浜新丸・千葉県富津港
東京湾を代表する釣りの1つ“エビ・スズキ”
午前3時半集合、4時出船
「今じゃ手バネの貸し道具はありません。持参してくる人も随分減りましたね」と話すのは、『浜新丸』の浜名博一船長(45)。餌もサイマキから赤エビに変わっていたが、仕掛けだけは以前のまま(7号のオモリに5号のハリス3尋=約4.5m)だった。 この日は大潮の初日、満潮が午前2時34分、干潮が午前9時50分ということで、午前3時半集合、4時出船。とにかくスズキは、潮が効いていなければ食いが立たない釣り物の代表格である。『浜新丸』では、出船時間は、あくまでも潮に合わせ午前4時から7時頃までの間で変えているというから、流石に “エビ・スズキ”の老舗船宿である。
70cm弱の丸々と太った立派なスズキ
最初の釣り場は、富津前の漁礁。港から15分である。到着した頃には下げ潮が効き始め、絶好の時間帯だ。しかし、スズキの食いは一息よくない。暫く沈黙が続いたが、10分程経った頃、右舷トモ(船尾)寄りの人に船中初獲物が掛かった。すぐに船長が玉網を持って素っ飛んで来てハリスを手に取り、掬ってくれた。70cmには少し足りなかったが、丸々と太った立派なスズキだった。
手バネでの釣りなら、合わせた後は道糸を手繰るので、船長は玉網を出すだけだが、リールを使った場合は、オモリの先に5m近いハリスがあり、自分で取り込むのは難しい。大型になると、海面近くに来て大暴れする魚もおり、釣り人が竿を離すのは危険だ。リール竿を使った場合は、取り込みは船長に任せた方がよい。
“往年の名場所” 第2海堡へ
再びしばしの沈黙があり、又しても同じ人の竿が大きく曲がった。1尾目よりはやや小さかったが、こちらも60cmを超える立派なスズキだった。その後、左舷ミヨシ(船首)寄りの人が、やはり60cmオーバーを釣ったが、全体的には食いが今ひとつ。そこで、船長は、船を第2海堡に走らせた。その昔(25~30年前)、富津の“エビ・スズキ”に通っていた頃、何十回も竿を出した“往年の名場所”である。久し振りに訪れた第2海堡には、何台もの重機が入り、大掛かりな工事が行われていたが、取り巻く潮の流れは同じに見えた。
食いが浅くバラシの連続
コツーン、突然竿先に前触れが来た。それまで全くアタリがなかったので、油断していた。慌てて竿先を送り込んだが、魚に違和感を与えてしまったのか、食い込まない。スズキ釣りでは、前触れのアタリを感じたら、静かに竿先を下げ、食い込みを待って合わせるのが鉄則。ビックリ合わせ、早合わせは禁物だ。 第2海堡周りに移動してから、アタリの数は大幅に増えた。とくに左舷側に頻繁にアタリが続いたが、食いが浅いのかバラシが連発。あちらこちらからため息が漏れた。
重量感溢れる引き込みを堪能
暫くすると、竿先を通じてエビが暴れる感じが伝わって来た。次の瞬間、コツンと明確な前触れ、静かに竿先を送り込むと、今度は気持ちよく食い込んだ。少々強引に合わせると、ガッチリとハリ掛かり。重量感溢れる引き込みを堪能していると、船長が素っ飛んで来て玉網で掬ってくれた。60cmを僅かに超えるサイズだったが、丸々太っており、重量感タップリで実に美味そうなスズキだった。
その後も船中では、ボツボツとアタリが続き、左舷ミヨシの釣り人が4尾で竿頭、バラシが連発したこともあり、オデコが何人か出てしまったが、全くアタリが無かった人はいなかった。
対象魚が同じと言うだけで「違う釣り」
このところ暫くの間“エビ・スズキ”とはご無沙汰していたが、久し振りに富津に通いつめていた頃の感触がよみがえった。やはり“シーバスフィッシング” と“エビ・スズキ”は、対象魚が同じと言うだけで「違う釣り」であるということを再認識した。一言で言うなら「実に面白い釣り」である。『浜新丸』では、9月上旬まで乗合船を出すとのこと。これからの時期は、スズキが最も美味くなる時期でもある。是非一度、東京湾伝統の釣りを味わってみてはいかがだろう。(野口 哲雄)
今回利用した釣り船 |
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千葉県 富津港 浜新丸 〒293-0021 千葉県富津市富津874 電話番号:0439-87-4967 詳細情報(釣りビジョン) 浜新丸ホームページ |
出船データ |
料金=餌(活エビ)、氷付き9,450円 |