釣りビジョン

2012.3.1号

松栄丸・千葉県布良港
千葉県・布良沖のヤリイカ、大シケでも“おかず”ゲット!

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竿釣りが当たり前になったイカ釣り。ブランコ仕掛けが定番だ。しかし、どうもあの仕掛けの扱いは苦手-そう思っている沖釣りファンも少なくないはず。私もそんな一人である。しかし、ヤリイカは食べたい-そんな思いでシーズン中に1、2度は出掛けているが未だ上達しない。今シーズンのヤリイカ、大幅に遅れた感はあるが、ここに来て千葉県・南房、白浜沖でいい日に当たればトップで70~80尾という釣果が出ている。「これなら“おかず”くらい…」はと2月16日、布良港『松栄丸』の乗合船に乗った。

若船長は修行中!父子鷹の『松栄丸』

昨年春までサラリーマンだった『松栄丸』の若船長、黒川智也さん(20)が船に乗って間もなく1年。高校時代は野球にのめり込み館山総合高校3年の夏には4番サードとしてチームを県大会ベスト16に導く活躍を見せた。最後の試合では優勝校と対戦、接戦の末惜しくも敗れたが、最終回に1打点“4番の意地”は父親譲りの根性だろう。当時、大船長の一夫さんの釣果ブログにはイサキ釣りの報告とともに、智也さんへの想いが滲んでいた事は今でも鮮明に覚えている。その若船長が舵を握って午前6時に布良港を出船。まだまだ厳しい修行は続くだろうが、近い将来、豊穣な布良瀬を舞台に活躍する事は間違いないだろう。

黒川一夫船長と智也若船長
松栄丸の休憩所はシャワーもある。
釣り座は到着順に札を取るシステム

北東の強風で白浜沖は大荒れ

智也船長は、南へ進路を取って走り出した。南海上を通過する寒冷前線の影響で北東の強風が吹き荒れる中、ポイントの白浜沖を目指す。海岸線が遠ざかるほどに波は高まり、大荒れの海が迫って来る。「来る日を間違えたかな…」そんな後悔の念が頭をよぎる。しかし、気持ちだけでも舵を握る若船長に負けるわけには行かない。そんな事を思っている内に凡そ20分程で白浜沖のポイントに到着した。船がスローダウンすると当然の様に船は大揺れ。いつかテレビで見たベーリング海のタラバガニ漁を思わせる大シケ、何かに掴まっていなければ真っ直ぐ立っていられない状況だ。

サバの猛攻
2Lのペットボトルとジャンボヤリイカ
仕掛け図

2.8ノットの速潮、そしてサバの猛攻に苦戦

この日は6人が乗船。私は右舷胴の間に入った。「水深160m。下から15m位まで探ってみて」。ここからは大船長の出番だ。投入合図で120号のオモリを投げ入れる。私は11cmプラヅノ7本のブランコ仕掛けでスタート。しかし、水深計が70mの辺りで竿先がガクガクと震え始めた。高速で巻き上げてみるとサバが水中を走り回っていた。周りを見渡すと皆同様にサバと格闘している。堪らずに船長から移動の合図。「参ったな、サバの反応に切れ目がないよ」。前日までは、これほど酷いサバの猛攻は無かったそうで、「急に速くなった(2.8ノット)潮流のせいでサバの活性が上がってしまったのでは…」と船長。「直結仕掛けを持っている人は替えてみて」とアドバイスがあったが、生憎私は持ち合わせがなく急いで自作する事に。大荒れの海、速潮、サバの猛攻-見事なまでの3重苦だ。

ヤリイカは単発が多かった

ヤリイカ4割、スルメイカ6割

幸いにも時間の経過とともにサバの猛攻は収まって行った。私も揺れるキャビンの中で何とか直結仕掛けを作り、仕切りなおす。水深150m。ようやく仕掛けが底に到達するとすぐにアタリ。フワッフワッというソフトな感触はヤリイカに違いない。ただでさえ不慣れな直結仕掛けである。追いノリを待たず、すぐに巻き上げにかかる。通常の2倍近くの時間を掛けてゆっくりと巻き上げると下から3番目の“蛍ムラ”に40cmオーバーのヤリイカがノっていた。大揺れの船上でイカをバラさない様に巻き上げるのは至難の業。よくぞ上がって来てくれた-と足元の桶に泳ぐヤリイカに感謝である。その次の投入では海底から15m程上の中層から落とし込む。すると先程より少しパワフルな感触でジャンボサイズのスルメイカがノって来た。「そろそろブランコでもいいんじゃない」と大船長から声が掛かったところで7本ヅノのブランコ仕掛けにチェンジ。
船内を見て回るとヤリイカに交じってスルメイカが随分上がっている。左舷ミヨシ(船首)の常連さんは、この強風下でも10本以上のツノ数を扱っている。足元の桶には丸々と太ったスルメイカが5、6尾泳いでいた。“ヤリとスルメ”全体的な割合は4:6程度。巻き上げ途中でのバラシは多いがそれでもイカは少しずつ顔を出している。

ダブル!ダブル!ダブル!

後半はミゾレ交じりの雨。

午前10時を過ぎた頃、ミゾレ交じりの雨が降り始めた。出船前の港の気温は車載計で5度だった。北東の強風でかなり気温も下がったのだろう。パラパラとレインウエアを叩く氷の粒が跳ねる。しかし、この頃から若干風が弱まり、荒波も僅かだが収まり始めた。速い潮は相変わらずだったが、船の揺れも落ち着いて少し釣り易くなった。私もここぞとばかりに集中する。水深160m前後を海底から15m位まで探り、海底付近ではヤリイカ、中層ではスルメイカがノる。多点掛けには恵まれなかったが、沖上がり30分前の正午の時点でヤリイカ9尾、スルメイカ9尾といずれも“ツ抜け”目前まで漕ぎ付けた。先に“ツ”が抜けたのはスルメイカで、次はヤリイカを…と思ったところで沖上がりの合図にガックリしたが、何と竿先に明確なアタリが出た。巻き上げる途中でグイグイ引き込む力強さを見せて上がって来たのはスルメイカだった。このタイミングの1尾は実に気持ちがいい。

肉厚肝パンのスルメも大歓迎!

トップは23尾。

結局、この日のトップは左舷ミヨシの常連さんで23尾。私は20~45cmのヤリイカ9尾、スルメイカ11尾で合計20尾。「今シーズンの最悪日!」と大船長は苦笑いだったが、大荒れの海で速い潮流とサバの猛攻。最悪の3重苦を考えれば十二分な釣果と言えよう。ヤリイカの群れは相当濃く、白浜沖の他に洲崎沖にもポイントがある。日並みのいい日を選んで是非出直したい。

ミゾレが降る中沖上がり時間まで楽しんだ

(津端 雄大)

今回利用した釣り船
千葉県布良港『松栄丸』
〒294-0235 千葉県館山市相浜286
TEL:0470-28-2305
詳細情報(釣りビジョン)
松栄丸ホームページ
釣果ブログ
出船データ
ヤリイカ予約乗合
料金:9,000円(氷付き)
時間:午前6時出船、午後12時半沖上がり(※集合時間は予約時に確認)
助手が同船オマツリ解きもお任せ!
レンタル:投入器無料貸し出し、電動リール電源完備、貸し道具無料(電動リールのセットは2,000円)
※4月中旬よりイサキ乗合開始します
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