2017年05月01日公開
関東地方では、サクラの季節が終わり、木々が芽吹き鮮やかな緑色に染まる新緑の頃、千葉県・外房では“春マサ”と呼ばれるヒラマサの群れが回遊し始める。間もなくシーズン本番だ。大原港『山正丸』からルアー釣りのヒラマサ船に乗った。
“外房・ヒラマサ”のパイオニア『山正丸』
オフショア・ルアーアングラーで『山正丸』の名前を知らない人はまずいないだろう。日本有数のヒラマサの釣り場である“外房”を開拓した第一人者といえば、『山正丸』の山口 徹船長である。現在のヒラマサの世界記録である49.5kgを釣り上げた船としても名高く、プロのアングラー達にも絶大な信頼を得ているカリスマ船長だ。こう紹介すると敷居の高いイメージを持たれてしまうかも知れないが、実は気さくで優しい船長である。
“春マサ”を求めていざ出陣!
集合時間は午前5時。釣り座は先着順で船に竿やクーラー等を置くスタイルだ。少し早めに到着したが、当日は春の嵐も過ぎ去り絶好のナギ予報のためか、既に多くの釣り人が集結。平日にも関わらず総勢18人での出船となった。
船中ファーストヒットは“大判ヒラメ”
全員が揃ったところで河岸払い。航程30分程で大原沖水深50mラインに到着した。ここで早速ミヨシ(船首)のアングラーにヒット!“青物”とは違うトルクのある引きで“大判ヒラメ”が上がった。大原沖は冬から春にかけて灘寄りにイワシが接岸するのだが、今年は例年より少ない様でこのようにディープエリアでヒラメが掛かることも多いそうだ。しかし、ここではヒラマサの姿は見えず、船長は移動を開始。点在する水深30mラインをエンジンを切って“ドテラ”で流していく。起伏の激しい根の上ではあるのだが、船長は丁寧に逐一水深をアナウンスしてくれるので非常にやりやすい。ここで待望のヒラマサがヒット!
上がってきたのは、まさに“春マサ”と呼ばれる3kgクラス。それでもヒラマサ、姿形はブリに似ているが、その引きの強さは数段上の力強さである。これを皮切りに連続ヒット、あちらこちらでヒットが続いた。この時期のヒラマサは中層でのヒットが多く、中には海面近くまでチェイスしてくる元気な個体もいるほどだ。ここで船長に“春マサ”の傾向を聞いた。「新しく入ってきた小型の群れは、いわば仔犬や子猫のようなもの。好奇心旺盛でジグにじゃれついて来るんですよ。だから触りが弱いのでバラしたり、スレ掛かりも多いでしょうね」。なるほど、ジグのカラーも当日はピンク等のアピール系にアタリが集中しているように見てとれた。これが“春マサ”攻略のヒントになるかも知れない。
『山正丸』のムードメーカー、若女将のハナちゃん
船中あちこちでヒラマサが掛かると、タモ入れで奮闘するのは上乗り役で若女将のハナちゃん。『山正丸』のムードメーカーで、エンジンを切った静寂の船上…とはならず船長との夫婦漫才の様な掛け合いや、釣り人との会話で盛り上がり、笑い声の絶えない和気あいあいの雰囲気だ。ここなら女性でも入門しやすいだろう。当日も若い女性アングラーが乗船していた。このハナちゃん、釣りの腕も超一流。男性顔負けのキャストの飛距離と正確性には驚かされる。遠征のマグロやGTまでこなす筋金入りのアングラー。
キャッチ&リリースという考え方
感心させられたのは、ヒラマサをゲームフィッシングと認識した乗船者のキャッチ&リリース率の高さである。『山正丸』ではキャッチ&リリースを推奨しているが、その考え方が釣り人に浸透している結果だろう。勿論、釣った魚を美味しく頂くのは釣り人の特権であり醍醐味でもある。しかし、限りある資源を大切にし、後世に残していこうという考え方は素晴らしいと思う。
結果、午前船の釣果は残念ながらオデコも出てしまったが、船中ヒットは20発以上、2~3kgをトップ4匹。十分な成績と言っていいだろう。
午後は一発“大マサ”狙い
午後船は、「シャローエリアでキャスティング中心で狙ってみましょう」と船長。午前から通しの太公望5人を乗せ“大マサ”狙いでいざ出船。ポイントは大原沖水深10m。30~40kgの実績のあるポイントであるという瀬の上を流していく。「ここはドロップオフのように急激に落ち込んでいます。そのへりにウルメイワシなどのベイトが着いていれば…」。しかし、残念ながら反応無し。外房の一級ポイント・真潮根も探索したが前々日からのシケで潮が薄濁り状態。その影響もあってかこの日はキャスティングでは型を見ることなく、ジギングで3kgクラスのヒラマサが1匹上がったのみで沖上がりの時間を迎えた。
“春マサ”シーズン本番はこれから!
「この日の水温は13℃。ヒラマサには低いと思われるかも知れませんが、そんな事はなく、9℃でトップに出たこともあります。つまり、適水温は魚が決めるのであって、人間が決める事ではないんですよ。水温、潮流、ベイト等“大マサ”を釣るには様々な条件がトータルでかみ合う事が重要ですね」と山口船長。
ウブな小型の新群れが入ってくる“春マサ”シーズンはビギナーでも比較的釣りやすく入門に最適な季節でもあるが、周年10kgを超すような“大マサ”も期待できる魅惑のフィールドでもある。次のワールドレコードを塗り替えるのはアナタかも知れない。
今回利用した釣り船
出船データ
午前船:5時集合、5:30~11:30
午後船:12時集合、12:30~17:00
※季節により変動する為TELにて要確認
基本料金:午前船…1万1,000円(氷付き)、午後船…1万円(氷付き)
駐車場:無料