2023年09月30日公開
ほんの数年前まで、サワラのボートキャスティングと言えば新潟まで足を延ばすか、東京湾では2、3人で1隻チャーターして船長にお願いしなければ体験できない“敷居の高い釣り”だった。それがJR京葉線・蘇我駅からほど近い近郊からの出船で、しかも乗合船でお手頃に楽しめると聞き、千葉県・寒川港『小峯丸』へと出掛けた。
集合は船着場に午前5時30分
『小峯丸』の集合場所は、『ハーバーシティ蘇我』に隣接する寒川港。港へ降りるスロープや駐車場所など、1回行けば迷いようもない好立地なのだが、初めて行く際にはちょっとイメージしにくいかも知れない。船宿HPの「アクセス」に詳しい説明があるので初めての際は要チェック。カーナビに「千葉県千葉市中央区寒川町2-203-3」と入力して現場に到着すれば「あぁ、そういうことか」と分かるので、行けば分かると信じて迷わず行くことをお薦めしたい。
集合時間が近づくと、船宿Tシャツを着た女将や船宿スタッフの車が到着する。軽ワゴンの受付で乗船名簿に記入して、乗船者全員が揃ったところで予約順に席を指定。船尾側の釣り座のアングラーから順次乗船となる。
乗船後に船長から釣り方の説明や船上でのマナーについて説明があるので、聞き漏らさず、分からないことがあったら質問を。手持ちのルアーカラーのチョイスやドラグの初期設定は船長に頼めばやってくれるのでビギナーも安心だ。かくして滞りなく出船準備は整い、女将の「行ってらっしゃい」に送られて午前6時20分「第十一小峯丸」は出船した。
「ブレードジグ」をご存じか?
昨今、サワラのキャスティングゲームを身近なものにした立役者に「ブレードジグ」の登場がある。比重の高いタングステンで作られた30〜50gの小さなジグのお尻に回転する金属片(スピナー、ブレードとも)とシングルフックを付けたこのルアー。投げて、着底させ、全速力で巻くだけでサワラを惹き付けるビギナーにも扱い易い新アイテムだ。
実は以前より釣れない時の最後の切り札として秘かに自作し、タックルボックスに忍ばせるようなニッチな存在だったのだが、2021年辺りから商品化され、「サワラ用」と冠されてブームに火が点いた。早くからこの釣りを導入し、実践を重ねている『小峯丸』。同船では従来の(玄人好みな)ヘビーシンキングミノーやシンキングペンシル、鉄板バイブの釣りも勿論できるのだが、今回は「投げて巻く」だけという、シンプルなだけに奥の深い「ブレードジグ」の釣りを中心にレポートしたい。
オーバーヘッドで投げてイイんですかッ!?
小雨はパラつくものの、前日からの強風も収まって穏やかな東京湾を走ること1時間程。「東京湾アクアライン」の『海ほたる』を臨む木更津沖に到着。船長の合図で釣り開始となるのだが、驚かされたのは皆さんオーバーヘッドでキャストしていること。勿論、必ず後方確認をして安全を確保してから投げる、という約束はあるのだが、乗合船で片舷全員のアングラーがフルキャストできるというのは何とも気持ちイイ。
この楽しさを継続するために、やむを得ず実釣中のアングラーの後方を通る局面では「後ろに居ます」と声を掛けたり、フックをバーブレスにしたり、帽子や偏光グラスやグローブの着用で万が一の事故を軽傷で済ませるための自己努力を心掛けたい。
『小峯丸』ではドテラ流し(横流し)の追い風側(払い出し舷)の片舷に並んでキャスティングゲームを楽しむ。希望者は向かい風となる反対舷の胴の間(中央部)でアンダーハンドキャストの釣りも出来るので、思い立ったら船長に声を掛けてみよう。
スタート間もなくヒット!
開始間もなく竿を曲げた魚は丸々としたイナダ。返す刀で着底と同時にハリ掛かりしたのは何とイシモチ(シログチ)。ブレードジグの海中における“ファン層”の広さに驚かされていると、ミヨシ(船首)で釣っていた常連の河口さんに待望のヒット。取り込まれたのは1mオーバー“指5本サイズ”のタチウオ。
対象魚の豊富さを物語る釣果を目の当たりにしたところで、トモ(船尾)の常連・入さんの竿が絞り込まれ、取り込まれたのは2kg超級のサワラ。船中1匹目の“本命”確保に船中は活気づいた。
この後も派手さは無いものの60cm未満の“サゴシ(サワラの若魚)”交じりでポツリポツリと“本命”が取り込まれた。中でもミヨシから2番目で釣っていた常連・安藤さんはタチウオと思しき魚にリーダーを切られた後、パターンを掴んだかのような連続ヒット。みるみる釣果を重ねて竿頭へと躍進した。
美味しい“ゲストフィッシュ”図鑑
ブレードジグの釣りには、サワラ以外に様々な魚がヒットする。この日上がった美味なる“ゲストフィッシュ”たちをご紹介しよう。
結構な数が上がっていたタチウオは押し並べて型が良く“指5本”クラス前後。シーバスやトラフグといったルアーを好む魚種ばかりでなく、余裕で尺超えのアジやイシモチが釣れるのは驚きと共に嬉しいゲストだ。
厳密に言えば、サワラ以外の魚が釣れる時はリトリーブスピード(巻きの速さ)が対象魚に合っていないということになるのだが、理屈抜きで釣れれば楽しいのもまた事実。釣れた魚は船長が血抜きと神経締めまでしてくれる。クーラーできっちり冷やして持ち帰れば、美味しく食べることが出来るのも大きな魅力だ。
船長に訊くサワラ・キャスティングゲームのコツ
今期の東京湾のサワラについて、小峯翔太船長に訊いた。
船長「例年に比べて早いですね、釣れ始めたのが。ここに来てサゴシも多かったりするんで、去年よりは数が出そうな雰囲気です。期待できると思います」
──話題のブレードジグ、コツや注意点は?
船長「やっぱり“着底”は基本ですね。着底させて、それから早巻き。早巻きはもう、疲れるくらい全速力で巻いて貰う。回数は投げられなくても、一投一投は真剣に全速で頑張って貰いたい」
一日の釣りを見ていて印象的だったのは、アタリがあって竿先を持って行かれても、竿を煽る合わせはバレに繋がる、ということ。バイトがあったらリトリーブの手を緩めず巻き続ける“巻き合わせ”を船長は薦めている。そのためドラグの設定がイメージより強いのだが、この辺りのことは乗船時に船長に尋ねて直接説明を受けて頂きたい。
──船長が好きなサワラの調理法は?
船長「自分が好きなのは、炙り刺しか、鰹のタタキみたいに皮目を焼いてネギたっぷりとか。ポン酢でね」
竿頭は88cm・3.45kgを頭に3匹のサワラ!
かくして、この日の竿頭は88cm・3.45kgを頭に3匹のサワラを釣った安藤さん。釣果情報に載る数字としては「サワラ0〜3匹」と控えめに見えるが、実際は45Lクーラーが満タンになり、惜しくもサワラを獲り逃したアングラーも何かしらの“ゲストフィッシュ”や釣果情報に計上されていないサゴシ級がお土産となり、笑顔での沖上がりとなった。
釣って楽しく、食べて美味しい、サワラのキャスティングゲーム。今後も年内一杯楽しめそうとのことで、今始めてキャストやリトリーブのコツを掴めば、湾奥で味覚の増すハイシーズンまでには上達できるかも!?
初めての方にはレンタルタックルもあるので、この好機に是非チャレンジ頂きたい。
今回利用した釣り船
出船データ
乗船料金:9,000円(氷付き)※変動の可能性アリ、予約時に要確認
集合時間:午前5:30までに船着場
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他