2022年12月14日公開
一般的に最も有名なアマゾンの魚といえばこいつではないだろうか? 家畜や人が川に落ちたら、たちまち大群に襲われて骨にされてしまう…恐怖の象徴。そんな濡れ衣を着せられた妄想の怪魚、ピラニアである。(執筆:望月俊典)
ピラニアの虚像と実像
昭和時代の映画や娯楽性の強いドキュメントTV番組の影響なのだろう、アマゾンに行ったことのない人の多くはピラニアが集団で人を襲う人喰い魚だと思っているかもしれない。しかし、この哀れな語り部(←筆者のことです)は何度となくピラニアがウヨウヨしている川で泳いだり体を洗ったりしたが、一度も噛まれたことはない。むしろ水に入ると逃げていくことが多かった。あ、ひとりだけ噛まれたカメラマンがいた。それは釣り上げたビラニアをボート上に放置していたのを忘れ、たまたま指を噛まれた、という。現地の漁師からもアナコンダや淡水エイに気をつけろと言われたことはあるが、ピラニアは一度もなかった。
実際はかなり臆病な魚だと思う。語り部が高校生のときにピラニア・ナッテリーを飼育していたが、他の熱帯魚とは全く性格が違った。人には慣れないし、近づくと驚いてパニックを起こすことがよくあった。ただし、弱い者には一切容赦がない。エサの金魚が投下され水に慣れない様子を見せると…すぐに興奮して襲いかかり、ニッパーのようなアゴで真っ二つにした。
釣り師にとっては厄介なギャング団である
さて、釣りの対象魚としては…うれしいのは最初の2~3匹までだ。狙ってなくてもわりと頻繁に釣れてしまうし、そのアゴでルアーをどんどんボロボロにされてしまうのである。なので、ピラニアが多い水域ではソフトルアーは使えないし、ビッグベイトもテールがすぐに齧られてしまう。ハードルアーもプラスチックボディに穴が開けられて浸水したりフックが曲げられたり…とにかく厄介者なのだ。ただ、簡単に釣れる魚なので、一般観光客にピラニアを釣らせるツアーは人気だったりする。
一番うっとうしいのが、エサでナマズなどを狙っているとき。生きた魚や、魚の切り身にハリを付けて投入するのだが…直に「ゴツ…ゴツッ」という石で仕掛けをノックするようなピラニア特有のアタリがやってくる。ピラニアの摂食はさらにピラニアを呼び寄せ…たちまちエサは頭と骨だけにされてしまう。それにもめげずエサを投入し続けるとオオナマズがやってくる…こともある。
ちなみに、スープにして食べると結構美味しい。