2023年07月19日公開
「御前崎沖でマダイのいいのが上がっている」。そんな噂を小耳に挟んだのは7月初旬。長かったコロナ感染防止の活動自粛ですっかりご無沙汰しているプチ遠征。しかもゲーム性の高い“タイラバ”で楽しめると聴いたら居ても経っても居られない。東名高速道路を西へ200km、御前崎港『伊達丸』へと向かった。
集合場所は『御前崎 海鮮なぶら市場』が目印!
タイラバ船『伊達丸』が発着する御前崎港は、都心から車で3時間。東名高速道路・相良牧之原ICを降りて20km程だが、バイパスがあるので走行距離の割に随分近く感じられる。集合は「御前崎 海鮮なぶら市場」の裏手にある未舗装の駐車スペースで、この日は午前4時45分の待ち合せ。15分前に軽トラで乗り付けた伊藤船長。予約の釣り人たちが揃うまで、海の近況など暫し談笑。クーラーやタックルバッグを軽トラに積み込んで、全員が揃ったところで船着場へ移動。釣り人たちは竿だけ持って港内を歩くこと2分程。船着場では船長が皆さんの荷物を積み込んでいるので、これに参加。この日のプランの説明が船長からあり、釣り座をジャンケンで割り振って出船準備は完了。定刻の5時ちょっと過ぎに『伊達丸』は出船した。
一流し目から“本命”ヒット!
御前崎港を出て、霧の中をゆっくり沖出しすること1時間弱。「潮流と反応のあるところ」を捜索していた船長は水深55mの釣り場からスタート。ほどなくして左舷ミヨシ(船首)で竿を出していた松永さんにアタリ。ドラグのクリック音が鳴り渡り、一同の注目を集める中、取り込まれたのはコバルト色の斑文も美しいナイスキーパー。その5分後、再びアタリをモノにした松永さん。取り込まれたマダイは1kg弱とサイズアップに成功。
この後も、アタリがあってハリ掛かりに成功したり、失敗したりを繰り返しながら、ポツリポツリと“本命”が取り込まれた。型の良いサバやワラサなどの“ゲストフィッシュ”に船中が沸く一幕もあり、“タイラバ”の持つスポーティで陽気な雰囲気は特に印象的だった。魚群探知機に映し出される反応は常に良好で、派手さこそないものの、1匹、また1匹と釣果は着実に伸びていった。
美味しい“ゲストフィッシュ図鑑”
“タイラバ”の隠れた楽しみに多彩な“ゲストフィッシュ”がある。ハタ科でこの日一番上がったのはアオハタ。他にもアカハタやキジハタ(アコウ)、オオモンハタが釣れたが、ハタ科の魚は押し並べて味が良く、釣ったら活け締めにして血抜きをした後、帰宅後は鱗を剥き、エラと内臓を抜いた状態にして冷蔵庫(チルドルーム)で3日以上寝かせる(熟成させる)と食感と旨みが向上する。熟成に不可欠な衛生管理に自信の無い方は、ムリせず“まーす煮”や鍋種、蒸し料理にしても非常に美味なのでお試し頂きたい。
また、“青物”としては丸々とした良型のゴマサバやワラサが上がり、今年はカンパチもよく上がっているとのこと。キャッチ率アップやオマツリ防止のためにも、いつもより太めのリーダーを結んで強気のファイトをお薦めしたい。
この他にもイトヨリやアヤメカサゴ、イラなどカラフルで美味しい魚が取り込まれた。ハリ掛かりした魚を取り込むまでに魚種をあれこれ予想したり、帰りの車中で「あの魚はどうやって食べようか」と思案するのもまた楽しい。なお『伊達丸』では釣れた魚を船長が血抜きや神経締めまでしてクーラーへ入れてくれるので、釣り人は時間一杯釣りに集中できるのも嬉しいサービスだ。
浅場へ移動、時合い到来!
“ゲストフィッシュ”交じりでポツリポツリと釣れていたが、潮が緩み始め、アタリが遠退いた10時30分。船長は手堅く見える水深50mの海域に見切りを付け、浅場へと舵を切った。海鳥を追い掛けながら、海面にイワシの踊るホットスポットを発見。60g前後の軽めの“タイラバ”を投げて斜めに引いてくると、ハタ科の魚たちが何度もアタックしてくるすこぶる楽しい釣況に。やがて潮が速度を上げて船も流れだし、200g前後の重めのヘッドにマダイが積極的に口を使う時合いへと突入した。
これまで釣果に恵まれなかった人も次々と“本命”をキャッチ、「やっぱり“タイラバ”は潮次第なんだなぁ」と実感すること然り。徐々に釣れる魚のサイズもアップした沖上がり15分前。この日はどういう風の吹き回しか、釣果の奮わなかった常連の中村さんに待望のアタリ。竿元まで絞り込む強烈なファイトを見せた魚は63cm(3kg)の良型マダイ。難しい時間帯こそあったものの、クライマックスを飾る素晴らしい時合いに恵まれ、皆さん心地よい疲れと共に笑顔での沖上がりとなった。
船長に訊く、タイラバのコツ
伊藤嘉朋船長に最近のマダイの模様を訊いた。「魚自体はね、かなりイイと思う。浅いところにもちゃんと入ってるし、ベイトも入ってるし。なのに、いわゆる黒潮の蛇行で、潮が読めないのが最近続いてるんですよね。今はハイシーズンなんで、一つ潮を掴んじゃえばちゃんと答えを得やすいというか、それを待ってるんですけど。遠くのエリア、八方とか金洲とかも行くんですけど、そっちまで走らせてもなかなかイイ潮が見つからなかったりもするんで。そのへんが揃ってくれば、本調子になってくるんですけどね。ちょっとだけ、少しだけ潮が変化すればね、すごい良いと思うんですよね」とのこと。
こればかりは自然相手なので、まめに釣行を重ねて良い日に当たるより策はない。一方、釣り人が出来ることを尋ねると「やっぱね、自分が見てて思うのは“キャッチ率を上げること”ですね。時合いが来て、アタリがあって、チャンスがあっても、3回全部モノに出来れば、カンタンなんです、もう3匹獲れるんです。それがやっぱり課題で。今は市販で、色んな道具が売ってるんですけどね、それを丸ごと持って来るんですね。それは間違いじゃないんだけど、ハリのセッティング、これが大事。替えのハリを持って来て、1匹釣れたらまず換える。ハリ数も2本なのか、3本なのか、そのセッティングもその時に応じて交換する。1回外したら、もうダメなんだよね。「あぁ、これダメだったんだ」ってすぐチェンジ。コレだけやってれば、どこへ行っても釣果は上がると思います」。これは“タイラバ”に限らず、様々な釣りに通じる釣り人の心得。船上で手詰まりになった時、思い出せるようメモして置きたい。
タイラバの最盛期に突入、初めるなら今!
かくして、マダイの釣果は0〜3匹。この数字だけを見ると控えめな釣果に見えるが、“ゲストフィッシュ”が多彩なので、みなさんクーラーの中身は賑やか。アタリの数は釣り座を問わず満遍なく出ていたので、惜しくもマダイの釣果が上がらなかったお一人も、「あの時とあの時のバラシが無ければ…」と悔やまれる。「産卵が終わって、イワシとか追い始めるようになってるんでね、今からが本当のハイシーズン」と船長も太鼓判を捺す御前崎沖の“タイラバ・ゲーム”。産卵後の回復期を経て、マダイの味覚も全く文句ナシ。お手軽さと奥深さを併せ持つタイラバの面白さを、この好機に是非体験して頂きたい。
施設等情報
施設等関連情報
集合時間:午前4時30分頃(変動アリ予約時に確認を)
出船時間:午前5時頃
乗船料金:1万1,000円(氷付き)
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他