2025年02月01日公開
オカッパリのアジングにおいて、もっともオーソドックスな釣り(リグ)は〝ジグヘッド単体(ジグ単)〟だろう。しかし、それ以外にも様々なリグが用いられているのをご存じだろうか?今回紹介する「スプリットショットリグ」もアジングにおいて効果的なリグのひとつであり、かつては〝主流リグ〟という位置づけだった時代もあるそうだ。どんなメリットがあり、どのようなシーンで活躍してくれるのか?釣りビジョンの人気番組『青色アジング』に出演中のエキスパート・本岡利將さんに解説してもらった。
「ジグヘッド単体」と「スプリットショットリグ」の違い
釣りビジョンの人気番組『青色アジング』に出演中の本岡利將さんはタックルメーカー・クリアブルーの代表を務める傍ら、全国各地のフィールドを釣り歩きながらアジングを追求し続けるエキスパートアングラーでもある。そんな本岡さんが釣り具店のイベントでお客さんと会話する中で「アジングでスプリットショットリグですか?」と、こんな質問を受け、驚いたそうだ。実際に記者も、同様の質問を本岡さんにしたことがある。
本岡「現在、アジングと言えばお手軽なジグヘッド単体(ジグ単)で狙う方が各地で多くいらっしゃいます。ですが、私がアジングを始めた頃は、スプリットショットリグ・キャロライナリグが主流で、ジグヘッド単体は手前のポイントを狙う感じでした。確かに海の状況は当時とはかなり変わってきていますが、今もスプリットショットリグはかなり有効で、喰わせ能力の高いリグとして、優位になる場面も多々ありますよ」
なるほど、本岡さんがアジングを始めたのは、今から18年前。〝10年ひと昔〟とよく言うが、18年と言うと〝ふた昔〟に近い。環境に合わせて釣り道具(リグ)が変わっていてもおかしくはない。本岡さんは、実際に今も現役で〝スプリットショットリグ〟を使っているようだが、どういった場面で出番があるのだろうか?
本岡「1.5gのジグヘッド単体だと、アタリがあってもなかなかフッキングにまで至らない。こういった状況になることが、アジングにおいては多々あると思います。特にアジの活性が低く、吸い込む力が弱い時、ジグヘッド自体のウエイトを軽くすれば吸い込みやすくなりますが、強風時や激流エリアではウエイトを軽くすることができない場面もあります」
・潮流が速く、狙いたいレンジに入らない。
・強風で狙いたい場所まで飛距離が足りない
本岡「上記のようなシチュエーションでオススメしたいのが、スプリットショットリグです。基本的な構成はスプリットショット用のシンカーとジグヘッドの組み合わせになりますが、例えば【スプリットショット用シンカー 1g + 0.5g ジグヘッド】という組み合わせ。これは1.5gのジグヘッドと総重量は同じであっても、軽量のジグヘッドが使えるので、アジが吸い込みやすくなるのがポイントです」
シンカーの素材について
実際にスプリットショットリグを使うにあたり、「シンカー」はどんなタイプを選べばいいのだろうか?
本岡「さまざまな素材のシンカーがある中でオススメなのが『タングステン素材』です。鉄の約2.5倍の比重を持つ金属で、ルアーでもこの素材を採用したものが増えてきました。体積が小さいことが大きなメリットで、スプリットショットリグのシンカーに活用すると以下の状況にマッチします」
【1】キャスト時の空気抵抗が非常に少ない=同じ重さのシンカーでもタングステン素材を採用したものは飛距離に大きな違いが生まれる。
【2】潮流の抵抗が非常に少ない=潮流の速いエリアで探る場合、体積が大きいと水流を受けやすく、狙いたいレンジに入る前に流されてしまう。
本岡「まもなく発売予定の『TGパラソルシンカー(クリアブルー)』も、その名の通りタングステン素材を採用。形状は五角形で、その五角形の角の部分があることでキャスト時も空気を切り裂き、着水後の海中での水流の受け流しも効率的になっています」
「アクション=誘い方」について
アジングでは、ロッドワークで誘いを入れていくことも多いが、スプリットショットの場合はどのようにアクションを加えるのだろう?
本岡「スプリットショットリグはジグヘッドの手前にシンカーがあるので、動かすのは〝シンカー〟です。このシンカーを動かすとジグヘッドが追従する形になります。もちろんメリットだけでなく、デメリットもあるので、それを知ることで効果的にアジングが楽しめると思います」
【メリット1】ジグヘッド単体よりも飛ぶ
「例えば、1.5gのジグ単の場合と、スプリットショットリグで【シンカー1.0g + ジグヘッド0.5g】の場合、トータルウエイトは同じですが、分離のリグであるスプリットショットリグの方が飛距離が出ます」
【メリット2】ゆっくりアジを誘える
「ロッドワークをクイックにアクションしても手前のシンカーが動きを吸収するので〝ふわっ〟と誘うアクションを演出できます。より軽いジグヘッドが使いやすく、シンカーから先のリーダーの長さ分がゆっくり沈み、誘い、渋い時の喰わせの間も取りやすくなります」
【デメリット1】キビキビした動きを演出するのは難しい
「ジグヘッドの手前にシンカーがあるので、細かいロッドアクションを入れても伝わりにくいです」
【デメリット2】即アワセが必要な時、若干遅れる
「シンカーがロッドワークを吸収してしまうので、ジグ単よりも早く大きくフッキングするイメージで考えてください」
本岡「スプリットショットリグの欠点としてよく挙げられるのが、ジグヘッドの手前にシンカーがあるため〝アジが喰ったアタリの振動が吸収されて分かりにくい〟というもの。ただ、それは、ふた昔前の話で、現在はタックルが大幅に進化しました。特にロッドは高感度に設計することができ、アタリを感じたら即座に掛けていくことができます!オススメは私も愛用する『クリスター(クリアブルー)』シリーズ。高い反響感度を実現しており、小さなアタリを即座に感じることはもちろん、潮流の中でもリグの存在をしっかり感じることもできます。スプリットショットとジグ単とでは扱いが異なる点がいくつかありますが、少し意識するだけで大きなメリットが手に入ります」
なるほど、釣り道具も進化し、釣り人を大いに助けてくれるようになってきたということだ。
ライン&リーダーセッティングと〝使いどころ〟に合わせたシンカー&ジグヘッドのウエイトバランス
スプリットショットリグを組む際、本岡さんはメインラインとリーダーのセッティングにひと工夫をしているそうだ。
本岡「シンカー3g以下であれば、エステルラインでも使えます。その場合には、0.3号以上を私は使いますね。4g以上となると、やはりキャスト切れが出てくるのでPEラインのほうがオススメです。エステルラインもPEラインもリーダーを結ぶのですが、そのリーダーがポイント!私はメインラインにリーダー1.5号を15cmくらい結び、シンカーを取り付け、その先に8の字で0.8号を結び、ジグヘッドを結びます。タングステン素材のシンカーだとかなり高価です。万が一、リーダーや結束部分が切れた場合でもシンカーが回収出来るようにしています」
また、シチュエーション別のシンカー&ジグヘッドのウエイトバランスについても解説してくれた。
[スプリットショットリグが有利なシチュエーション例]
【1】飛距離も欲しいし、スローに誘いたい時
本岡「例えば、2g単体を直結すると、かなりアクティブな動きになります。ですが、スプリットショットリグで【シンカー1.5g + 0.5gジグヘッド】だと、よりスローに誘うことができるんです。そして、ポイントは、『シンカー1.5g』を操作して0.5gジグヘッドがゆっくり追従するイメージで操作してください」
【2】強い流れの中でもスローに安定させたい時
本岡「例えば、ジグヘッド5gで狙うとします。活性が高ければ、重さによる沈下スピードがリアクションバイトを誘います。喰いが渋くなるとアタリが少なくなります。これを、【シンカー4g + 1gジグヘッド】に変更するとどうなるか。ドリフト気味で流して、ロッドアクションで《ふわっと》誘うと1gジグヘッドが強い流れの中でも安定してゆっくり誘い、喰い渋るアジに口を使わせることができます」
シンカーおよびジグヘッドのウエイトの組み合わせを変えることで、釣り場や状況に合わせた使い分けも楽しめそうだ。「スプリットショット」というワードに聞き馴染みがない方もいるかと思うが、この記事を参考にぜひみなさんも使っていただきたい。アジングゲームのさらなる魅力を発掘しつつ、奥深さを体感できるはずだ!
なお、釣りビジョンVODにて絶賛配信中の『青色アジング』最新話「6 秋の高松でアジングシーズン開幕!」では、本岡さんがスプリットショットを駆使して、ナイトアジングを楽しんでいる。渾身の新作ロッドも登場するので、こちらもぜひチェックしていただきたい!