2022年01月17日公開
断続的な寒波の来襲とそれに伴う積雪が釣り人をフィールドから遠ざける。2022年、ようやく初釣行となったのは1月10日、西津軽の“寒チヌ”を狙って出掛けた。
久しぶりの好天での釣り、景色の美しさに気分は最高潮!
昨年末から度々襲来する寒波に、北国・青森といえども増加の一途をたどる積雪にうんざり。青森県・津軽地方の民族性を表す「じょっばり」(頑固、ごうじょっぱりの意)な釣り師も釣り場から遠のく程だ。例年なら年末年始の休日を利用して、“釣り収め”や“初釣り”で賑わうフィールドから釣果情報が飛び込んで来るが、2022年のそれは極めて静かなものだった。
氷点下の気温も緩み好天に恵まれた1月10日、やっとの初釣行機会に胸が踊る。目指すポイントは西岸域「深浦町岩崎地区」周辺。日本海を北上する対馬暖流の恩恵を受け、青森県内においてもこの時期、比較的気温も穏やかで積雪も驚く程少ない。冬特有の北西風も凌げるというのも選定の理由だ。
前日までの西風の影響でウネリや多少の波高は残っていたが、釣行には全く支障ない。当初予定していたポイントに到着すると既に先行組が何人か居たため、この地区中心部の「岩崎漁港」に移動。眼前にはブナの原生林で、ユネスコ世界自然遺産に認定されている「白神山地」が陽光を浴びて白く輝く。海水温低下による多少の不安、それ以上にロケーションの良さに興奮を抑えつつ準備を整え、期待を込めての第1投。「よろしくお願いしま~す!」
清々しい気持ちとは裏腹に、厳しい時間が続く
付け餌「オキアミ」でスタートとした第1投から3投目までは多少かじられた跡があるが、何とかオキアミが通った。“餌盗り”が居るものの「オキアミで釣りが組み立てられそうだ」と思ったのも束の間、以後毎投毎投ハリが無い。またもやフグの仕業だ。加工オキアミは勿論「くわせ丸エビイエロー」も持たない。
つづいて「くわせ練りエサ食い渋りイエロー」「くわせ練りエサ高集魚レッド」と練り餌を投入したところで、何とかハリだけは着くようになった。比較的持ちの良い練り餌「くわせ練りエサ高集魚レッド」をチョイスして、コマセの投入点から少し沖目に仕掛けを投入し、仕掛けが馴染んだところでコマセの中に引き寄せてみた。穂先、ラインを通じてコツコツとしたアタリ。穂先を少し絞り込んだところで合わせてみると、何やら掛かっているものの“本命”ではないらしい。やはりフグだ。
練り餌ではアピール力が強すぎるのか、直ぐにフグに見つかってしまう。しかし、オキアミでは持たないため、仕掛けを半遊動2Bから0仕掛けに変更。馴染みのスピードを抑え、フグの興味を惹かないように仕掛けを送り込むと中層で取られることはないが、底付近でアタるのはやはりフグ。
コマセを撒き続けて数時間、他魚は一切掛からず、フグの動きは活発だ。付近にクロダイ接近の気配がない。ただ、こうした状況下では一瞬の時合で“本命”が口を使うことが多く、手を休ませることが出来ない。そうこうしている間にも海況も変わり、潮の上滑りが目立ち、ウキも00に変更。仕掛けの調整に付け餌のローテーションを組み合わせて1つひとつ試してみるが、状況は変わらず苦戦が続いた。やはり海水温低下があるのだろうか。そうだとしたら少しでも海水温が上がる午後にチャンス到来か。
遂に待望のアタリ!ヒット!んっ?何か感触が違う?
気がつけば、時計の針は正午を回っていたが相変わらずフグの攻撃が続く。潮の上滑りは、さらに速くなり、軽い仕掛けではウキをマイナス浮力(沈め)にしないとコマセと合わせるのも難しい。
遠近様々なポイントを試すが、コマセと仕掛けを合わせるとやっぱりフグの餌食。13時を過ぎた頃、練り餌に対するフグの反応が無くなり、付きっぱなしで返って来た。先程までとは明らかに違う。「時合到来か?」。過去の経験からこうした時間は長くは持たない。直ぐにオキアミや丸エビを試すが残らず。結果、練り餌で勝負することに。底にそっと練り餌を置き、反応を見る。穂先とラインに神経を集中し、喰わせの間(ま)を取る。反応無し。50cm程ラインを引き、アピール後また間を取る。反応無し。さらに50cmほどラインを持ち上げて大きくアピールして間を取ると、フグとは違うラインの張りの後に穂先も絞り込まれた。「来たっ!」。間髪入れず合わせるとロッドが弧を描き絞り込まれた。しかし、“本命”独特の叩くような引きもなく、直ぐにロッドの反発力に負け、浮かび上がろうとしている。海中を漂い、海面に姿を表した青白い魚体の正体はホッケ。冬から春にかけて産卵のため接岸する北東北の釣り物としては“冬の使者”ともいえる“ゲストフィッシュ”。食べれば美味だが、今は欲しくない。その後、35cm前後を5匹追加したところでホッケが止まった。
14時を迎える頃、ホッケより強いアタリ。「今度こそ“本命”か?」。多少叩くような走りは見せるものの、やはり違う。海面で確認できたのはアイナメ。“お造り”にすると大好きな魚だが、これも今は欲しくない。
コマセも無くなり、泣く泣く納竿
夕暮れが迫った15時30分。コマセも無くなり、泣く泣く納竿となった。予想どおり午後になってから“魚っ気”が上がり、フカセならではの駆け引きでフックアップ出来たものの“本命”ではなく、悔いの残る2022年の初釣行となった。
天気予報では、また明日から大荒れだという。リベンジの心境とは裏腹に、帰路に見た日本海は穏やかな夕日に包まれていた。