2015年05月01日公開

「外房・大原沖に黒潮が接近中」。編集室に情報が入ったのは4月22日。ここ1週間で潮温が急上昇とのこと。となれば、お腹パンパンのマダイが産卵のため浅場にやってくる、いわゆる“乗っ込み”が近い筈。24日、大原港では“一つテンヤ”の草分け的存在である『富士丸』で緊急取材した。
「早く乗船を」と船長
電話で「午前4時までに来て下さい」と聞き、20分前に待合所に到着。入り口手前にある『座席案内板』から座席札を取って中で受け付けを済ませた。私の後から1人来て、予約の9人が揃った。女将さんの案内で移動する。船着き場までは車で1分程。桟橋の入り口に駐車して進むと、左側に「富士丸」が停泊中。坂下隆一船長は氷を配りながら「早く乗船を」と急かす。私が最後に乗り込むと即刻、出船となった。この間、僅か25分。
日の出前はゴールデンタイム!
船は漆黒の中を進む。40分程走ってポイントに到着した。船長はパラシュートアンカーを打って開始の合図を出した。「水深は40m。根掛かりに気を付けて」。東の空は明るくなって来たが、船の照明は点けたままだ。そして第1投目から結果が出た。私の隣に座った吉原正美さん(江戸川区)の竿が弧を描いている。本人は「タイじゃないね」と断言。“答え”はマハタだった。その直後、左舷船尾の佐藤賢一さん(横浜市保土ヶ谷区)から「船長!」と大きな声が飛んだ。私も駆け付けると、リールからジージーと道糸が引き出されている。竿先が引き込まれる度に緊張が走る。やり取りの末、桜色の魚体が船長の差し出すタモに収まった。この直後に陽が昇った。その時、船長が乗船を急がせた理由を察知した。日の出前が「ゴールデンタイム」なのだ。
長い「沈黙」の末、大移動を決断
案の定、陽が昇るとポツリポツリの展開になってしまった。右舷船尾の殿木映一さん(市川市)によると「潮が速くて1投3回底立ちを取るのがやっと。おまけに二枚潮(上潮と下潮の流れる方向が違う)」とのこと。私も竿を出したが、最初の着底こそ判別できるが、シャクリ上げた後の2回目の底立ちは良く分からない。「うーん、これは…」。長い沈黙が続いて船長は大移動を決断した。そしてこれが“吉”と出ることに。
「弛ませるとハリが外れる」と船長の助言
30分程走って沖合のポイントに到着。すると今までがウソのように頻繁にアタリが出始めた。大きなホウボウが“方々”で上がる。そんな中、右舷ミヨシ(船首)の中原祐之輔さん(さいたま市)の竿が海面に突き刺さった。これまで上げたオニカサゴやハナダイ、ホウボウ、ショウサイフグなどとは明らかに違う引きに、船長も駆け付け「慌てないで大事に。魚の引きが止まったらリールを巻いて!弛ませるとハリが外れる」と背後から助言する。無事タモに納まった“本命”を手に中原さん、満面の笑みがこぼれた。
テンヤの“コレクション”2箱に
左舷船尾から2番目に座った井上一郎さん(横浜市中区)は、“一つテンヤ”に魅せられた一人。3年前、お隣の佐藤さんに教わって始めたとのこと。手持ちのテンヤを見せて頂くと、2ケースにビッシリ。佐藤さんが「面白い釣りを教えてあげた」と言うと、井上さんが「ハマってしまった」と応じて、顔を見合わせて笑った。GWも2人で来るらしい。
ビギナーにもベテランにもベストシーズン到来!
最終結果は、マダイは0~1匹、船中4匹。“ゲスト”は多彩だった。数的には不満が残ったが、全員が“お土産”を確保できたことで良しとしたい。船長は「釣りは趣味だから、それぞれの楽しみ方があって良いけれど、申し出があれば『釣れる技』を伝授したい」とのこと。無料のレンタルタックルもあり、天候が安定する5、6月は初挑戦には絶好の機会かもしれない。例年、GWから初夏にかけては大ダイが上がる季節でもある。ビギナーにも、記録更新を狙うベテランにもベストシーズンがやって来た。
この記事を書いたライター
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