2024年01月15日公開
冬場に釣れる魚はどれも美味しい。そんな好機に、時間で区切って2種類以上の対象魚を狙うリレー船はチャンスも楽しみも倍増。今季もムツ&アマダイ五目やムツ&ヤリ・スルメイカなど魅力的な組み合わせの乗り合いで釣り人を楽しませていると聴き付け、千葉県・南房、江見太夫崎港『渡辺丸』を訪ねた。
『鴨川オーシャンパーク』が道標!
『渡辺丸』が発着する江見太夫崎港は、館山自動車道・君津ICでも首都圏中央連絡自動車道・木更津東ICのどちらからも車で1時間ほど。カーナビには「道の駅 鴨川オーシャンパーク(千葉県鴨川市江見太夫崎22)」を入力すると分かり易い。外房黒潮ライン(国道128号)を鴨川方面から来ると、道の駅の前を通り過ぎて90m程のところに左へ入る港への降り口がある。
初めての際は船宿HPに詳しい道案内があるので、事前に左折するポイントを確認しておくことをお奨めする。取材日の集合時間は午前2時30分。乗船場所の目の前まで車が乗り入れられるので荷物の積み降ろしは楽ちん。船着場から徒歩1分程の『オーシャンパーク』裏手の専用駐車スペースへ車を移動する。釣り座は予約順に割り振られ、船長の声掛けがあってからの乗船となる。集合の2時半にはほとんどの釣人が乗船済みの手際の良さ。滞り無く出船準備は整い「第十 渡辺丸」は夜明け前の海へと出船した。
一投目から魚信が!
穏やかな海を走ること30分程で鴨川沖に到着。水深90mの底付近に魚探反応があることがアナウンスされ、船長の合図で投入開始。程なくして竿を曲げたのは右舷トモ(船尾)二番目の菊地さん。取り込まれたのは“スミヤキ”ことクロシビカマス。小骨が多く、その鋭い歯で道糸を切ることがあるので深場の釣りでは迷惑な存在とされがちだが、煮付けやまーす煮は絶品。スプーンで身を掻いて“なめろう”にするなど、ちょっとした工夫で非常に美味しい。
その反対舷では、貸し竿で釣り方を上乗りさんに習いながら釣っていた岩田さんにヒット。取材日には3人もの上乗りさんが乗船していて、釣り方のレクチャーやオマツリ解きはもちろん、近日の釣況を汲んでのアドバイスなど、徹底的にアシストしていた。例えば魚探反応の幅の低い(泳層の狭い)取材日は、船で配られたフラッシャー仕掛けを半分にした4本バリ仕掛けが功を奏した。
上乗りさんの指導でハリ数を減らした結果、初心者にも捌き易く、取り込みも容易に。結果、ビギナーであることを申請した釣り人ほど釣果に恵まれる、面白い展開となった。バリバリ釣れるような派手さは無いものの、辛抱強く誘いを入れればアタリがあり、手の合う釣り師からポツリポツリと釣果を伸ばしていった。
6時30分、イカ釣りスタート!
6時20分。空が白み始め、船長より釣り物交代のアナウンス。船は勝浦沖へ舳先を向けた。イカサビキに仕掛けを付け替え、定刻の6時30分を待って投入の合図。水深160mの底付近に反応はあるが触りがなく、船団も次第にバラけて行った。何がイカの気に食わないのか厳しめの展開の中、右舷ミヨシの板谷さんに待望のノリ。この板谷さん、遊漁船は初めての乗船とのことだがムツの釣り場に引き続き大健闘。上乗りさんたちによる応援の甲斐あって、軟調竿による低いタナでの静かな釣りがイカのハートを掴み、好調にヤリイカを取り込んだ。
徐々に水深の深いエリアを捜索した船長、沖上がりの迫る8時30分、サバに邪魔はされるものの活性の高いスルメイカの群れを捕捉。気難しいイカたちに悩まされていた釣人たちもここで気を吐き、最高3点掛けの一幕もあった。ビギナーは上乗りさんたちに助けられながら、ベテラン勢は経験と知恵を絞り出しながらの“ムズ面白い釣り”を満喫して沖上がりの9時を迎えた。
スルメイカは数年ぶりの“好釣”!ヤリイカも本格始動!
この釣りのコツを渡辺英雄船長に訊いた。「ムツって基本的に誘いの釣りなんで、デッドスロー(電動リールの微速巻き上げ)で良いから底から上にこうね、魚を追わせるように巻いて行った方が良いですよ。一番イケナイのは底をオモリでトントコやってるとオマツリしちゃう。イカでも何でもそうですけど、追っ掛けて来るように上げて行った方が良いと思いますね。ムツなんて言うと、知らない人は底一辺倒で底ばっかやってても、大きい魚ほど結構浮いてるもんです。活性の高い時は20mぐらい上まで浮いてきます」。
ムツでもイカでも流し毎に有望な泳層を船長がアナウンスしてくれているので、これを聴き逃さず、しっかりサーチするよう心掛けたい。「今年はスルメイカ、かなり良いですよ。9月から始まってまだやってるくらいだから。ここ何年も無かったくらい。今日もヤリイカ交じって来てるんですけど、ヤリイカは早くてもう反応があるって感じです」と今後も益々楽しみ。
かくして、この日の竿頭は初挑戦の坂谷さん。船長や上乗りさんのサポートで初心者にも中深場の釣りが身近になる『渡辺丸』のリレー船。スルメイカは沖干しにして炙って良し、里芋と煮付けるも良し、肝と一緒にバター焼きにすれば脳がとろける美味しさ。ヤリイカは透き通る刺し身にしても、さっと煮付けても美味。ムツは刺し身や煮付けや塩焼きは勿論、フライにすると驚きの旨さ。
取材日は難しい展開だったムツもイカも、その後持ち直して釣果を伸ばしている。イカ釣りに不慣れなアングラーはムツ&アマダイのリレーもあるので、こちらもお薦めだ。旬の味覚を満喫出来るリレー釣りで、新年を美味しくスタートして頂きたい。
今回利用した釣り船
出船データ
料金:午前船1万1000円(フラッシャーサビキ1枚・氷付き)
出船:2時30分集合、準備出来次第出船
定休日:第1&3土曜日/元旦〜1/4迄
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他