2023年10月24日公開
1年中カワハギだけを狙い、カワハギに沼り続ける男、荒井良乃介。難しいとされる春や夏もカワハギだけを狙い、釣りあげるその腕前は超一級品。若さとテクニックを見込まれ、いまや各メディアに引っ張りだこの人気ぶりだ。何なら荒井のファンという高校生がメディアに露出するほど、カワハギ業界ではホットな男なのだ。今回は、そんな荒井のカワハギ釣りの組み立て方に迫っていく。
”活性”の把握
高校生の頃には乗合船で竿頭を取れるようになったという荒井。そのきっかけは、参戦したトーナメントでの敗退だったという。悔しさからカワハギ船に通いつめ、その中で自分なりのロジックが固まり、それまでムラが出ていた釣果に安定感がでたそうだ。荒井はカワハギ船に乗って、まずどんなことを考えているのだろうか。
荒井「まずは、余計な装飾をつけずシンプルな仕掛けで、魚の活性と喰い方、喰うスピードを見極めます」
魚にアピールするべく、つい最初から集寄を付けたくなるところだが、荒井はシンプルな仕掛けでいくとのこと。毎回、同じような仕掛けで始めることで、日々の変化に気づきやすく比較しやすいということか。
仕掛けは3本バリ。ハリはハゲバリ系を多用するというが、当日は上と下のハリはハゲバリ系、真ん中のハリは吸わせ系と、3本バリの中でもハリを変えていた。また、オモリも「色や形にはこだわらずいろいろ使います」と言いつつ、カジ付オモリを使用するなど、随所に荒井独自の工夫が見えた。
そして、最初は広く見極めていくために、宙の釣り、斜めの釣り、底の釣りにオールラウンドに対応できる硬めの竿(極鋭カワハギ レッドチューン AGS ボトム)を使うことが多いという。ちなみに硬めの竿の他、軟らかめの竿を2本、計3本の竿を持って来ていた。
”集寄”の考え方
”集寄”、その名のごとく魚を集めて寄せるモノだが、荒井の話を聞いているとちょっと捉え方が違うようだ。どんな時に使うのか。
荒井「おもに潮の動きが緩いとき。仕掛けが潮に押されて、いい曲がりが作れる。集寄がうまいこと斜めに動いてくれると、魚はエサを喰いやすく、こちらも掛けやすい。(集寄を使うことで)理想的な角度の仕掛けが作れる」
単に魚を集めて寄せるのではなく、潮の流れと仕掛けの動きをイメージして、使うべくして使っているということだ。潮の速い時に集寄を使うと、余計に潮受けしてしまい仕掛けが悪い意味で張っちゃう、と考えているようだ。
荒井にとって集寄は、”仕掛けの角度調整用”としての意味合いがあり、潮が緩い時限定ではあるが「ハマれば何連チャンでもできる釣り」なのだ。
”パターン”の見極め方
それにしても荒井の経験値、ロジックの完成度、そして引き出しの多さには頭が下がる。例えば、掛けられないほどの微かなアタリが1回あっただけで、
荒井「どうしようもないくらい小さいアタリ。でも今のでなんとなく掴めましたね。しちゃいけないことがわかった」
この日は、他の魚がアタって、その後にカワハギが喰ってくる活性だといい、最初のアタリで動かしたりしないほうがよいと即断。
荒井「他の魚のアタリをいかにして避けて、カワハギのアタリに繋げていくか、ですね」
パターン構築の考え方としては、「有効ではないことをやらないようにして、削いでいった先でその日の軸を見つけ、そこからまた付け足していく感じ」なのだそうだ。そんな話をしている中、見事にカワハギを掛ける荒井。しかしそこには荒井にしかわからない長いやり取りがあったよう。
荒井「やっぱ活性が低いですね。最初に触って触って30秒くらい我慢して、それでも喰い込まなくて。もっともっと待ってあげたらやっと”噛みアタリ”が出た」
荒井の”理想の釣り”
荒井「あえて軟らかめの竿で、弾かずに”しっかり1枚ずつとっていく釣り”が理想」
1枚も逃さず自ら掛けていくという、ハイレベルな理想だ。そんな荒井だからこそ、という場面があった。カワハギを釣った直後のことだ。
荒井「やっと掛かりましたね。ず~っと触ってたんだけど、他の魚と半々くらいでアタっていて。(釣れて)よかったけど、でも納得いかないな…」
他の魚とカワハギのアタリを感じ取って、しっかりとカワハギを掛けたにも関わらず、納得がいかない様子。
荒井「アタリは取れてて、確かにちゃんと掛けるところまでできたんですけど、どこで喰わせようか考えていた時に、アワせられるアタリがきた。魚の動きを全然制御できてないという意味では、あまり気持ちのよい1枚ではなかった」
正直、エサ取り名人の異名を持ち、一般的にわかりづらいと言われている、カワハギのアタリを選んで掛けることができれば充分だと思うが。
荒井「最初から最後まで自分の思い通りに掛けられないと、海中のイメージと自分の釣りが一致したと言い切れない。釣れたから良しとしますけど、今の魚は30点か40点。まぁここから修正していきたい」
荒井のパフォーマンスと考え方はどこまでも高いところにあるのだ。実はこの日、竿頭として渋いながらも10枚釣り上げたのだが、また別のカワハギを釣った時のこと。
荒井「上と下のハリは完全にアタリは取れていた。ただ、掛けられるようなアタリじゃなくて。真ん中のハリを揺らして揺らして止めて、なんとか手に僅かにチッと伝わるか伝わらないかくらいのアタリで無理やりアワせた」
超ハイレベルなやり取りが詰め込まれ過ぎなので整理すると、魚がどのハリにアタっているかわかっていて、その上でどのハリに喰わせるか計算して仕掛けを動かし、その通りにカワハギが喰ってきて、その微細なアタリを掛けたということだ。ただただ驚くばかりだが、残念ながら最後の”無理やり”というところで、荒井的には点数減。これでも理想的な魚、釣れ方ではないらしい。
理想の1枚を求めて、荒井良乃介は今日も海の中へと思考を巡らせていく。
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