釣りビジョン

2014.10.15号

山下丸・神奈川県久比里港
東京湾口・剣崎沖のキモパンカワハギ。シーズン到来!

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残暑も収まり、カワハギ釣りには絶好の季節がやって来た。産卵後、体力が回復したカワハギは貪欲に餌を追い、海水温の低下と共に群れも固まり、好ポイントに入ればバタバタ釣れる。一体何処に居たのかと不思議に思う程だ。釣り方は、タタキ、這わせ、誘い等々、持てるテクニックをフルに駆使し、ハリに掛けた時には胸が躍る。そして、カワハギと言えば胆。秋から冬は胆も膨らみ美味しさも倍増する。18号台風通過後の9日(木)、カワハギ釣りの聖地、神奈川県・久比里港『山下丸』へ出掛けた。

カワハギ釣りは、アサリ剥きから始まる

京浜急行・久里浜駅で降り、暫く行くと平作川に掛かる“横須賀風物百選”にもなっている「夫婦橋」に着く。橋を渡り切った袂を右折すれば『山下丸』。出船の1時間程前に着いた。挨拶を済ませ、船に向うと桟橋の椅子に腰かけ、アサリ剥きをしている。「アサリ剥きは昔からの風物詩。カワハギ釣りはこれからが始まる。これも楽しみの一つですよ」と常連さん。

船宿の目印
入口に駐車場
船の係留

カワハギ釣り、やれることは全てやる

取材協力の挨拶をしながら、船内を聞いて回ると、上岡典弘さん(横浜市)は「カワハギ釣りは、夏は夏でそれなりに面白い。1年を通してカワハギに嵌まっています。日により釣りパターンは様々、一筋縄ではいかない所が面白い」。禰覇朝明さん(川崎市)は「私は1匹釣れる度にハリを変えている。釣る為に、やれる事は全てやります。仕掛の長さ、間隔もかえ、ハリも3本とも違うハリを付けています。それでも釣れない時は釣れない。その駆け引きが楽しい」と、話してくれた。

アサリ剥きは昔からの風物詩
剣崎沖の良型カワハギ
カワハギ釣りの必需品

剣崎沖、良型を連発!

平日にも関わらずカワハギファンは多く、ゆったり釣りが出来る様にと2隻出し。「第32山下丸」は私を含め12人。定刻8時に出船。平作川を下り、火力発電所を右手に見て、久里浜沖で船を止めて一流し。坂本司郎船長は「潮具合を見る為」と言って一路剣崎沖に船を向けた。8時45分。プーッ!「はいどーぞ!」。船長の合図でスタート。水深は40m。右舷胴の間(中央)の森遼三さん(海老名市)は1分もしない内に船内第1号のカワハギを取り込んだ。左舷トモ(船尾)の中村宗明さん(港区)も良型を、左舷ミヨシ(船首)の白井良昌さん(北区)は早くも実測25.5cmの大型を釣り上げた。一流し目から順調な滑り出し。森さんも25cm前後を更に追加する。こうなると誰もが無口になる。竿先を上下に揺すったり、叩いたり、カワハギ釣りは此方から誘いをかけないと、アタリを感じないまま、餌だけを取られてしまう。“餌取り名人”の異名を持つ所以だ。

幻の30cmオーバー!

釣れてくるカワハギはどれも良型。右舷大ドモの吉川彰さん(板橋区)が24cm級を釣り上げた。隣の禰覇さんにも来た。見ていると、魚からハリを外すのでは無く、魚が付いたままハリスごと外し、新しいハリを付け替えている。ワンタッチ式だから出来る技。又々禰覇さんが真剣にやり取りしている。カンカン、カンカンと竿先が大きく叩かれ、リールを巻くどころか、竿が立たず、船下に突っ込まれたと思ったら「アッ、バレたー!」。ガクッと椅子に座りこむ。「ハリスが切られた!」。幻の30cmオーバーか?

上岡さん26cm
船宿仕掛け
26.5cm

これが剣崎沖のカワハギ
今日は型が良いね~!
仕掛け図

釣れた傍から血抜き

順調に数を伸ばしていた中村さんにベラが続けて釣れて来た。中村さんは「ポイントから外れると“外道”が多くなるんだよね!」と言う。船長は小まめに場所移動を繰り返す。移動直後、強い引きで竿が引き込まれている。取り込んだのは、実測26cm。「先週27匹釣った。今日は目標30匹!」と宣言。中村さんは釣れたカワハギを、移動の度にナイフで血抜きしている。刺し身で食べる場合、血抜きをしておけば更に美味しさが際立つからだろう。 途中、私も竿を出した。時合を逃したのか、釣れてくるのはベラ等の“外道”ばかり。「ハリは釣れる度に交換する」と言う禰覇さんの言葉を思い出し、気分一新、新しいハリに取り替えた。アサリの水管にハリ先を掛け、ベロを縫い刺ししてワタで止める。前方に軽くキャスト。着底後、竿先をシェィクしながら誘い上げ、そしてゆっくり下ろし、止めた時、ククッと小さなアタリが出た。ゆっくり聞き上げた所で、カンカンカンと強いアタリに変わった。竿を立てるとガッチリハリ掛かり、待望のカワハギを釣り上げた。ちょっとしたハリ先の甘さが、カワハギのアタリの出方を左右する。手強い。

竿頭の勲章“金メダル”
良型を31匹・中村さん
中村さんの釣った29.5cm

29.5cmの大型をタモで掬う

徐々に潮が速くなり、アタリも間遠くなり、オマツリも増えて来た。それを機に、船長は灘寄りの浅場に船を向けた。剣崎灯台が目の前に見える近さだ。水深は20m前後。幾分潮の流れが緩い。ここでは時折小型も交るが、相変わらず良型が中心。右舷トモの吉川彰さんに27cmの大型が上がった。釣れ出すと、あちらでもこちらでも釣れ出す。磯貝昌彦さん(港区)に久し振りに良型が来た。中村さんは「今日は型が良いから面白い」と言いながら黙々と釣り上げていく。そのクーラーには、船宿が竿頭賞として出している、“金メダル”が何枚も貼ってある。その中村さんの竿先が突然強く叩かれ、懸命にやり取りしている。海面に浮いたのは“巨大カワハギ”。慎重にタモで掬った。計測すると何と29.5cm。ビックワンかと思ったら、船長が「前の人にもデカイのが釣れた」と言うので跳んで行くと、右舷ミヨシの上岡さんの桶にも、実測29.5cmのカワハギが腹を横にして泳いでいた。剣崎沖は大型カワハギのオンパレードだ。

胆がパン29.5cm
上岡さんデカーッ!
坂本司郎船長

トップは中村さんの31匹!

剣崎沖の40mダチでは、中・大型のカワハギが頻繁に餌を追い、潮が速くなって灯台近くに移動しても、食いは落ちなかった。腹は膨らみ、胆は充分大きくなっていた。竿頭は中村宗昭さんの31匹。2番手28匹、3番手20匹とサイズを考えれば“大好漁”と言っていい成績だった。もう1隻の船は、竹岡沖を中心に狙いこちらも6~34匹の好成績。“肝パン”カワハギのシーズン到来を十二分に実感した。

(釣りビジョンAPC・飯妻 武夫)

今回利用した釣り船
神奈川県久比里『山下丸』
〒239-0828
神奈川県横須賀市久比里1-3-3
TEL:046-842-8856 (定休日:第2、4金曜日(第5金曜日は不定期))
詳細情報(釣りビジョン)
山下丸ホームページ
出船データ
乗船料金:8,700円(殻アサリ付き)
    :9,500円(剥き身アサリ付き)
出船時間:8時~ / 沖上がり:15時
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