2023年08月20日公開
全国300万人のハゼ釣りファンの皆さん、昨年のちょうど今頃に釣りビジョンマガジンに掲載された記事【東京・江東区、仙台堀川で“江戸前”ハゼ入れ喰い!318匹!!】をお読みになっただろうか?これは、私がリスペクトする大先輩ライター「黒岩海牛」氏が書いたハゼ釣りの記事。実に3時間ちょいで300匹以上のハゼを釣ったというエピソードだ。言ってみれば「時速100匹」。あれから1年、全く同じ場所に行って、自分も時速100匹釣りができるか、挑戦してみた!果たしてその顛末は?
時速100匹釣りに挑戦!
ハゼ釣りには友人と3人で出かけた。目指すは1時間で100匹という、かなり高めのハードルに設定。1時間で100匹ということは、計算すると平均で1匹釣るのに36秒しか費やせない。しかし、目標はあくまでも目標。達成できなくても誰かに怒られるわけではないので、とりあえず午後から出かけてきた。
同級生3人組が、仙台堀川に集結!
餌は近所のスーパーで買ったボイルホタテ。記事には餌持ちという点で青イソメの方が優れていて、手返しがいいという話が書いてあったけれど、悩んだ末に手軽さと価格で今回はホタテにした。
オオモリ「ハゼ釣りなんて、45年ぶりだよ。最後に釣ったのは川崎の大師橋だったな」
というのは、今回同行した釣り仲間のオオモリ。小学校時代からの仲間で、誘った時点では、こんな弱気な反応だった。
オオモリ「もしオデコだったらどうしよう……」
テッペイ「おいおい、時速100匹だぞ! ゼロはないって」
オオモリは、去年の秋に俺と中禅寺湖に行って1本レイクトラウトを仕留めて以来、荒川のウナギ、庄川のサケなど、8回連続ノーフィッシュを食らった。春からはよく釣れているけど、今でもトラウマになっているようだ。
まずは仙台堀川に隣接する上州屋東陽町店に寄って、ハリやヨリモドシを補充してから現場入り。その時点で、江戸川区に住むハセガワもスクーターで合流した。
ハセガワ「俺は1時間しかやらないぞ! そのあと祭りの連中と飲みに行くからな」
このハセガワも小学校からの釣り仲間。下町に移り住んでから、お祭り関係の付き合いが多いようですな。仙台堀川は、遊歩道沿いに流れる水路のような川で、10尺程度の手竿でハゼ釣りをするにはちょうどいい川幅。足場もいいし、何かが足りなくなっても、すぐ近くに上州屋があるから非常に安心。3人ともほぼ同時に竿を出すと、すぐにシモリがスーッと動き出した!
滑り出し好調……と思いきや?
ハセガワ「おう、もう釣れたぞ!」
オオモリ「俺も釣れた。これでオデコはない!」
ハセガワ「10cmはないな」
ハセガワは、自作のハゼメジャーで長さを計測。ハゼ釣りは10cmが一つの目安なのだ。仕掛けを入れると、またアタリ! これは時速100匹行けるかも……と思えるほどアタリが多い。けれど、実際すっぽ抜けたり、餌だけ食われたり。30分経過したところで本数を確認したら、3人合わせても20本くらいだった。
オオモリ「まるっきり、時速100匹なんか無理だな」
テッペイ「やっぱり餌を付け替えるのに時間かかるな」
ハセガワ「こりゃ3人合わせても100匹行かないんじゃないか?」
やっぱり黒岩御大の記事内容を忠実に守って青イソメにするべきだった。でも、なかなかアタリの来ない釣りとは違って、しょっちゅうアタリが出るから、退屈しない。
オオモリ「なんだか、フォール中に喰うことが多いな。お、今凄いアタリ!見た?」
ハセガワ「入れたとたんにグーンと持ってくのはダボ(ダボハゼ)だろ」
テッペイ「そうなのか?」
ハセガワ「ハゼが見える場所で見えハゼを釣っているとさ、グーンと持っていくのはたいがいダボが多い。まあ、俺の勝手な実感だけど」
とまあ、みんな偉そうに好き勝手言いつつ、あっちこっち歩き回って釣りをした。その割にはハゼを入れるバケツが1個しかないので、1匹釣るごとにバケツの場所まで戻らなきゃならない。これがいたずらに時間を浪費した。結局、1時間で釣れたのは53匹。これ、3人の合計。時速100匹には到底届きそうにない。
ハゼ釣りの極意は腰を据えて釣ること……か?
テッペイ「じゃあ、2時間で100匹に下方修正しよう」
オオモリ「それならいけるんじゃないか? 3人の合計なら」
ハセガワ「じゃあ、俺は帰るから。2人とも頑張ってくれ」
オオモリ「オメー帰るのかよ!」
一番釣れていたハセガワが抜けるのは痛いが、ここで、思わぬ助け舟が出た。
「これ、青イソメ使っていいですよ」
なんと、すぐ近くにいた釣り人が帰りがけに青イソメをくれたのだ。明らかに我々の3倍くらいは釣っていた人だ。
「アタリがなくても、空合わせするとだいたいハゼがかかっていますから、やってみてください」
そんなアドバイスまでくれた!100匹までは2人であと47匹、これは行けるんじゃないか?
そして1時間が経った。
テッペイ「これで、34匹か…」
オオモリ「2時間で87匹ね。時速43匹ってとこだな」
黒岩御大の域に達するにはまだまだ修行が足りなかった。今夏のうちに、弟子入りしたい。青イソメは確かに餌持ちがいいし、手返しが良かった。マジで、途中までは入れ食いだったこともある。けれど、アタリが突然止まってしまったのだ。原因は不明。でも、やっぱり1時間で100匹釣るには、ハゼが次から次へと入ってくるような場所で、一歩も動かずに釣り続けないと無理だということが分かった。
オオモリ「でも、数釣りには数釣りの面白さがあるな。俺は大満足だよ」
人生のほぼすべてを大物釣りに捧げてきたオオモリには、新鮮だったようだ。
池波正太郎のようにハゼを食いたい!
釣ったハゼを全部もらった俺は、心に決めていた。
テッペイ「今回のハゼは、天ぷらにする」
15cm級のハゼ5匹は背開きにして、天ぷらに。残りの82匹は、鱗と頭と内臓だけ抜き、2度揚げして唐揚げに。正直、天ぷらは初めての挑戦。見た目はよくないが、味はどうだろうか? 身がふわふわとして、咀嚼するとハゼ特有の旨味が、口の中に広がった。皮の香ばしさが身との間にある脂に溶けると、滋味が増すのだろうか? ふわふわとした身に染みていくようで、絶妙な味だ。娘に1匹だけ渡し、残りの4匹は自分で食べてしまった。
骨ごと食べられる唐揚げも家族に大好評。池波正太郎の「剣客商売」に、江戸前のハゼを生醤油と酒でさっと煮付けたものを出す料理屋が出てくる。次にハゼ釣りに行ったら、脂の乗ったハゼでそれをやってみよう。文豪になった気分で、一杯やりたい。もちろん、次回こそ時速100匹を達成して。(無理か)
この記事を書いたライター
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