2024年01月17日公開
「わずか1日で上限」というニュースが流れた、2023~2024年シーズンのビワマス釣りの承認。なぜ急に人気が爆発したのか。また、今後のビワマス釣りはどうなってしまうのか。哀れな語り部(←筆者のことです)が釣り人の目線で考察する。
1日で上限に達したというニュースが流れ、承認を諦めかけていた
11月8日の京都新聞(およびそのweb版)にて、以下の見出しの記事が掲載された。
『琵琶湖の「ビワマス釣り」予想外の人気上昇。わずか1日で上限、関係者驚き』
ビワマス釣りをしない人には上限もなにも意味がわからないと思うので、説明しよう。現在のビワマス釣りは誰でも自由にできるわけではなく、滋賀県の琵琶湖海区漁業調整委員会による承認制である。いわゆる一般の釣り人である「遊漁者」の承認は現在1900人が目安。もう少し詳しくいうと「申請が1900件に達した日までに受け付けた人数以内」となっている。
例年11月1日から受け付けているのだが、語り部が最初に承認を受けた2021~2022年シーズンは12月に申請して、承認番号は1400番台だった。このシーズンに人数制限はなかった。ところが、2022~2023年シーズンは承認数が前年並み(1900人)の人数に制限され、11月中頃に締め切られた。
なので、2023~2024シーズンはおそらく早期決着になると踏んで、募集開始日の11月1日必着で申請書類を送るつもりでいた。
しかし…前日の10月30日は榛名湖でダウト大会に出場していたため、申請をすっかり忘れていたのだ。その日たまたま釣りビジョンマガジン前編集長にビワマス釣りの話をしてそれを思い出し…翌11月1日に急いで書類を整え、レターパックプラスで発送した。このときはまだ「さすがに大丈夫だろう」と思っていた。
しかし、承認の報せが届く前に、「わずか1日で上限に達した」という京都新聞のwebニュースを目撃…まさかの落選を覚悟せざるを得なかった。
ところが、11月22日頃、突然ビワマス釣り承認のオレンジの旗が届いたではないか! やった!
「1日で上限に達した」という言葉の齟齬
でも、どうして「わずか1日で上限に達した」はずなのに、11月2日に到着した語り部の申請が承認されたのだろうか? ニュース発信元の京都新聞滋賀本社に問い合わせてみると…。
京都新聞「え、そうなんですか? 我々は県からの発表をもとに記事を作成したので…」
というようなご回答だった。では、滋賀県の琵琶湖海区漁業調整委員会にも問い合わせてみよう。
滋賀県「え、そんな記事になってました? あれは11月1日に届いたものだけで上限に達したというわけではありませんん。11月1日に届いた申請と11月1日の消印の申請が承認されたということです」
…というわけだ。語り部の知人でも11月1日に普通郵便でポスト投函した人(おそらく到着は11月6日あたりで)も承認されていた(ただし、番号は1800番台)。結局、2023~2024年のシーズンは2100人ほどが承認されたという。
では、近年ビワマス釣りを始めたのは誰なのか?
いずれにしても、ビワマス人気が急激に上昇したのは間違いない。その理由はなんだろうか? ここ10年ほどのビワマス釣りに関する遊漁制度の変遷を簡単にまとめてみよう。
●2013年12月
遊漁者の数やビワマス採捕量の増加が確認されたため、遊漁者数や遊漁船の隻数の上限を定めた承認制を開始。承認数=478人
●2016年12月
遊漁者によるビワマス採捕量が増加したため、人数制限を撤廃するとともに遊漁期間を従前の12月1日~9月30日から12月1日~6月30日に短縮。承認数=732人。また、遊漁船(ガイド)の持ち帰り数を1日1人5尾までに制限
●2020年12月
遊漁者(一般釣り人)の持ち帰り数を1日1承認あたり5尾までに制限。承認数=1409人
●2022年12月
遊漁者を前年並み(1900人)に制限する措置、および、船上でのキープ尾数制限(5尾まで)を追加
というのが大まかな流れだ。
ここで、遊漁者(遊漁船ではなく一般釣り人)の人数制限か撤廃された2016~2017年シーズン以降の承認数の増加を見てみると…。
2016~2017年シーズン=732人
2017~2018年シーズン=679人
2018~2019年シーズン=852人
2019~2020年シーズン=1094人
2020~2021年シーズン=1409人
2021~2022年シーズン=1928人
2022~2023年シーズン=2097人
目立って急激に増加しているのは2020~2021年シーズン(申込は2020年11月1日開始)あたりからである。
一見、コロナ禍でアウトドアおよび釣りがちょっとしたブームになったことが関係している…と思うかもしれない。しかしながら、ビワマスはブーマーが始めるには(遊漁船の客ではなく遊漁者として)敷居が高い釣りでもある。ボートがなければできないし、トローリングというとても初心者向きとはいえない釣法だからだ。
語り部的には、増加人数の多くはバスアングラーがビワマスに転向したのではないかと思っている。2018年9月の台風21号が琵琶湖に直撃して以来、バス釣りは年々難しくなっていった。それに音を上げたバスアングラーの一部がビワマス釣りも楽しもうという流れだ(事実、ボート屋の常連仲間にも数人いるし、そもそも語り部本人がまさにそれ)。
実際やってみると、ビワマスは幻の魚ではなく、かなりの数が生息していると感じる。釣りの難易度はさほど高くなく、バスを釣る方がずっと難しいように思う。
同時にSNSでビワマス釣りの釣果報告が増えていることも関係しているだろう。
語り部が思う、今後のビワマス釣りの在り方
さて、プラチナチケット化したビワマス釣りの承認旗だが、来シーズン以降はどうなるのだろうか?
もしかしたら、抽選制が導入されてしまうかもしれない(個人的には反対である)。
今シーズンは11月1日の消印でもなんとか認められたが、来シーズンも同じ募集形式だとすると11月1日着の申請書が殺到することが予想され、それを全員承認した場合1900人を大幅に超える人数になるかもしれないからだ。
そうなると来シーズン以降は運がよくないとビワマス釣りが楽しめなくなってしまう…。
そこで語り部個人として、提案がある。
現状の採捕OKサイズは30cm以上なのだが、それを35cm以上にした方がいい。いや、40cm以上でもいい。キープ数の上限が5尾だとしても、5尾はおろか3尾持ち帰るのも難しくなるだろう。30cmの小さなビワマスを持ち帰るよりも、来シーズン以降大きく成長してもらって、それをまた釣る方が幸せだと思うのだ。なんなら持ち帰り数を3尾に制限してもいいと思う。それならば釣り人の数が増えても乱獲を防ぐことができるだろう。
そもそも、釣りという趣味の楽しさを、運のいい限られた人たちだけが享受できるというのはどうなんだろう?…と思う。
もっと言わせてもらえば、一般の遊漁者は最盛期直前の6月一杯までしか釣りができないのに対して、遊漁船(ガイド)業者は9月一杯までできるというのも意味がよくわからない。バスでもシーバスでもガイド船だけが独占できる釣り場や釣り期間など聞いたことがないぞ。
ともかく、ビワマスの生息数はかなりいるという実感はあるものの、多くの人が小さいビワマスまでたくさん持ち帰ってしまったら、徐々に数は減っていってしまうだろう。公平かつ適切なルールによって、この先も多くの人がビワマス釣りを楽しむことができるならそれがベストだと、哀れな語り部は思う。