オーシャンサポートサービス 代々丸・和歌山県白浜・富田浦袋港
和歌山県 南紀・富田沖の深海&中深場釣り
ライトタックルでキンメ、ムツ狙い
関西の春は南紀から―。梅の産地として知られる和歌山県。中紀の梅林は白い梅の花が満開だ。阪和自動車道を終点の南紀田辺ICまで走り、そこから更に国道42号線を30分程南下すると、左手に24H営業の餌店の黄色い看板が目に飛び込む。餌店の100m先右手、回転灯の目印を右折、細い道の行き止まり手前の港が白浜の富田浦袋港だ。
『代々丸』では、3~5月限定で深海釣りに出船、ライトタックルでキンメやムツを狙う。22日は午前6時半に港に集合、中深場へオニカサゴ釣りに出る兄弟船の『丸浩丸』と2隻で富田沖へ出船した。
天候には恵まれたものの、朝の冷え込みは強く、早春の海を吹き渡る風は南紀と言えどもさすがに冷たかった。出港前、『代々丸』の濱本浩二船長が名前を呼んだ順に乗船して釣り座を選び、早々と釣り仕度を終えた大阪の山野さんら6人は、出船と同時に暖房がきいたキャビンの中へ逃げ込んでいた。
キャビン内には湯沸しポット、電子レンジがあり、カップ麺やコーヒーが入ったプラスチックのケースには、「ご自由にどうぞ!」と書かれている。昼の弁当を温められるのはありがたい。港を抜け出すと思いのほか風波があった。波しぶきが舞う。時折スピードを落とし、大きな波をかわしながら更に沖へと向かって走る。キンメのポイントまで30分程かけて到着。
いきなりクロムツ30cm級がダブルで!
最初のポイントは水深280m。オモリは400号統一、10本バリのキンメ仕掛けが標準。ギジバリに餌を刺す人もいる。投入は左舷のトモ(船尾)から順に行う。船長が「○○さんどうぞ!」とマイクで名前を呼び、呼ばれた人から順に仕掛けを投入していく。仕掛けを入れ終えたら、手を上げて船長に投入完了の合図を送る。投入の途中で仕掛けが絡むなど、トラブルが起きると誰かがスッ飛んできてアシストする。乗合船で初対面同士でも、チームワークのよさはさすが『代々丸』。
投入して暫くすると、いきなり右舷胴の間(中央)の多門さんにアタリ!「アタリがあった人は巻き上げて下さいよ」とすかさず船長がアナウンス。“中速”で巻き上げるとクロムツのダブルだ!美味しそうな30cmクラス。餌は船長特製のサバの切り身。食紅で赤く染めたイカの短冊や、サケの皮などを持参する人もいる。続いて左舷胴の間の下堂さんも少し小ぶりのクロムツを釣り上げた。「深海釣りは今日が初めて―。とりあえずレンタルタックルです。どんな釣りなのかやってみようと思って…」と言う。レンタルタックルはバッテリーも含めてフルセット3,000円(仕掛け代は別)、電話で予約可能だ。左舷トモで竿を出していた山本さんも深海釣りはこの日初挑戦。下堂さん同様レンタルタックルでの参戦だが、後に山本さんにビギナーズLUCKが訪れる…。
ビギナーズLUCK!目当てのキンメがヒット!
その後、徐々に深場のポイントへと移動、右舷ミヨシ(船首)の山野さんにクロムツの40cmクラスがヒット!丸々とした重量感タップリのクロムツの登場で、船上はヒートUP!だが、風がだんだん強くなり釣況は好転しないまま終盤戦へ。
そんな時、レンタルタックルで慎重に巻き上げていた山本さんに女神が微笑んだ。「釣れてないかもしれない…」と、自信なさ気だった山本さんの一番下のハリに、なんと!アノ“赤い魚”が!
「やりましたね~!」と濱本船長。初挑戦にしてキンメの30cmオーバーだ!続いて “あめちゃん”こと、南さんにも小振りのキンメがダブルでヒット!しかし、その後はますます風が強くなり、水深450mまでのポイントで全体的にはキンメ3匹、クロムツ6匹、ユメカサゴ、ギンムツなどの釣果でこの日は終了となった。
“ノマセ釣り”&中深場でオニカサゴ
翌日23日はアジの“ノマセ釣り”の後、中深場でオニカサゴを狙った。関東で言う“リレー釣り”だ。『代々丸』の“ノマセ釣り”は、大型のハタ類や青物、ヒラメなどが狙えるので人気がある。当日は大阪の立輪名さんら5人が乗船した。釣り場は前日と同じ富田沖だが、少し陸寄りのポイント。水深100m前後を攻める釣りからスタート。右舷ミヨシに船長が釣り座を取ってくれ、取材の合間に竿を出してみた。オモリは70号、捨て糸12号130cm、ハリス14号50cm、ヒラマサバリ12号を結んだ1本バリ仕掛け。餌は活きアジで、鼻から刺してハリ先を口の横に出す。最初のポイントでは、左舷ミヨシの真崎さんが幸先よくヒラメの60cmを釣り上げた。続いて右舷胴の間の川口さんもヒラメの52cmをゲット。同じ頃、左舷の立輪名さんがマハタの58cmを釣り上げた。“前アタリ”があって、その後ゴンゴンと重いアタリを合わせると、ガッチリとフッキングしたと言う。仲間から羨望の熱視線を浴びながら、川口さんと2人仲良くヒラメとマハタをそれぞれ手にしてツーショットで記念撮影。
そんな時、右舷トモの祐谷さんは餌のアジをズダズダにされる痛恨のスッポ抜けで、悔しがることしきり。仕掛けは船長オリジナルの1本バリ仕掛け。スッポ抜けのリスクはあるが、それを差し引いても1本バリの方が釣れる確率は高い、と船長は言う。その後は祐谷さんに先ほどと同じスッポ抜けのアタリがあったぐらいで盛り上がりなく、オニカサゴポイントへ移動。
“オニカサゴのヒレ酒”って?関西ではやらない?
タックルはそのまま、仕掛けをテンビン使用、3本バリ、オモリ120号にチェンジ(仕掛け図参照)して釣りを再開。餌はサバの切り身。“キレイな花にはトゲがある、美味い魚には毒バリがある”と言うわけで、オニカサゴの背ビレや頭部などにある毒バリに刺されると、激痛をともなって腫れ上がり、七転八倒の苦しみを味わうことになる(死んだ魚に刺されても同様の痛み)。しかし、そんな危険な魚だが、鍋でも刺し身でも最高!根魚なので煮付け、唐揚げもよし。スーパーの鮮魚コーナーにはほとんど並ぶことのない魚だけに、食べたくなったら自分で釣りに行くしかない高級魚なのだ。関東の沖釣りファンはオニカサゴの大きな胸ビレや尾ビレなどを切り取って干し、軽く焦げ目が付く程度に焼いて日本酒の熱燗を注いでオニカサゴのヒレ酒を作る。しかし、『代々丸』では誰も「“オニカサゴのヒレ酒”なんて聞いたことがない」と言う。もしかして…これまでアノ貴重なヒレが全て捨てられていたのだろうか…?だとすると勿体ない話だ。
そんな話をしている内に、真っ赤な緋縅の鎧を着たオニカサゴが釣れだした。川口さんは中型、小型を続けてゲット。そのほかにもパラパラだが釣り上げられた。そして…首にカメラをぶら下げ、ミヨシで竿を手持ちにしてアタリを待っていると…。キタ~ッ!オモリが底を時おりトーントーンと叩く状態にして、穂先の動きを注視していると、深々とおじぎをした穂先がフワ~ッと持ち上がりかけたその時、明らかに生命反応と思える強いアタリが出た。キタ~ッ!息を止めて強めのアワセ。底へ引き込む確かな手応えがあった。穂先の曲がりからみて、そこそこのサイズのようだ。100m以上ある海底から巻き上げきているのだが、最後まで元気いっぱい暴れまくる。あと20mというところで最後の抗いをみせ、やがて海中に姿を現した。強烈なオレンジ色の1kg近い良型オニカサゴだった。その後は昨日と同じパターンで海がシケだし、残念ながらこの日の釣りは終了。これからは日に日に暖かくなって来る。海も安定して来て釣りやすくなり、その分釣果も伸びるはず。春の和歌山へ、ぜひ出掛けてみて下さい。
※『代々丸』では乗船時にクーラーボックスは船に持ち込まない。釣った魚は船長が目印を付けてイケスへ。オニカサゴはオケに入れて活かしておく。そして、帰港後に船長が魚をシメて血抜きをし、きれいに洗ってからビニール袋に入れてくれる。オニカサゴは危険な毒バリをすべてハサミでカットして、ビニール袋に入れてくれるので安心だ。この時点でクーラーを船長に渡すと、魚を氷詰めにしてくれる。魚に触れることなく、最高の状態で魚を持ち帰ることができるサービスはありがたい。
(上野 英輝)
今回利用した釣り船 |
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和歌山県白浜・富田浦袋港『代々丸』 TEL:090-3168-1739 詳細情報(釣りビジョン) 代々丸ホームページ |
出船データ |
(料金)深海釣り(キンメダイ・クロムツ)1万4,000円、半日釣行(約5時間1万2,000円)。女性2,000円割引。(カードでの支払い可能) (交通)阪和自動車道~南紀田辺IC~R42で串本方面へ約30分。一目坂トンネルを出て釣具店「釣太郎 白浜店」を過ぎ、約100m(回転灯)で右折、袋港へ。 |