2022年10月13日公開
「オオクチユゴイ」という淡水魚をご存じだろうか?インド洋~西太平洋域に分布しており、日本では主に奄美大島や琉球列島に生息している。最大50㎝に育つ雑食性のアグレッシブな魚。ルアー釣りの好対象魚として近年注目を集めていて、沖縄では「ミキユー」、「ミキイユ」と呼ばれている。そんなミキユー釣りをカメラに収めようと、釣りビジョンの撮影班は沖縄へと飛んだ。果たして釣り上げる事は出来たのだろうか?番組公開を前にロケの模様をお届けしよう。
ミキユーとは?
ミキユーとは、スズキ目ユゴイ科ユゴイ属の淡水魚。基本的に雑食性で、甲殻類や小魚、昆虫などを主に捕食し、ルアーにも好反応を示すとてもアグレッシブな魚だ。ミキユーは、草木が覆い被さっているオーバーハングや岩陰などに身を潜めて獲物を狙う。そのため、ピンスポットへ正確に落とせるキャストテクニックが必要不可欠。ルアーは主にトラウト用の小型プラグを使用する。昆虫類を捕食している場合は、羽根モノプラグやペンシルベイトなどのトップウォーターが効果的。表層に出きらないような時は、リップレスジョイントミノーやヘビーシンキングミノーなど使い分け、低活性時や魚のレンジが深い場合は、スプーンやスピナーなどが有効だ。何より、シチュエーションやベイトに応じてルアーチョイスすることが肝となる。とても警戒心が高い魚が故、極力警戒心を与えないように、足音や立ち位置など、細心の注意を払うことも重要。基本的に1年を通して狙えるが、夏が最盛期。梅雨の大雨や台風後が、数、サイズともに期待できる。
沖縄県北部“やんばる”へ
今回の舞台となるのは、沖縄県北部のやんばる(山原)。やんばるという特定の地域は存在せず、山原という名の通り、自然が多く広がる地域一帯を指す。言わば愛称のようなものである。手つかずの広大な自然が残されているこの地には、絶滅危惧種にも指定されているヤンバルクイナをはじめ、ノグチゲラやヤンバルテナガコガネなど、数多くの貴重な動植物が存在し、やんばる独自の生態系を築き上げている。聞くところによると、このやんばるには日本の両生類、爬虫類の約60%の種類が生息しているというのだから驚きだ。この豊かな自然財産を保護し続けていくためにも、2016年9月に国立公園、2021年7月にはその一部がユネスコ世界自然遺産として登録されている。この取材を予定していたのは、まだまだ残暑が厳しい9月上旬。しかしこのタイミングで台風11号が日本列島に急接近。その影響を受け、予定していた飛行機が欠航となり、1日遅れでスタッフは那覇空港へと降り立った。ひとまずA&Wでハンバーガーを食らい腹ごしらえを済ませ、やんばるへと車を走らせた。
~釣行1日目~ 小規模河川でミキユーを狙う
今回の出演者は謝花和也(じゃはなかずや)さん。ミキユーに精通するアングラーで、夢の50cmオーバーを仕留めるため、やんばるへ足繫く通う。
釣行初日の朝、スタッフは謝花さんと合流し、さっそく沖縄北部の河川へ向かう。やって来たのは岸が護岸された、都市部でもよく見る小規模河川。さっそく土手から観察していると、水面にはわずかに波紋が広がっていた。謝花さんによると、ユスリカなどを捕食するミキユーのボイルだそうだ。期待を膨らませて入水し、川を遡り釣り上がっていく。基本的な釣り方はアップストリーム。警戒心が高いため、上流に釣り人が立つと釣れなくなるからだ。オーバーハングや流れ込みを次々狙うも、チェイスすらなく大苦戦。唯一確認できたのは、水面を優雅に泳ぐハブだけであった。
すぐさまポイントを移動。続いて訪れたのは、シダ系の植物が辺りに群生する河川。まさにジャングル。本当にここは日本なのか?と疑いたくなる壮大な景観だ。台風の影響でわずかに濁りが入っているが、警戒心が高いミキユーを釣るには好都合と謝花さんは語る。程なくして、ミキユーらしい魚影を発見。気付かれないように体勢を低くし、トラウト用の羽根モノプラグをキャスト。狙い通り、勢いよくミキユーが飛び出してきたが、惜しくもショートバイト。ミキユーは一度バラしてしまうと警戒心を与えてしまい、釣れなくなってしまう。謝花さんはこの場に固執することなく、さらに上流へと進む。
今度はジョイントタイプのリップレスミノーを流芯へキャスト。ドリフトさせながら反転流をかすめる。ルアーがスイングした瞬間、20cm程のアベレージサイズがヒット!なんとか初日にミキユーをキャッチすることに成功した。引き続きジョイントベイトを通してみるが反応が薄く、スピナーでレンジを下げる。その瞬間、竿が大きく曲がる。先ほどよりも強い引きに、謝花さんも慎重なやり取り。上がってきたのは30cm程の良型だった。これがこの日のパターンだと判断した謝花さんは、その後もスピナーをメインにアプローチを続けていった。
~釣行2日目~ 更なるサイズアップを求めて
釣行2日目はサイズアップを狙うため、謝花さんとっておきの河川へ。
過去にも40cm近いグッドサイズを数多く釣り上げた実績場だそうだ。川を遡って釣り上がる道中、沖縄に生息するオオウナギが出迎えてくれた。その他にも、沖縄と鹿児島に生息するキノボリトカゲや、アオカナヘビに遭遇。この豊かな生態系と、まるで南米の奥地へ来たような鬱蒼とした雰囲気も相まって、辺り一帯には大物の気配がプンプン漂う…。
だがそう簡単にもいかず、ミキユーに出会えないまま約5時間が経過。普段運動をしていないスタッフの足が悲鳴をあげ始める。昨日かなりの距離を歩いて溜まった疲れも、まだ完全には抜けきっていない。体力的にもそろそろ限界だ…。とはいえ呑気に休憩などしていられない。更なるミキユーとの出会いを求めて進んでいくと、川筋が蛇行するポイントに出た。流れが当たる岩盤の水深は深い。すかさずリップレスジョイントベイトをキャストすると、流芯から黒い魚影が勢いよく現れた!そしてルアーに激しくバイト。明らかにこれまでとは違う強烈な引きに、ドラグがジリジリと引きずり出される。ラインの先、確かに感じる魚の存在にサイズアップを期待し、謝花さんは少しずつ間合いを詰めていく…。
ちょっと裏話
今回のやんばる釣行の全貌をここで語ってしまっても良いのだが、それでは番組本編を見る楽しみがなくなってしまう…。ということで、恐らく本編では明かされないであろう裏話で本記事を締めくくることにする。
遡ること釣行初日。謝花さんとスタッフはミキユーを釣り上げるべく、河口からエントリーして上流へ向かって歩き続けていた。経験のある方ならお分かりだと思うが、川の流れに逆らって歩くのは意外とキツイ。撮影用カメラおよそ10kg、三脚およそ5kg。それらを長時間持ち運び続けるのだから、尚更疲労が溜まる。普段あまり運動をしていないスタッフ…ダムがある最上流部に到着する頃には満身創痍であった。
「これ以上は行けないんで、一旦車に戻りますか!」と謝花さん。だがそれは今歩いてきた道をまた戻るということ。途中足場が悪いところや腰まで水に浸かるポイントもあり、撮影機材を守るためにもなるべくリスクは背負いたくない。他の道はないかと聞いてみると、「あと一つだけ帰り道あります!」とのこと。
間髪入れず賛成し、別ルートで車に戻ることにした。これで多少は楽になる…と思っていたスタッフだが、それは大きな間違いだった。待ち受けていたのは、険しい山道を越えてからの果てしない旧道。老体スタッフの体力はあっという間に底をつき、謝花さんに撮影機材を持ってもらいながら帰る羽目に…。結果として車まで2時間弱、疲労は行きの倍以上。別ルートを選んだことに後悔していたが、戻る最中にとても珍しい生き物に遭遇した。それはリュウキュウヤマガメ。ヤンバルに生息する沖縄の固有種で、謝花さんですら滅多に見かけないという。これだけでも歩き続けてきた甲斐があったと、少し報われた気持ちになるスタッフなのであった…。
釣りビジョンでの番組初回放送日:10月28日(金)「やんばるに潜む巨大ミキユーを釣り上げろ!」