釣りビジョン

2012.1.15号

つちそう丸・静岡県網代港
釣り場は港から30秒!静岡県・網代沖の“寒ビラメ”

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最近のヒラメ釣り、船酔いしやすい人にとっては、天敵の横流し(船が波によって揺れやすい)が主流。しかし、静岡県・網代港『つちそう丸』では、大型船で通常の流し釣り、船に弱い人も安心して楽しめる。しかも釣り場は、港から30秒の目と鼻の先だ。「肉厚が違う」と地元漁師が口を揃えて太鼓判を押す網代沖の“寒ビラメ”。1月7日に出掛けた。

12人のヒラメファンが集結!

午前5時半、網代港には先着の車が6台、船着き場前に停まっていた。辺りはまだ真っ暗だ。冬でも比較的暖かい伊豆半島の付け根に位置する網代港だが気温は3℃まで下がっていた。曇り空の隙間から時々オリオン座が姿を見せる。午前6時前、土屋旬(ひとし)若船長が到着。釣り座番号ごとに名前を読み上げ、合計12人の名前が呼ばれた。この日は陸待機の土屋通大船長が沖にあるイケスから大ぶりのマイワシを掬い、各釣り座に備え付けのイケスへ手際よく配っていく。イワシを掬うための長めのタモが配られ準備完了。イワシを各釣り座の真横にあるイケスから取り出せるとは何とも贅沢な釣りである。

大船長からのバケツリレー
片舷6人乗っても広々の大型船

釣り場までは驚きの30秒!

午前6時20分過ぎ、水平線が少し赤みを帯びてきた頃、若船長の操船で河岸払い。そして、港を出るや否や船長からアナウンス。「はい、やっていいよ~。水深40m。4日に4.1kgが出たポイントだから頑張ってね」。釣り場がここまで“激近”だとは知らず度胆を抜かれた。こんなに近くでヒラメが本当に釣れるの?と一瞬疑ってしまうような近さ。しかし、実はヒラメが集まる条件がいくつも揃っている一級ポイントだと言う。近くには海上釣り掘りのイケスやイワシのイケスが幾つもあり、その下には自然と小魚が集まる。更に港の出口付近でも水深は40m以上と急なカケ上がりになっているのだ。

最初の水深は40m前後
孫バリは腹側につける
目の前には網代の街が広がる

1流し目から連続ヒット!

全員が準備を終えて、仕掛けを投入し終わるや否や、右舷大ドモ(船尾)で叫び声が上がった。「お~い、来たよ~!」。船長がタモを持って慌てて駆けつけた。まだ夜も明けきらない暗さの中、竿が大きく絞り込まれた。小型の両軸リールで慎重に巻いてくる。海面を割ったのは1kgのヒラメだった。撮影が終わり、後ろを振り向くと左舷大ドモでも巻き上げの真っ最中。「そこまで大きくないよ、きっと」と言いながら早々のヒットにえびす顔だ。タモ入れされたのは0.7kgの“本命”。そして、今度は右舷胴の間(中央)でもヒット、こちらも1kgの“本命”だった。朝一から3人がヒラメを手にしてしまった。更に右舷大ドモで2度目のヒット。「1投目も2投目も着底した瞬間にガツガツッと来ましたよ」と言いながら、0.7kgのヒラメを釣り上げた。

船中第1号
船中第2号
連発!

先代直伝仕掛けは捨て糸いらず!

『つちそう丸』では、先代船長直伝の手作りのオリジナル仕掛けを500円で販売している。初めての人は予約の際に「初めて」と伝えておけば1組無料で貰える嬉しいサービスもある。オモリは潮の流れによって使い分けるため60号と80号を用意しておこう。また、根がきつい旧漁礁周り等も攻めるためオモリは多めに用意しておきたい。船長の手作り仕掛けは、幹糸6号2m、ハリス4号1.5m+孫バリ10cm。ハリは伊勢尼11、12号。捨て糸は無く、その下にすぐオモリがくる。この仕掛けの一番の特徴は孫バリの結び方だ。ヒラメ釣りでは孫バリが飲み込まれることが多い。しかし、その飲み込んだ孫バリを無理やり外してしまうと鰓に傷が入り、そこから出血してせっかく備え付けられたイケスに入れてもすぐに死んでしまう。漁師であった先代が大船長に伝えたと言う結び方を今回は特別に教えて頂いたので、是非動画を見て欲しい。市販の仕掛けは、親バリと孫バリは1本のハリスで結ばれているため、孫バリだけの交換は難しいが、孫バリがハリの懐に結んであるこの仕掛けは、孫バリだけの交換も簡単なのだ。

孫バリはハリの懐へ結ぶ
仕掛け図

左舷胴の間の3人組は仲良く揃ってオデコ脱出

午前8時までの1時間30分、流しを変える度に誰かしらの竿にアタリが出る高活性状態。気が付けば船中10尾、約半数の人がオデコを脱出していた。魚探(魚群探知機)にはカタクチイワシの大きな群れの反応も出ていた。「今年はイワシの群れが網代漁港の中にまで入ってきているからヒラメも居着いてくれているのではないか」と船長は嬉しそうに話す。そして、この日一番のイワシの反応に当てて流し替えた瞬間、左舷胴の間で歓声があがった。「やったね~、これで全員だね」。3人組で唯一釣っていなかったヒラメ釣り初めての瀬戸準一朗さんの竿に“本命”がヒットしたのだ。慎重に巻き上げてくると1kg級のヒラメが姿を見せた。「初めてでヒラメ釣っちゃいました!今年はいい年になりそうですね」と、笑顔がはじけた。

1kgUP!
2kg級!
やりました!

定置網周りで大型ヒラメがヒット!?しかし…

しかし、9時を回る頃にはピタッとアタリが止まってしまった。船長は水深23~33mの定置網周りへと船を移動させた。「この辺は根がきついから気をつけてね」。根がきついエリアでは基本的に竿は手持ちにして底からオモリを0.5~1m切っておこう。オモリトントンの状態で置き竿にしておくとすぐに根掛かりしてしまう。そして、移動してから10分後の事だった。右舷ミヨシ(船首)から2番目の比企野芳博さんの竿がグン、グングンと激しくお辞儀をした。これは大ビラメに違いない!そう思った瞬間、竿先が跳ね上がった。痛恨のスッポ抜け。上げられた仕掛けの餌はきれいに無くなっていた。

イカに齧られた形跡のあるイワシもいた
ゲストのワニゴチ
良型のカサゴ

2kg級の“肉厚寒ビラメ”が登場!

午前10時を回り、沖上がりまでは残り1時間30分。この時点で両舷大ドモ、左舷胴の間の3人が2尾で並んでいた。船長は大型を釣らせようと実績のある岩盤周りに狙いを絞り、根掛かりに気をつけるようにとアナウンス。すると、左舷胴の間の石山智史さんの竿が大きく絞り込まれた。竿先が幾度となく突っ込み、慎重に海面までやり取りしてタモ入れされたのは、正真正銘の“肉厚寒ビラメ”2kg級だった。そして、次の流しでは隣の瀬戸さんと1尾を2人のハリで釣り上げるという珍しいヒットもあり、更にもう1尾、2kg級が上がったところで沖上がりの11時半を迎えた。

堂々の2kg級
3人仲良くオデコ脱出!
2人で釣った価値ある一枚

ヒラメ釣りは3月まで

結局、この日のトップは、最後に良型連続ヒットを達成した石山さんの4尾。オデコも5人出てしまったが、どの人にも最低1、2回はヒラメからの魚信はあった。網代沖の“肉厚寒ビラメ”は3月まで続く。先代船長直伝仕掛けでチャレンジしてみては如何だろう。

(吉田 洋一郎)

今回利用した釣り船
静岡県網代『つちそう丸』
〒413-0103 静岡県熱海市網代435
TEL:0557-68-2469
詳細情報(釣りビジョン)
つちそう丸ホームページ
出船データ
(料金)ヒラメ船=氷・餌付(予約乗合)
(午前船):1万3,000円
6時までに集合、6時30分竿入れ11時半沖上がり
(午後船):1万2,000円
12時半出船17時沖上がり
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