「不動丸」が停泊する勝浦川津港は、圏央道・市原鶴舞ICから凡そ50分。都心なら「東京湾アクアライン」経由で2時間弱で到着する。アクセスは外房の名だたる港と大差なく、コンビニや釣行後の食事処も充分あるのだが、どことなく懐かしく、奥座敷のような“帰って来た感”のある漁港だ。まずは船宿に立ち寄って、船形から席札を取って釣り座を確保。そのまま案内看板に従って進むと川津港に出る。海に向かって左手の『新勝浦市漁協川津支所魚市場』付近が乗船場所なので、近くに駐車して荷物を船に積み込む。船宿スタッフの指示に従って車を駐車場に移動してから、船着場の軽トラで乗船名簿の記入と乗船料の支払い。仕掛けは釣り場に着いてからセットすれば良いので、釣り座の支度が済んだら、船室でのんびり暖を取るのがお薦めだ。

穏やかな海を走ること凡そ40分。釣り場に着く頃には空も明るくなった。魚群探知機でサバの反応を捜していた船長から「準備の出来た人から入れてみましょう！」のアナウンス。水深178mの海底にオモリが着底するが早いか、竿先を叩く魚信が。船中1番手は浜出宏さん（横浜市）。続いて、追い食いを誘っていた入澤恵太さん（熊谷市）は8本バリに7匹を掛けるロケットスタートを切った。この後は誰が3番手か分からない一斉のヒットで船中は騒然。流し替える毎に、タナに入れば空かさずアタリが来る“入れ掛かり”を満喫した。釣れる割合はマサバ6に対してゴマサバ4。さらに10匹に1匹くらいの割合で上がる丸々とした800g超えの豊満なマサバには驚かされた。先取りして言うと、この個体は食べても絶品中の絶品。美味しく持ち帰るには、クーラー2分目ほどの海水を出船前に配られる氷で冷やしておき、釣れたらいち早く“活け締め”にして“氷漬け”するよう心掛けたい。

深場で暴れん坊の魚を多点掛けするだけに、この釣りで“オマツリ”は避けられない。隣席や時には反対舷の釣り師と道糸や仕掛けが絡んでしまうケースに加え、自分の仕掛け同士が絡んでしまう“手前まつり”も致し方なく発生する。そこで『不動丸』吉清船長に教えて貰った豆知識。フラッシャーサビキは仕掛け（幹糸）の中央にヨリモドシが入っているのだが、その上辺で半分にカットしスナップ付きサルカンを結ぶ。船で購入できる仕掛けは8本バリなので、4本バリの仕掛けが2組になるのだが、このコンパクトさがすこぶる快適で、手返しアップに貢献する。オマツリ解きには時間も体力も気力も費やすので、1回の上げ下げで獲れる魚の数は減ったとしても、トラブルレスで手早く確実に取り込め、好釣果に繋がる可能性は大。また船縁にマグネット版を設置して仕掛け絡みを防止するのも非常に効果的だ。

“饗宴”のようなサバ釣りを2時間ほど満喫した後、釣り物をヤリイカにチェンジ。序盤はポツリポツリという釣れ具合だったが、次第にそのノリは活発化。4点掛け、5点掛けも見られた。しかも釣れてくるサイズは胴長40cm以上の良型が9割。スルメイカやアカイカ、小型の雌ヤリイカも釣れるので、食べ比べも面白い。イカの反応は底付近なので、タナを探る手間やシャクリに費やす体力が無用なのも嬉しい。イカのポイントにも中型のサバが居るので、これを避けるには大き目のイカヅノを用いるのが効果的。また、巻上げの途中にサバが掛かってイカを振り落としてしまう状況では、敢えてブランコ仕掛けでじっくりイカを多点掛けにして、空いてるツノを少なくするというテクニックも覚えておきたい。

「寒サバ＆ヤリイカ・リレー」について、船長に訊いた。「サバもイカも道糸PE4号くらいの同じ道具で充分出来るんですが、この釣りに慣れている人はヤリイカには柔らかい調子の竿、サバには固めの竿でガンガン上げるように道具を使い分けてます」とのこと。「オマツリしないようにするには、仕掛けを少し投げて貰わなくちゃいけないんで、仕掛けの投入方法だとか、回収方法だとか、分からなければ出船前に聴いて欲しい」と船長。集合時間は出船の30分前になっているが、それより随分前から船長や船宿スタッフが船着場に来ているので、自信の無い方は早めに来てレクチャーを受けるのがお薦め。親切丁寧に教えてくれる上に、釣り場では良く釣れて練習になるので、ハリ数の多い胴突き仕掛けに苦手意識のある人はスランプ脱出の好機になるかも知れない。なお、サバ釣りでは180号、イカ釣りでは150号のオモリを仕掛け切れで失う事がある。船でも販売しているが限りがあるので、いくつか予備を持って乗船すれば転ばぬ先の杖になるだろう。

この「丁度良さ」大満足！
この日の竿頭はサバ40匹、ヤリイカ15杯を獲った入澤さん。釣果が控え目な方でもサバ20匹、ヤリイカ4杯とみなさん大満足の一日となった。ヤリイカ釣りが本格的になる前の“つなぎ”として始めたところ、大好評を博している『不動丸』の「寒サバ＆ヤリイカリレー」。どちらも1日やればもっと沢山釣れるのだろうが、美味しく食べるには“丁度良い”釣果。脂の乗りきった寒サバの旨さと、繊細な甘みと食感が魅力のヤリイカ。大漁の心地よい疲れと冬の美味を、この機会に是非お楽しみ頂きたい。