つちそう丸・静岡県網代港
静岡県・網代沖で夏の風物詩♪半夜釣りのムツ開幕!
誰しもが舌鼓を打つ“ムツの煮付け”
釣り上がげた瞬間は、キラキラと金色の輝きを見せるものの数分経つと黒ずみ、人が触った部分の鱗はボロボロと剥げてしまう。鋭い歯を持ち、厳つい顔付きからは想像できない程繊細で扱い難いためか、活魚としては市場でも扱われていない。ムツの活きた姿を見られるのは釣り人の特権なのだ。しかも、その味は絶品。白身でどんな料理にしても美味い魚なのだが、脂の乗りも程良く、煮付けにすると煮汁には薄っすらと脂の帯が浮かぶ。しっとりとした身を箸でほろっと一掴み。口の中に入れると皮と身の間から出る旨みがジュワーッと口の中で広がっていく。釣り人にとって至福の一時である。
陽が沈んでからが勝負!
午後5時、網代港「第七つちそう丸」の前にはクーラーと竿を持った14人がズラリと並んだ。舵を握る土屋旬船長がグループごとに釣り座を案内し、各人が準備に着く。オモリは120号、胴突き3本バリが基本的な仕掛け。サバが少ない時にはハリ数4本以上にする事も有効だが、サバが多い時にはハリ数を増やすとオマツリが増え、手返しが悪くなり逆効果になるので要注意。
午後5時半、定刻に河岸払い。「夕暮れ時に吹けば夜はナギ」と、地元の漁師達の間で言われる心地よい南東風を肌で感じながら航程40分程で網代沖へ到着した。入念に魚群探知機を見ていた船長からアナウンス。「まだ陽があるんでね。陽が落ちてからが勝負ですよ。ボチボチ始めて下さい。タナは下から1~5mです」。ベタ底にしてしまうとサメ等の他魚が邪魔するので1mぐらいは切った方が良いそうだ。
必ずしも新鮮なサバの切り身が釣果を伸ばす秘訣ではない!?
ムツ船に乗る時に忘れずに準備したいのが、釣れたサバを切り身にするための包丁、ナイフだ(※マナ板や魚を掴む道具は各釣り座に完備)。新鮮なサバの切り身は皮がしっかりしているため餌持ちも良く、サンマの切り身よりもムツの喰いが良い場合が多い。しかし、「サバが多い時には逆効果になる事もあるので気をつけて欲しいですね」と船長。新鮮なサバの切り身は水中でも良く光るため共食いでサバが喰いついてしまう可能性が高くなるのだそうだ。サバが多いなと思った時には、サンマの切り身へとチェンジするのも有効な手段。
ファーストヒットは、日の入りと同時!35cm級のグッドサイズ!
午後6時40分、西の山陰に太陽が沈み、水平線は赤みを帯びる。水深は90m、まだ明るいので深めを狙う。すると、左舷ミヨシ(船首)から2番目の三井泰輔さんの竿先がググッと入った。船中初獲物は、25cm級の良型トゴットメバル。左舷大ドモ(船尾)では30cm級のカサゴが浮上した。そして、次の投入で再び三井さんの竿にアタリ。グググン、今度はメバルよりも強めの引きを見せる。「やったムツだ!」。一気に海中から抜き上げられたのは35cm級の黄金色をした良型のムツだった。それを皮切りに左舷胴の間(中央)では“本命”2連発、三井さんは1kg級のメダイを追釣し、その左では40cm級の体高のある大アジも飛び出した。
底から7mで“本命”連発!トリプル達成…のはずが痛恨のバラシ!
流しを替える度に、船中2、3尾ずつ“本命”が顔を見せていく中で前半戦絶好調だったのが、左舷ミヨシの諸星徹さん。まだ“本命”の顔を見ていない人もいる中で1尾ずつだが着々と数を伸ばしていく。狙いダナを聞くと、「実は、底から7mでヒットしているんです」と自分が予想しているよりもかなり上だったのでビックリ。ムツは海底付近を漂っているイメージだが、夜が更けると共に少しずつ上に反応が浮いてくる事もあるのだとか。諸星さんはオモリの着底を確認すると、1mずつ大きめに誘っては止めてを繰り返していく。すると、再び7m付近でヒット!ググンと鋭い引きを楽しみながら追い喰いを待ちつつ巻いてくる。すると、更に強い引き込み。これは“本命”なら数がついていそうだ。しかし、海面には手前マツリした仕掛けがグシャグシャになって上がって来た。その中にムツが3尾付いていたが、1尾、2尾とハリから外れて逃げてしまいムツは1尾のみに…高級魚が2尾も海中へ…トホホ。悲しそうな表情を見せた諸星さんだった。
まさかの置き竿釣法炸裂!?
「いや~、パターン完全に掴みましたね!さっきから入れ喰いですよ」。左舷大ドモの比企野芳博さん、何かを発見したようだ。「今日前半戦全然ダメで、ようやく発見したのがこの釣り方です」そう言うと、オモリを底から50cm切った所で置き竿にして放置。「ま~、嘘だと思って見てて下さい」。すると、ガツガツと本当にすぐにアタリが出た。特に合わせも入れずに巻き上げる。あっけなく海面には“本命”が登場した。同じ釣り方で隣の仲間も釣れてダブルヒット、1時間で“本命”7尾の他に大アジも釣り上げてみせた。
残り1時間、私も竿を出した。餌は比企野さんから頂いた釣りたてのサバの切り身。着底後、1m大き目に誘って上げた糸を巻き取る。すると、グンッ…喰い上げだ!思わず合わせを入れるが乗らない。慌ててそ~っと同じタナまで仕掛けを下ろす。すると、ググン、グン。今度は乗った。慎重に電動のレバーを倒して巻き上げ開始。ムツってこんなに引いたかな?と半信半疑で海面を覗くと、嬉しい煮つけ用の“本命”が姿を見せた。
半夜釣りムツ船は10月まで♪御蔵遠征船では、シマアジも絶好調!
竿頭は、三井泰輔さんの9尾。2番手7尾は2人だった。この日は終始潮が流れず、サバやスミヤキ(クロシビカマス)等が元気だったため釣果が伸びなかったが、潮が流れれば3日のような大釣りの可能性も十分だ。半夜釣りのムツは開幕したばかりでこれからが本番。他にも御蔵島遠征ではシマアジが絶好調。遠征の後に半夜釣りのムツ。そんな贅沢なリレー釣行で、網代沖の釣りを楽しんでみるのもいいだろう。
(吉田 洋一郎)
今回利用した釣り船 |
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静岡県網代『つちそう丸』 〒413-0103静岡県熱海市網代435 TEL:0557-68-2469 詳細情報(釣りビジョン) つちそう丸ホームページ |
出船データ |
半夜ムツ船=13,000円(氷、餌付) 午後5時集合、午後11時沖上がり |