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松本幸雄・房総50UP実績バスルアーのトリセツ1・ジグスト編

2022年12月20日公開

松本幸雄・房総50UP実績バスルアーのトリセツ1・ジグスト編

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三島湖と豊英湖のレンタルボート解禁以来、足繁く同湖に通う松本幸雄さん。管理釣り場のトラウトゲームが本職ではあるが、バスはもちろんソルトゲームからワカサギ釣りまで何でもこなす生粋の釣り人。こと三島湖においての50cmアップキャッチ率は、恐らくナンバーワンではないだろうか。そんな松本さんに、ここ数年で最も50cmアップをキャッチしているルアーについて詳しく解説してもらいました!(執筆:大場未知)

アングラー紹介
アングラー紹介
松本幸雄(まつもと・さちお)
ロデオクラフトの開発を担当する一方で管理釣り場のトラウトゲームからソルトウォーターのビッグゲームまで多岐にわたるマルチアングラー。ホームレイクは千葉県君津市の三島湖、豊英湖

房総半島の人気レンタルボートレイク三島湖

房総半島のメジャーリザーバーには、バスアングラー向けのレンタルボート店を有する湖が6つある。最も有名なところは亀山湖、高滝湖だ。亀山湖の上流には片倉ダム(笹川湖)があり、三島湖と豊英湖はお隣の小糸川水系に当たる。さらに南下した富津市には戸面原ダムもある。

松本さんがホームグラウンドにする三島湖は、フットコンエレキをレンタルできる唯一の湖ということも手伝って、人気急上昇中のリザーバーなのだ。一方で現在はダム工事に伴い水位を落としているため、水面の面積は狭くプレッシャーが極めて高い。バスアングラー向けレンタルボートを始めた2019年当初は『房総最後の楽園』と称されたが、もはやそれは過去の話だ。

松本「解禁当初に比べたらデカイのも難しくなりましたね。以前はNZクローラーやマグナムクランクでもボコボコ釣れましたけど、最近は厳しいです」

それでも松本さんは三島湖、豊英湖を合わせると年間20~30本の50cmアップをキャッチしていると言うから驚きだ。

今回取材をお願いしたのは12月の初旬。この冬一番の寒さを記録した厳しい日。おまけに水位は10mほど減水しており、満水時に比べると湖の規模は半分にも満たない状況だった。

今回お世話になったレンタルボート店の『ともゑ釣船店』。三島湖は写真のように大減水していた。

実績No.1はジグ&ポーク!

三島湖に通うアングラー、あるいは松本さんのSNSをフォローしている方ならジグ&ポークの破壊力はご存知だろう。みずからがプロデュースしたRCフラットバックジグ(デプス×ロデオクラフト)&ヤバたんorボコたん(ともにロデオクラフト×釣り吉ホルモン)のコンビネーションは、松本さんの代名詞的バスルアーともいえる。事実、三島湖と豊英湖では年間を通して一番50cmアップ率が高い組み合わせだ。ラインアイの角度が30~90℃で先端の尖ったアーキータイプのヘッドにブラシガードが付いたジグは、一般的にはカバージグに位置づけられる。もちろんRCフラットバックジグもそこに分類されるが、通常よりも大きめのフックが搭載される。名前からもわかるようにベースとなっているのはデプス社のフラットバックジグ。松本さんが古くから愛用するお気に入りで、ポークを装着しやすいように改良したのがRCフラットバックジグなのだ。

カバーはもちろんのこと、RCフラットバックジグはスイミングにも最適なデザインになっており、松本さんはヤバたんorボコたんを通し刺しにセッティングする。その理由はシンプルで「ジグのヘッド付け根部分とポークの隙間が許せない」から。すべてのフックをバーブレスにするため、ポークが抜けないよう念のためにゴム管を通す。チョン掛けセッティングにしないこと以外は昔からある、いわゆるジグ&ポークなのだが、問題はポークだ。

ヤバタン&ボコタンはアンクルジョッシュ社の名作ビッグダディーよりも、もう一回りでかい。ジグ&ポーク初心者は尻込みしそうなサイズ感ではあるが、ポークを通し刺ししている分、チョン掛けよりはシルエットも小さくなるし、40cmクラスが食ってくることも珍しくない。市販されているほとんどのポークは、チョンがけ出来るように本体に穴が開いているのがデフォルト。それを通し刺しする際は、力ずくで皮面ではなく脂身面に刺し抜くのがコツだ。

上がボコたんで下がヤバたん(ともにロデオクラフト×釣り吉ホルモン)。いずれも松本さんがデカバスを獲るために長い年月をかけて開発したポークだ。松本「正直、明確な使い分けはありません。どっちかって言うとボコたんのほうが釣りやすいかな……。いや、どっちも58cmまで釣ってますから、なんとも言えないな。ボコたんはドゥルンドゥルン、ヤバたんはピリピリ系です」。ポークはどちらもブラウンで、上のボコたんが出荷時の染色で使い倒すと下のヤバたんのようになる。これもポークの持ち味で、薄くなってきたらプロブルー系のジグに合わせてシャローで使うのが松本流。早春はアカガエルを意識したブラウン系ジグに色の濃いブラウン(新品に近いもの)が実績
RCフラットバックジグ(ロデオクラフト×デプス)はヤバたん&ボコたんを通し刺しにもできるビッグフック仕様

なぜポーク?ワームではダメなの?

ポークは豚の脂身と皮を成形した天然素材で、ワーム素材にはない特有の柔らかさと艶めかしさを持つ。チャンクタイプのポークはジグのトレーラーとして用いられるのが一般的でデカバスの実績が高いことでも知られる。ただし、天然素材ゆえに使用される部位によっては硬さに個体差が生じることもある。しかし、これはポークの短所であり長所でもあると松本さんはいう。

松本「ポークは使っているうちに柔らかくなっていきますけど、硬い個体は水押しが強いから濁った時にいいんですよね。ヤバたんもボコたんもそれなりにボリュームがあるので、柔らかくても水は押します。どちらかといったら柔らかいほうがスローに動かしやすいですけど、硬いほうが水の撹拌力が高いので濁った時に強いんです」

昔から『ポークは自分で育てる』と言われるが、複数の個体を状況に合わせて使い分ける楽しみもあるようだ。
さて、ここからが本題。ずばり、なぜジグ&ポークが三島湖、豊英湖の50cmアップ率を高くするのか。

松本「まず第一にジグ&ポークは使い勝手がいいんです。水面直下から5mくらいまでこれひとつでカバーできる。それと、ガード力が高いから立木や崩落カバーといった沈みものにも強い。カバージグではあるんですけど、デカイのを釣っているのはほとんどがスイミング、いわゆるジグストです」

ヤバたん&ボコたんは単体でも120ミリオーバーでボリューム満点。この大きさがデカバスを魅了するのは言わずもがな。しかし本当の効果について松本さんはこう考える。

松本「単純に大きいからデカイのが釣れるのもありますけど、それよりも水押しの強い物体を、狙ったレンジでゆっくり動かせるってことでしょうね」

なるほど。バスルアーは星の数ほど存在するけど、スローにしかもボワンボワンと水を掻きながら泳がせられるものとなると、これが唯一無二かもしれない。RCフラットバックジグ&ヤバたんorボコたんのコンビによる50cmアップ捕獲率は松本さんの確信であり必然なのだ。

松本「ジグストは間違いなく年間を通して一番50cmアップを釣っています。ここ1~2年だと次はスクーパーフロッグとパワーミドストですね」

スクーパーフロッグとパワーミドストについては後述するとして、これら3つには共通する脈所がある。それは中層を横に引くこと。

松本「房総リザーバーはネコリグやノーシンカーみたいな点の釣り、フォールの釣りは散々やられてますけど、横の中層はまだ他人を出し抜けるから狙ってデカイのを釣りやすいんです」

ヤバたん(ロデオクラフト×釣り吉ホルモン)。お値段は少々張るが、これで50cmアップが何本も釣れるならむしろ安い!

ジグストをマスターするコツ

ジグストとはジグストローリングの略で、端的に言うとラインスラックを上下に揺さぶりながらジグを中層に漂わせるテクニックのこと。シンキングルアーを中層で泳がせることに加えて、引き抵抗も弱く極めてノー感じだ。初めてトライする際には『本当にこれでいいのか?』と不安になることだろう。そこで松本さんに上手に操るコツを聞いてみた。

松本「まずは、すぐに釣ろうとせずにジグストを理解すること。レンジコントロールとスピード感が難しい釣りなので、最初は目視できるところで、どれくらいキャストして何秒で何m沈むのか覚えるといいでしょうね。房総リザーバーではそこまでロングキャストすることもないので、キャストのディスタンスもある程度決めたほうが理解しやすいです。それともうひとつ大事なのは、同じタックルを使って覚えることです。ロッドはもちろん、リールのギア比、ラインサイズを統一することでジグの泳層とスピード感を体で覚えさせます」

 アクションはジグをダイレクトに動かすのではなく、ラインスラックを振りながら、リールでスラックを段階的に巻き取るイメージだ。松本さんの操作を見るとリール1回転を3段階で巻き、その1回転の間にロッドを2~3回優しくしゃくり上げる。このラインスラックコントロールをマスターできれば、シェイクしながらレンジを下げたり上げたりすることもできるようになる。

松本「ジグの重さは3/8オンスで覚えるといいでしょうね。1/2オンスも使うことがありますけど、そこの使い分けはレンジではなくスピードです。自分も深いところを速く誘いたい時以外は3/8オンスがベースです」

ロッドの振り幅は時計文字盤にしたら2~3時間分。シュッシュッシュッではなくフワッフワッフワッとゆったりシェイクする。またレンジの軌道コントロールはロッドの高さとラインスラックの増減で調整する
月間バサー誌の取材時に7月の豊英湖でキャッチした47cm
タックル情報
タックル情報 ジグスト用はホワイトウルフ78 20ポンドクラス
今回の取材で松本さんがボートに持ち込んだのは5本のタックル。そのうちジグ&ポーク用がジグストに使うタックルだ。自身が開発した「フォーナイン・ホワイトウルフ」は、ノリの良さとパワーを併せ持ったバスロッドで、レングスとラインのクラスでカテゴリーを分けている。
取材時のタックルDATA
※松本さんのロッドは全てフォーナイン・ホワイトウルフ/ロデオクラフト、リールはシマノ、ラインはバリバス
●ジグ&ポーク…
ロッド:78 20ポンドクラス
リール:メタニウムHGレフト
ライン:ガノア アブソルート20ポンド
●ジグ&スクーパーフロッグダディ/プロト…
ロッド:611 13ポンドクラス/プロト
リール:アルデバランMGL31HG
ライン:ガノア アブソルート14ポンド
●ジャークベイト…
ロッド:70 8ポンドクラス
リール:アルデバランBFS XGレフト
ライン:ガノア アブソルート12ポンド
●パワーミドスト…
ロッド:72 4ポンドクラス
リール:ヴァンキッシュC2500SXG
ライン(写真はフロロカーボン):マックスパワーPE0.6号+アバニ エギングプレミアム ショックリーダー2.5号
●ダウンショット…
ロッド:66 2ポンドクラス
リール:ステラC2000SHG
ライン:アバニ ソルトウォーターフィネス0.3号+スーパートラウトエリア マスターリミテッド5ポンド+アバニ エギングプレミアム ショックリーダー1.7号
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この記事を書いたライター

大場 未知
東京・麻布十番育ち。大学時代は留学先のテキサスでバスフィッシングの腕を磨き、日本の出版社勤務を経て再び渡米。B.A.S.S. およびFLWにコアングラーで参戦。FLWではチャンピオンシップで2位に入るなど、アマチュア賞金稼ぎとして数々の爪痕を残した。
現在は、千葉県君津市在住のフィッシングライター&エディター。
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