2022年10月14日公開
“江戸前”の定義は諸説紛々だが、江戸城(皇居)と大川(隅田川)を挟んで浮かぶ“江戸前島(佃島)”が、“江戸前”である事に異議を唱える者はいないはず。この島を取り囲むように掘られているのが佃堀で、“江戸前・ハゼ”の聖地ともいえる場所。ここで釣れるハゼの味は「一味どころか二味違う」。是非、自分で釣って味わって頂きたい。
図抜けた味の大川のハゼ!!
釣り人が“ハゼ”と呼んでいるのは、多くの場合マハゼを指すが「マハゼ釣り」とは言わず「ハゼ釣り」と言う。日本列島のほぼ全域の汽水域に生息する魚で“江戸前・ハゼ”の他には、東北・宮城県、松島周辺での釣りが有名で“ハゼの焼き干し”は、食通の間では有名だ。しかし、大半の地域では、“江戸前・ハゼ”の定番料理である天ぷら等にする事は少なく、“雑煮の出汁”を取る魚として知られている。
ここからは、あくまでも私見だが、それは“江戸前・ハゼ(関東地区)”の食味が圧倒的に優れているからではないかと思っている。特に大川水系のハゼの味は、図抜けており一度でも食べれば納得してもらえるはずだ。
都営大江戸線・月島駅から徒歩5分!
大川には、運河を中心に何本もの“支流”があるが、中でも佃堀は入江状になった特異な形をしており、水門を通じて大川に直結している。都営大江戸線・月島駅から歩いて5、6分の所にあり、「電車釣行」が可能な釣り場でもある。木製テラスに囲まれた一画があったり、トイレや飲み物の自販機等もあり、釣り場全体が高さ1m程の柵に囲まれている。子供達にも安全な釣り場であり、ファミリーで手軽にハゼ釣りが楽しめる場所でもある。
ただし、この釣り場の欠点は、潮の干満によって水位が大きく変わる事。上げ潮時には佃堀全体でハゼ釣りが楽しめるが、下げ潮時には底が露呈してしまう所もあって釣り場面積が極端に狭くなり、ハゼの活性も低くなってしまう。そのため、出掛ける時には、潮汐表の確認が必須となる。
満潮時間を狙って“入れ喰い”堪能!
今回は、10月8~10日の3連休に満潮時間を狙って短時間の釣りを楽しんだ。3日間とも満潮時間は午後4時過ぎから5時過ぎだったので、初日と2日目は、午後2時頃に釣り場に着くように出掛け、3日目は上げ潮が効き始める時間帯に出掛けた。3連休の天気予報は、芳しくなかったが、幸いにも天気は大きく崩れることはなく、3日間とも楽しめた。
初日は、下げ潮時に多摩川下流の海老取川との合流点で竿を出してから出掛けた。多摩川では9月に“良い釣り”をしたので期待して出掛けたのだが、前日までに降った雨で、急激に水温が下がったようで浅場にハゼの姿がなく惨敗。不安を胸に佃堀に向かった。しかし、こちらは釣り場到着と同時に入れ喰い。
9尺(約2.7m)の竿に青イソメ餌のミャク釣り仕掛けで釣り始めたが、1投目から11cm級が掛かり、10~12cm級が次々に釣れて来た。8月に来た時には6、7cm中心に大きくても10cm止まりだったが、明らかに育っている感じだ。この日は、満潮を挟んで2時間程で納竿したが、12.5cmを頭に90匹程を釣り上げた。
2日目、同じ道具立てでホタテ餌
2日目は、上げ潮の潮止まりまでの2時間に的を絞って出掛けた。連休2日目の日曜日という事もあり、家族連れを含め多くの人が竿を出していた。そんな中、この日も初日と同じ道具立て(多摩川に比べ、全般にサイズが小さかったので、ハリを6号から5号に替えた)で餌をホタテに替えて釣ってみた。
木製テラス下を狙って仕掛けを落とすと、オモリが底に着くやいなやククッと明確なアタリ。そのまま竿を立てて合わせると、いきなり12cm級の良型が釣れて来た。ここのハゼの特徴は、体色が黒っぽい事。荒川水系や江戸川水系に比べて明らかに体色が濃いのだ。それが「“二味”美味い」事に繋がっているのかは不明だが…。
この日は、潮が止まるまでの2時間をホタテ餌だけで釣って約60匹の釣果、短時間の釣りとしては、十分に面白かった。
最終日も“入れ喰い”を堪能!
最終日は、上げ潮が効き出す時間に合わせて早めに出掛けた。12時半過ぎに釣り場に到着、この日もホタテ餌で狙ってみた。
上げ潮が効き始め、少しずつ水位が上がり出しており、ハゼの喰いも活発だった。1投目から明確なアタリがあり、小気味よい引き込みで10cm級のコロンとした魚体のハゼが手の平で踊った。
この日も木製テラス下を中心に仕掛けを入れたが、ほとんど入れ喰い状態。時折、ハリ掛かりしないような小型が餌を突きに来ることもあったが、10~12cmクラスが心地よい引き込みを味あわせてくれた。
午後4時過ぎまで釣って、持って行った2つのホタテが無くなったところで納竿したが、12.5cmを頭に114匹の成績。十二分に楽しませて貰った。
この佃堀でいつまでハゼが釣れ続くのかは判然とはしないが、地元の古老の話では、「11月になっても釣れるよ」との事。もう一回り大きくなる頃、又出掛けたいと思う。
“江戸前ハゼ”料理の王道は、やはり天ぷら!!
当欄のハゼ記事には、何種類ものハゼ料理が紹介されているが、やはり“王道”は天ぷらである。
頭と内臓を取り、鱗をひいてサッと塩水で洗う。そして衣には水をつかわず炭酸水を使うとサクサクに仕上がる。市販のてんぷら粉の分量を基準にして、それを軽く溶いてハゼをくぐらせる。180度の油にそっと投入し、衣に薄っすらと色が着く位に揚げれば出来上がりだ。天つゆでも塩でもいいが、レモン汁をサッと掛けただけでも実に美味い。小生は、魚介類の天ダネでハゼに勝るモノはない-と思っているが、中でも“大川のハゼ”は、天ぷらで食べてこそ、その味の違いが分かると思う。
そして、もう一つ、“ハゼ天”ならではの食べ方を紹介しよう。“ハゼ丼”である。市販の天つゆを2(天つゆ)対1(水)で割ったものを用意して置き、ハゼ天の衣に薄っすらと色が着いたところで脂をあまり切らずにその“割天つゆ”に浸け、丼にご飯をよそって置いてそこに乗っける(天つゆの濃さはお好みで調整)。12、13cmのハゼなら10枚前後、15、16cmのサイズになれば5、6枚を乗っければ十分である。白ゴマをパラリと振り掛ければ出来上がり。高級天ぷら店でも決して出てこない“天丼”を是非味わって頂きたい。