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【宮崎県】西米良村冬季釣り場で、山の彼方の虹を追う

2024年11月26日公開

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鮎釣りでも知られている宮崎県の「一ツ瀬川」は現在禁漁期間中だが、釣り人で賑わっている。果敢にフライを追い、フッキングすれば渾身の力で逸走遁走しジャンプして訪れる釣り人たちを喜ばせてくれるのはニジマスだ。そう、期間限定の冬季釣り場である。現在尺超えの個体も多く放流されており、オフシーズンの憩いの場となっているのだ。そんな楽しい釣り場を訪れてみた。

今季のフライ仕舞いとして<西米良村冬季ニジマス釣り場>で虹を追う

立冬、久しぶりに師匠との釣行である。行きの道中、師匠が今年の目標を聞くので「去年が十だったので今年は十一」と答えた。この一年、師匠の指導宜しきを得て成長したその証として、昨年を上回る数字を言ってみた。

朝一番乗りだったが、すぐに釣り人が湧いて来て思い思いに渓に降りて行く。さて、こちらも準備をして渓を下る。師匠はと言えば、まだゆったりコーヒーを飲んでいる。9フィート3番に4番ラインを背負わせる。ロッドは伝家の宝刀「R.L.W」。大事にしすぎて年に一回、ここでしか使わないようになってしまった。5Xリーダー9フィート、5Xティペット矢引分。

フライは「ピーパラ14番」。野鳥がピーピー鳴いて、わずかだが羽虫がパラパラ飛んでいたのでピーパラ、というふざけたチョイスなんかじゃ絶対ない。ミッジでもないし、真夏のEHCでもない。だったらピーパラしかない、という積極的な消去法である。

今年、何を選んでも魚に喜んでもらえなくて、ややプラトー状態だったけれど、師匠が言うには、上達途上の誰もが突き当たる〝フライの壁〟だという。フーン、古稀を過ぎたジーチャンでもまだ伸びしろがあるということか。

ドライフライで残された瀬に潜む虹を狙う

下流の禁漁区ギリギリの、先行の釣り人が捨てていった瀬を拾うように釣ることしか出来なくて、午前中はその残された範囲から一匹掛けることが出来ただけだった。あらかじめ聞いていた、尺をちょっと超える大きさである。

真ん中を通していると魚がフワリと浮いて来たが、何が嫌だったのか、首を横に振ったかと思うと「サッ」と底に消えた。でもドライを追った、それで何度か抛って左岸の岩陰を流した時にようやく喰ってきたのだった。

昨年より、狭く流程が区切られて一層釣堀になってしまった川に、禁漁期の手慰みにと近郷近在から釣り人が押し寄せてくるので、魚の方も目ん玉と側線の隅々までビンビンに神経を通わせて水面から伝わる音や影を細やかに見定めていると思われた。それでも魚が現れてフライを追って、喰って、そしてこちらは掛けて。その一部始終が釣り人のものとなるのがドライフライの醍醐味なのである。

さてと釣り上がろうとすると、他の釣り人とバッティングしてしまう。魚だけでなく人も手強そうだ。駐車場下のプールのポイントまで来て「おーい」と呼ばわる声に振り仰ぐと、師匠が手招きしている。上がって休憩だ。

もう立冬なのに森は緑に黄色が滲んでいる程度で、季節は緩慢に巡っている。魚は自然と乖離のしようがないので、遅い秋にかえって活き活きと動かされているのは、先の一匹との闘いぶりから分かった。ニジマスらしい派手な跳躍もあったし、縦横に逸走遁走して楽しく困らせてくれた。

 

午後、河岸を替えて手ごわい虹を掛ける

さて、午後である。

駐車場下のプールは満員だったので、一匹を掛けた瀬をもう一度辿ってみることにした。釣り人は降りやすい左岸から立ち込むので、いくらか拾える魚がいるとしたらたぶん右岸のはずだと見当をつける。師匠はまだコーヒーを飲んでいる。思った通り、右岸よりのプールからポツリポツリと掛けることが出来た。魚は放流されたままプールに留まって、まだ瀬には出て来ていないようだ。

右岸には石組みの壁が迫っている。右利きが右岸から釣り上るので楽ではあるけれど、でも油断すると壁際の雑木にフライを取られる。腕が縮むとパチンとティップにフライが絡む。ロールキャストにサイドキャスト、脇を締めて肘でロッドを振る。少しは上達したかしら。

途中、師匠が降りて来て、魚はもういないはずの左岸ですぐに掛けた。交互に釣り上っていたがいつの間にか師匠は竿を置いて同い年くらいの釣り人と歓談している。上流の禁漁区ギリギリのプールで抛っていた私を見ると、左手を大きく動かすしぐさをしている。「ホールを効かせよ」というのである。「狭い瀬でも技と気持ちは大きく」と師匠が常々言っていることである。

魚が跳ねだし、底に沈んでいた群れが少し浮き出したようだったが、釣り人まみれで手垢のついた瀬にドライフライを追う魚はいない。フライを替えても駄目だったしティペットを細く長くしても駄目だった。ストリーマーとかニンフとか、沈めて釣るのが良いように思えた。

師匠は話し込んだり、果てはキャストの講釈を始めたり、虹の時間を楽しんでいる様子だった。普段は一匹でも掛けると後はこんなふうに過ごすことが多い。フライの楽しさをたった一匹で完結させているのだ。

反省と希望。そして自画ジーサン

結局、午前一匹、午後三匹のまま日が暮れてしまって、西米良のニジマス釣りはちょっぴり無念を滲ませて終わった。その帰り道に、師匠はドライで四匹掛けたことをほめてくれた。特にドライフライはキャスト八割、その八割の、まあ半分くらいは上達していたな、とおっしゃる。

この日、多い人でも五、六匹と聞いていたので私の四匹はまずまずではなかろうか、と自画ジーサン。往復600km、日帰り、全部師匠の運転だった。弟子のためにいろいろ無理をしてくれているのが分かって、なかなかの師匠ぶりであった。

施設等情報

西米良村冬季ニジマス釣り場
<西米良村冬季ニジマス釣り場>については、西米良漁業協同組合(Facebook、Instagram)サイトから得ることが出来る。期間や場所、釣り方などが詳しく載っている。
放流場所は一ツ瀬川支流板谷川という小河川。人気の釣場なので休日は釣り人で賑わう。くれぐれもトラブルのないよう注意したい。
なお釣場には駐車場、トイレがあるけれど車の乗り入れはここまでで住民の生活区域には立ち入ることは出来ないので配慮が必要である。 西米良漁業協同組合Facebook

施設等関連情報

※アクセス
東九州自動車道高鍋ICから一ツ瀬川に沿って上るか、九州自動車道人吉ICを降りて朝霧町の峠を越えて行くか、二つの方法がある。

「西米良info」をご覧いただきたい。楽しい観光情報が載っている。
西米良村に至る途中の宮崎、熊本人吉なども遠来の釣り人を温かく迎え入れてくれる観光スポット満載である。西米良info
     
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この記事を書いたライター

古希の釣人
春と秋は渓のフライフィッシング、夏は鮎の友釣り、ほかは海でキスを狙った投げ釣りなど、季節ごとの釣りを楽しんでいる。釣り場は九州が中心で、中国地方、四国へも遠征。それぞれの釣場から元気に釣り情報を発信。
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