2022年05月02日公開
「西の四万十川、東の那珂川」と称される関東屈指の清流・那珂川。栃木県・那須岳山麓に源を発し、約150本もの支流を合流、150kmの流れを経て太平洋へと注いでいる。今日も那珂川は悠々と流れ、豊かな表情を見せてくれる。春の柔らかな風に吹かれ「いざ!“ヒレピン”ヤマメに会いに行こう!」と出掛けた。
3年ぶりのイベント開催!
朝、車に乗り込み温度計を見ると1℃!那須の朝は、まだまだ冷え込む。荷物の中から防寒着を探すところからのスタートとなった。この日は、昨今のコロナ禍で釣りのイベントが軒並み中止や延期となってきた中、地元の方たちの努力で3年ぶりの開催となった釣りイベントに参加した。検温に消毒、対策はバッチリ。開会式などは催されず、それぞれが受け付けを済ませ、参加賞のキャップを頂き、決められたエリア内の思い思いのポイントへ車を走らせた。
私が向かったのは、集合場所の『那珂川湖畔公園』から車で20分程走った那珂川支流の木ノ俣川。季節の植物を見ながら散策を楽しめる園地となっており、川沿いには遊歩道もある。アップダウンはあるものの道に迷う事なく遡行でき、入渓も比較的楽である。木ノ俣川は以前も訪れた事があるポイントで、いかにも“渓流”といった川で、本流とは全く違った顔を見せる。とにかく水が澄んでいて、橋から川を覗き込めば底石までクッキリ見える清流である。水が澄み切っているのはロケーションとしては最高なのだが、魚からも人間は丸見えということであり、遡行はいつも以上に自分の影にさえも細心の注意をしながら釣り進めていく必要がある。
これぞ渓流釣りの醍醐味
最初のポイントは平場が続き、雪代もあって以前来た時よりも水量がだいぶ多い。川底には枝や枯れ葉などがあり、根掛かりが頻発。ルアーを回収する度にポイントを潰してしまい、移動せざるを得ない状況が続いた。フローティングタイプのミノーなどを使い、根掛かり回避を試みながら釣り上がっていくが、どうも魚の反応が無い。魚の姿が見えないのだ。途中、餌釣りの人に出会い「釣れますか?」と声をかけてみた。すると「これから始めるので釣れるかは分からないが、川に魚はいるよ」と微笑んだ。ごもっとも!「川に魚はいる」。この言葉に気を取り直し、谷を下り登りし、大きく移動して、今度は少し深場のポイントへと歩を進めた。キンキンに冷えた雪代の入った川の水に膝まで立ち込み、静かに、静かにミノーを投げる。
「余裕を持ち、懐を深くして好機を待て」。井伏鱒二の言葉を思い出した。ここでも“ヒレピン”ヤマメは姿を見せてはくれなかったが、美しき川のせせらぎと風の音、草や土の香りを存分に感じ、楽しんだ。これぞ渓流釣りの醍醐味ではなかろうか…。
支流に散った釣り人が多くの“ヒレピン”ヤマメを!
帰着時間にはまだ早いが、木ノ俣川を後にして本流へ戻ってみた。本部前の本流で再び釣りを開始。本流は比較的水深があるので、根掛かりもそれほど多くなかった。ここではミノーだけではなく、少し重量のあるスプーンやスピナーなども使ってみた。「おっ!チェイスか!」と、思ったがルアーを追ってくるのはハヤ(ウグイ)ばかり。持っている引き出しを全て開けてみたが、ここでタイムアップ。
帰着時間になり、あちらこちらに散って行った選手たちが戻って来た。餌釣りで参加していた友人は何やらバチャバチャと音を立てる曳舟を持って帰って来た。見せてもらうと私の出会いたかったパーマークの美しい“ヒレピン”ヤマメがたくさん。身もプリッとしていて立派なヤマメだ。どうやら餌釣りで良いポイントを選んだ選手は“ヒレピン”ヤマメのパラダイスに出会えたようだ。全体的には本流よりも支流の釣果が良かった様子。この日一番の釣果は、4時間で50匹以上。それもほぼ100%美しい天然のヤマメというので驚いた。この時思い出したのは、支流で出会った釣り人の「川に魚はいる」という言葉だった。確かに「川に魚はいた!」。
まだまだ那珂川の支流には手付かずのパラダイスが眠っている事だろう。私は、また「パラダイスを探す旅に出よう」と決めた。
大会終了後には稚アユの放流
今回のイベントは、大会終了後に稚アユの放流も行われた。アユの脂ビレを皆で切り、ここで放流したアユがどこで釣れるのかについての調査も兼ねている。こうした漁協や地元の方たちの多くの努力によって川は守られ、私たちは美しい那珂川で遊ばせてもらえている。今シーズン初めて手にしたアユはまだ数cmの稚アユだったが、「どうか私のところに戻って来てね」と願いを込めて川へと放った。
施設等情報
施設等関連情報
1,500円(鮎・鯉・うなぎの採捕は不可)
■車
(1)東北自動車道・西那須野ICから大田原市内の那珂川まで25分
(2)東北自動車道・那須ICから那須塩原市内の那珂川まで10分
※那珂川湖畔公園(駐車場所多数あり)トイレあり、那須ICから10分