけでもなければハリも問題ない。たぶんハリがタチウオの歯の間に引っ掛かっていただけでどこにも刺さっていなかったと推測。残念無念。この日、私の竿はその後二度と曲がることは無かった。

サイズの良さに大興奮!

その後も南風は止まないどころかその強さを増すばかり。それでも船中では大型のタチオウがたまに顔を出す。それも“指5本”オーバーサイズが揃うのだから応えられない。タイミングとパターンに上手くハマれば簡単に釣れる時もあれば、気難しい顔も見せるタチウオ。これは本当に癖になる釣りだ。船長も「先々週や先週は良い時でトップ50尾オーバー、スソ(最低)でも20尾位だったかな!?まあそういう魚だよね!」とコメント。しかし状況は好転しないまま強風も収まらず、予定より1時間早上がりとなった。
当然、この日の釣果に全く納得はしていない船長だが、「状況次第ですぐに良くなるのもタチウオ釣りなので、諦めず遊びにきて欲しいですね!」と締め括った。『ムツ六釣船店』では、例年1月いっぱいまでタチウオの乗合船を出している。今回、私はまたしても惨敗だったが、これを読んだ皆さんには是非“幽霊退治”の仇を討って頂きたい。

この方「今日はお手上げでした(泣)」と。
このサイズが揃えば大満足!
この日最大のタチウオ!!

(鈴木 恭介)

今回利用した釣り船
神奈川県久里浜港『ムツ六釣船店』
〒239-0831 神奈川県横須賀市久里浜8-26-8
TEL:046-835-1777(定休日:毎月第2、4、5金曜日)
詳細情報(釣りビジョン)
ムツ六釣船店ホームページ
出船データ
乗船料金 :¥8200-(餌付き)氷小¥100-/氷大¥200-
貸し道具:電動リール&竿¥1500-、ロッドキーパー¥300-
出船7時15分~沖上がり14時30分(予定)
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