2022年08月26日公開
富山市・常願寺川は富山湾に注ぐ一級河川。源流までは僅か56km。その間約3000mの標高差を流れ下る我が国有数の急勾配を誇る急流河川であり、周辺は日本有数の多雨豪雪地帯でもある。そんな常願寺川には漁業協同組合がなく、100%“天然河川”である。遊漁料がない代わりにアユ釣りの情報もほとんどない。シーズン初期、知り合いから「常願寺川がいいみたいだ!」と聞いた。大分時間は経ってしまったが、調査を兼ねて、真夏の常願寺川へ向かった。
情報の少ない河川のポイント探しは一苦労!
お盆休みは不安定な天気が続いたが、その中の貴重な晴れ間。朝から気持ちのよい青空が広がっていた。友人とゆっくりスタート。常願寺川にはオトリ屋さんはないので、富山市内や近隣河川から調達しなければならない。オトリ調達に行く人、ポイントを探す人と、友人と手分けして富山市内を出発した。私はポイント探し担当。兎に角、情報の少ない川なので、ポイントも基本的には自分の足で探す事になる。頼みは先に入川している釣り人がいてくれる事だ。携帯片手に衛生写真を見ながら入川口を探していく。
まずは海に近い左岸下流の橋付近から上流に向かって車を走らせた。アシの陰に1人の釣り人を発見、そこに向かったが、堤防から川沿いに道はあるが、どうにも駐車できる場所がない。どうやってポイントに入ったのだろう?対岸から渡ったのかもしれない。このポイントには見切りをつけて更に上流へ。すると運動公園があった。ここなら駐車スペースはあるかも知れない。しかし、駐車スペースはあったが、川に降りる道が見つからない。左岸には、「ここ!」と言う場所が見つからなかったので、今度は橋を渡って右岸側へ。
橋を渡って右岸側に行こうとした時、右岸下流に釣り人が何人か見えた。ポイントの分からない時は、まずは人のいるポイントを目指すべし!人が集まるのには必ず理由があるからだ。さてさて、どうやってあそこに辿り着こうか?右岸側を川の方に入り、車を走らせるがどこも川から遠かったり、行き止まりになってしまう。大分近くまでは来てはいるのだが、河原に降りる道の入口を探すことが出来ない。車を停め周辺を歩いてみるが、それらしき道は見当たらない。すると、河原をランニングしていた人が、ちょうどそこで休憩していた。「河原に降りたい」と言うと、地元の人だったようで親切に教えてくれた。教えて貰った通りに行くと、「これは分からないや~」という細い入川口を発見した。「本当にここで合っているのだろうか」と思いながら車を進めると、遠くに車が停まっているのが見えた。近づくと丁度休憩中の釣り人が2人。「やっと見つけた~」。これでやっと釣りが出来そうだと安堵した。
早速、オトリ調達に行っている友人に場所を送って待ち合わせ。休憩中の釣り人に「どうですか?」と尋ねると「ポツポツしか釣れないね~」との事。この人たちもシーズン初期のよい情報を聞いて訪れていた。芳しい感じではないが、苦労して見つけたポイントであり、釣れていない訳ではない。その上、この日は夕方から天気が崩れそうなので、ひとまずここで竿を出すことになった。
いきなり天然遡上の良型アユが強い引き!
気温も上がり、強い日差しの下、「あっつい!あっつい!」と汗だくになりながら準備を進める。空を見上げると、本当に気持ちよく晴れ渡った夏空。友人の持ってきてくれたオトリを貰い、さて何処に入ろうか?ここのポイントは本流と分流があり、まずどちらに入るか?友人と相方は本流へ行くと言う。それなら私は分流じゃ~!「釣れたら連絡ちょうだいね!」。私は分流へ向かった。
ザラ瀬と浅瀬のトロ場が繰り返される分流。すぐには釣れないだろうと思い、なるべくオトリを弱らせずに何とか1匹とる作戦で、ザラ瀬の肩の緩い流れから始めた。ここはオトリのお代わりは出来ない。オトリが弱ったら強制終了となる。友人の持ってきてくれたオトリは大きめで、体高もあって実に力強い泳ぎをしてくれる。上流に向かってドンドン泳ぐ。10分程たった頃、友人から連絡。「瀬で思ったより大きなアユが来た」との事。心揺らいだが、まだ開始10分。分流で粘ることにした。オトリを上飛ばしにして丁寧に泳がせて行く。するとオトリが急に動きを変えた。これは近くに追ってくるアユがいるに違いない。オトリを少し引き下げ、反応のあった付近を再び泳がせてみる。すると、程なくギューン!「やっぱりキター!」。ん?思ったより重いぞ。中々オトリアユが顔を出さない。友人が言っていたように大きのか?下には流れのあるザラ瀬があるので、そこに引き込まれないようになんとか取り込みたい。竿を立てて堪える。やっとオトリの顔が少し見えた。そこから一気に引き抜き。タモに収まった“常願寺アユ”は20cm級“海産”の天然アユらしい身が薄く背中の尖った美しいアユ。透明度の高い常願寺のアユは体が黄色く、香りのよいアユだった。思ったより早く釣れた事、そして、美しいアユの姿に頬が緩んだ。
黒い石よりビール色の石が鍵! 天然遡上のアユを満喫
川幅の小さい分流。ヘチに向かって少しずつ水深が深くなり、色のよい石が並んでいる。ヘチに向かってよい泳ぎをしてくれるオトリがいれば必ず反応が出る。釣ったアユをオトリにすると凄い勢いで流れの中に入って行く。しかし、ひとつ気になったのが、どのアユも手元から放つと必ず1度下っていくのだ。ここのアユの性質なのだろうか?下ったアユを竿で操作して扇状に沖へと出して行く。するとまたしても強烈な引き。目印が吹っ飛んだ。やっぱり海産の天然アユの引きは堪らん!「ここまで来た甲斐があった」と思わせてくれる引きだ。釣れるアユのサイズは、ほぼバラつきなく良型ばかりだった。少しずつ場所をずらして探っていくと、入れ掛かりとはいかないが充分楽しめる。何より今日は釣りを始めてからずっと分流貸し切りである。広々自由に動ける。青空の元、このシチュエーションも堪らん!分流の反応がよかったので友人達にも連絡し、夕方まで3人で大いに楽しんだ。
宿に着く頃にはゲリラ豪雨
夕方になると涼しい強めの風が吹いて来た。これは雨の予感。空を見上げれば入道雲がモクモク。怪しい!と思っていると、上流からゴミが流れて来た。少し濁りも入って来た。「増水して来たね!」。安全第一だ。充分楽しませて貰ったし、無理はせずに納竿とした。夏の変わりやすい天気。自分のいる場所がいくら晴れていても、忘れずに上流の天気もチェックしてほしい。自然の力は人間が太刀打ち出来るものではない。釣り人の皆さん「勇気ある臆病者」でありましょう。この後、やはり帰り道、宿に着く頃にはゲリラ豪雨。前が見えない程の雨と雷だった。友人達と夕食をとりながら「ちゃんと上がってよかったね」。今日の“常願寺アユ”を振り返り楽しい時間となった。
情報が少ないからこそアユが釣れれば「見つけたぞ!」と嬉しさもひとしお。魅惑の常願寺川!是非、足を使い、ポイントを見つけ、あの美しい海産天然アユの強烈な引きを味わって貰いたい。
※富山県漁業調整規則により、常願寺川のアユ釣りは10月1日から10月7日及び12月1日から翌年6月15日まで禁漁なので注意。
施設等情報
施設等関連情報
オトリ販売店:無し※近隣河川のオトリ店にて購入(神通川など)
ポイントへのアクセス:北陸自動車道 立山ICから約8分