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【九州の鮎】豊前の国は山国川、祓川でダム湖産鮎を狙う<古稀の釣人が奮闘>

2024年06月26日公開

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鮎の解禁に沸き立ってしまって、いそいそ川に走った古稀ジイ。途中、コンビニに立ち寄る度に忘れ物がないか確かめ、ようやく万端で瀬に降り立った。旧豊前国(福岡県東部と大分県北部)の川には美しい鮎が棲む。今回はダムに遮られながらも健気に命を繋いできた、いわゆる〝湖産鮎〟を解禁の初日に友釣りで狙ってみた。

まずは6月1日に解禁した祓川へ

祓川は、我が家から一番近い鮎の川で九州では無名河川と言ってよい。8mの竿でも向こう岸に届いてしまう川幅だが、他に争うような釣り人もおらず、ゆったりと釣りを楽しむことができる。魚はただ小さいというだけで、縄張りを侵した鮎には相応の反撃を見舞って勇ましい闘いぶりである。

今年は解禁をここで迎えることにした。それはなんとダム湖産の鮎がいるということを聞いたからであった。うれしいじゃないか、人の手によって放された鮎が自力で次の命を誕生させていたのだ。さて、解禁日当日。釣り場で知り合いの漁協氏と待ち合わせ。彼は、遊漁券とオトリを準備してニコニコ笑顔で待っていてくれた。川も人もなぜか古稀の釣人をほっとさせてくれる。

解禁初期、魚は流れが集まる瀬に水と一緒に溜まっている。しっかり辛抱して泳がせて、群れ鮎あるいは群れから離れ始めた鮎を狙うのだ。古稀ジイの仕掛け、水中糸は0.2号のフロロ、0.3号のアーマード鮎中ハリス40cmのワンピース仕掛け(ハナカンを動かす時に注意が必要だが締め付けず緩めずの編み込み具合でハリスは十分に持つ)。ハリは6号3本バリ、と見守る漁協氏に告げると、それでよかでしょう、ということでいよいよゴング。ひと流し、ふた流し、三、四…コンと来た。掛かったのだ。小ぶりなオトリのその半分ほど、豆のような鮎君がキラキラしながら上がってきた。背掛かりだ。

今季の初鮎は、豆だけれど記念撮影をしてしっかり銘記しておくことにする。折角の野鮎だがオトリには使えないので養殖の続投。すると二尾目はすぐに掛かった。今度はなんとかオトリになりそうだ。ポツポツ釣れ続いたが相変わらずの掛けバラシ、タモからの逸走、曳舟への移し替えでポロリ…ちょっと恥ずかしい行いで戦力を失う。

午後の闘いで漁協氏に差をつけられる

水中糸を複合0.05号に換え、同じ瀬でもう一度同じ夢を見ることにする。糸を替えると再び追うようになることがあるのだが、やっぱり追う野鮎はいない。保有戦力の野鮎はどれも小さいものだから体力がない。漁協氏は古稀ジイに対して、親切にも一番大きな野鮎を恵んでくれたのだが、やっと一匹掛けただけで終わってしまった。もうその頃には私ひとりが瀬に残されていた。

ちなみに漁協氏は30匹近く掛けていた。鮎はそれくらいいるのだ。7月末にはきっと大きく成長した湖産鮎に相まみえることになるはず、と思い決めて竿をたたむ。

 

お次は6月10日解禁の山国川。湖産鮎を狙う

青の洞門から本流を辿ってあちこち川見をするけれど鮎がいない。石は磨かれているようだが鮎が見えない。洞門鮎はどこだ?それでもあの渕この瀬、去年の夢をたどって竿を出すけれど目印が波間に揺れるばかり。仕方なくダム上の支流を目指すことにした。去年、友釣りを始めたばかりの還暦間際の若者が初めて鮎を掛けた川である(※下段2023年の釣行記参照)。実はここも湖産鮎に富み、楽しい釣りができるのだが湖産の特徴で小ぶりである。山国の鮎釣り師はビッグな洞門鮎と格闘したくて本流に詰めるので、それでジイちゃん向きの瀬が残されるのである。通称〝年金の瀬〟。

川底が光った瀬にジッと目を凝らす。いるいる、群れでじゃれ合いながら、石をグルグル取り囲みコケをサッサッとかじり取っている、中に群れから飛び出して追い出したのもいる。いいぞいいぞ、いそいそハナカンをセットしてオトリを瀬へ押し出す。本流では複合を結んだがここは祓川と同じ仕掛けだ。

水中糸を張らず緩めず泳がせる、時々ツンツンと糸を張って釣り人の意図を伝える。オトリ君は群れの中に立ち止まったりちょっと焦らすように尻尾を振ったりしながら野鮎をそそのかし、かきたてにかかる。と思ったら早速掛かった。水の中でキラリとヒラを打った姿は小さいけれど逸走遁走、よっしゃーと引き抜く。

【大分県中津市】炎天下の山国川で“青の洞門アユ”を恩讐を超えて釣る | 釣りビジョン マガジン |

なんとなんと〝入れ掛かり〟に突入する!

一番乗りの鮎を次のオトリへと繋いでいく。まるで螺旋のバネが弾けるように循環が展開して昼のひとときほぼ入れ掛かり。祓川のこともあって、魚の気まぐれにしごき抜かれた後の忍耐とか寛容とか、ちょっと修行めいた釣りを重ねて来たけれど、この日は心が開いてのびのび動き始める。

オトリが蹴られたり弾かれたりしたので、ハリを7号に換えてみた。循環も上手くいって、そんな時には重いハリを結んでも根掛かりはない。ちょっと群れを崩してみようと蝶バリにしたり、もっと泳がせる楽しさを味わおうと背カンを使ったりと試してみる、鮎はどれにも掛かった。

魚に対する観念を具体的な釣り方から抽象して引き出しにしまう。長年、釣りに勤しんできたので引き出しはいくつもある。ただそれがどこにあるか思い出せないだけである。

三十匹はいったか?大きいのや小さいの、中には背ビレがアブラビレに届くのもいて、これはきっと湖産だと思われた。15cm以下は採捕禁止なので一匹一匹選んで瀬に返す。手で掴んで頭と尻尾が出るとそれが15cmだ。魚が元気よく瀬に消えると何か自然の一端に自身も繋がっているように感じられて、ああ長生き出来そうな気になる。

さて、昼をはるかに過ぎた、早起きに朝駆けで腰が落ち顎が出かかる、そうだ温泉へ行こう。

ダム湖の上流にはいい温泉がいくつかあって、老いの身魂をほどいてゆったりくつろがせてくれる、鮎タイツでできるアセモ快癒の特効薬でもあるしね。ということで余生の一日を、佳き釣りの日として過ごすことができたのであった。

施設等情報

旧豊前国(福岡県東部、大分県北部)には鮎釣りのできる四川がある。今川・祓川(福岡県京二川漁協)、岩岳川(福岡県岩岳川漁協)、山国川(大分県山国川漁協)である。
今回釣行した祓川は京二川漁協の管理。遊漁券は日券1,000円、年券8,000円(福岡県共通)。詳しくは「京二川漁業協同組合ブログ」で。放流場所情報、遊漁券取り扱い店舗も掲載されている。オトリ鮎は各自持ち込むか鮎ルアーで確保する釣り人もいる。また、漁協の方が準備してくれることもあるので漁協にあらかじめ連絡して確認しよう。
○京二川漁業協同組合
福岡県行橋市大字流末1176-1
TEL/FAX兼用:0930-25-6569

山国川は山国川漁協の管理。遊漁券は日券2,000円、年券5,000円。漁協及びオトリ取扱店で販売している。なお、少し面倒だが、大分県HPから「山国川漁業協同組合」で検索して遊漁規則を開くと遊漁券販売所、オトリ取扱店の情報を確認できる。
○山国川漁業協同組合 
大分県中津市本耶馬渓町樋田91-5
TEL0979-52-2756

施設等関連情報

●祓川伊良原ダムにはレストラン、駐車場もあり、釣り場環境としては最適である。穏やかで優しい清浄の川なので川遊びのファミリーも多い。
●『恩讐の彼方に』(菊池寛作)の舞台となった「青の洞門」は、先の豪雨被害からも復旧し観光客で賑わっている。
●おんせん県大分の山国川沿いや景勝地「耶馬渓」にはいくつか温泉施設があり、釣りの汗を流すのも良い。中津から無料の高速道路「中津日田道路」も一部開通しアクセスが便利になった。完成すれば日田中津間が30分で結ばれ、往路に日田三隈川で響鮎を釣り復路に山国川で洞門鮎を釣ってといった離れ業が出来て、鮎師の楽しい夏がきっと約束されるのである。
     
※記事の掲載内容は公開日時点のものになります。時間経過に伴い、変更が生じる可能性があることをご了承ください。

この記事を書いたライター

古希の釣人
春と秋は渓のフライフィッシング、夏は鮎の友釣り、ほかは海でキスを狙った投げ釣りなど、季節ごとの釣りを楽しんでいる。釣り場は九州が中心で、中国地方、四国へも遠征。それぞれの釣場から元気に釣り情報を発信。
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