ふじや釣舟店・静岡県清水港(巴川)
“名人”から手解き受け、「手釣り」のクロダイに初挑戦
竿を持参すると初代店主に叱られた…とか
『ふじや釣舟店』は、清水港に注ぐ巴川に架かる「港橋」の袂にある。創業63年の老舗だ。まだ薄暗い5時に到着。三代目・納本学(のもとまさる)店主に挨拶すると、早速本日の“指南役”宮田英男さんを紹介してくれた。宮田さんは、この道30数年の大ベテラン。この釣りを始めた昭和40年代以前は手釣りが主流で、竿を持って来店すると先々代の店主から「“そんなモノ”持って来て何すんだ」と叱られた、と逸話を聞かしてくれた。
実釣の前に「コマセ団子」を作る
使用する舟は、小型と最大6人が乗れる大型とがあり、我々には撮影用にと、大型舟を用意してくれた。釣り人はグループ毎に11艘に分かれて乗船。納本店主の動力付きボートに曳航されて岸を離れた。釣り人を乗せた和舟は数珠つなぎになって巴川を下る。1km程走り、広い清水港に出た。ポイントは、港内に無数ある。申し込み時に釣り人が指定したポイントに1艘ずつ切り離して行く。我々が着いたのは折戸湾の最奥のポイント。舟はY字形に3カ所が固定された。本来ならここで釣り開始となるのだが、宮田さんは撮影のために「コマセ団子作り」からスタートしてくれた。
団子のベースはおから
「コマセ団子」のベースは「おから」だ。これに集魚剤と海水をムラ無く混ぜる。細かな砂利は団子の沈みを早めるため。「団子の元」が出来上がって実技に移った。用意された付け餌は4種類。付け餌を鶏卵大の団子で包んで海底に送り込む。水深は約8m。「今、着きました、団子が割れました、30cmほど送り込みます、魚がいます。突っついてますね。“前アタリ”の後で“本アタリ”があります」。まるで海底が見えているように解説してくれる。2回ほど繰り返してから、「とにかく1尾上げてみましょう」。
暫くすると「ホラ来た。これがクロダイの引きです」。タモに納まったのは小型ながらも“本命”。「さあ、やってみて」と促される。
送り込んだ糸がいきなり引き込まれる
いよいよ私も参戦だ。「コマセ団子の元」作りから始める。付け餌は、覚えのある沖アミでスタート。団子に包んで沈める。しかし、「アレッ」底に着かない。「団子をもっと固く、大きく結んで」とアドバイスが飛ぶ。やり直して何とか底に着く。何者かがつついている、団子が割れるのも分かる。なるほど指先は敏感だ。しかし、アタリはあるもののハリに掛からない。何投目かで、送り込んだ糸がいきなり引き込まれた。反射的に合わせた。引きをかわしながら初めてのクロダイがタモに納まった。正面の師匠がニコッと頷いてくれた。
「伝統の技は、次代に残したい」心に残る店主の言葉
この後、私が1尾を追加。師匠もポツリポツリと上げるが後が続かない。潮が引くのと同時に、魚もどこかに移動してしまったようだ。午前10時頃、店主が見回りに来てくれた。「昨日は2人でトップ50尾、総重量17kgでしたよ。特に午後から良い喰いだった」と激励してくれた。しかし、残念ながら前日の再現は無かった。
船宿に帰ってから店主に「今では、清水港で手釣りの伝承者は、宮田さん唯一人」と聞いた。「伝統の技は次代に残したい」。遠慮がちに言う店主の言葉が心に残る。気さくな師匠のこと、お願いすればいつでも誰にでも教えてくれるに違いない。師匠は来週の予約を入れて帰路についた。
(釣りビジョンAPC・谷口 晴治)
今回利用した釣り船 |
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静岡県清水港『ふじや釣舟店』 〒424-0949 静岡県静岡市清水区本町5番1号 TEL:054-352-1704 詳細情報(釣りビジョン) ふじや釣舟店ホームページ |
出船データ |
1人:1万円(コマシ3杯付) 集魚材は各種別売り(各自持参も可) 手釣りの仕掛け:350円(巻具は返却) 氷:100円 午前5時半集合、6時出船、15時最終迎え |