2024年09月05日公開
近年、東京湾で周年狙える人気のターゲットとなっているタチウオ。引きや食味はもちろん、テンビン仕掛けを使った「餌釣り」やメタルジグで狙う「ジギング」、東京湾でも定着した関西発の「テンヤ」など多様の釣法があるのも魅力だ。今回はあらゆる釣り方で狙える船宿があると聞き千葉県は寒川港「小峯丸」を訪ねた。
「テンビン」「ルアー」「 テンヤ」どの釣り方で楽しむのかを予約時に伝えよう
タチウオを様々な釣り方で狙える『小峯丸』は、船長が釣り方ごとに予約順で釣り座を割り振るスタイル。そのため、事前に希望の釣り方を船長に伝えておく必要がある。テンビンの場合、餌は500円を支払うことで「コノシロ」もしくは「サバ」のいずれかの短冊を1日使うことができる。テンヤの場合はイワシ餌になるが、こちらは各自持参が基本とのこと。
富津岬を過ぎて8時15分頃に、最初のポイントとなる第二海保の南沖に到着すると、すでに船団が見えた。タチウオ船でひしめき合う中、船長の巧みな操船でポイントを選定していく。船の行き足を止める後進の音が響き「はいどうぞ、(棚は)54mから56mね、水深は56m」と船長より開始の合図。各自が一斉に道具を投入する。
一投目からヒットさせたのは左舷ミヨシの餌釣りの方。レギュラーサイズではあったが、これを皮切りに一流し目から順調にタチウオが続々とヒットし始めた。ちなみに「指示棚が中層の場合は水面からPEラインのマーカーで棚を合わせる」と船長。さらに、指示棚より仕掛けを下げてしまうと、魚が散ったり根掛かり多くなるそうだ。これは意識しておきたいところ。
ルアーのアクションはソフトな誘いとフォールの間
ルアーで順調に数を伸ばしていたのは、右舷胴の間のルアーマン。「スローのワンチッピジャークを数回、その後ロッドをスっと上げてからゆっくり下げてフォールで誘うとアタリが出ました」とのことだった。さらに「フォールはカーブフォールではなく真っ直ぐ落とすイメージで」と付け加えてくれた。横からロッド操作を見ていたところ、ジャーク幅は小さめで比較的やさしく行っている印象だ。そして、その後のソフトな誘いとフォールが“喰わせの間”になり、釣果に結び付いていたのだろう。
猿島沖に移動でサイズアップ成功!
9時45分頃、レギュラーサイズの数釣りができたので、型も狙える猿島沖に移動することとなった。水深は47m。指示棚は42~39mで釣りを再開する。すると、早速テンヤの方に良型がきた。やはりこちらのポイントの方が型が狙えるようだ。さらに、テンビンやルアーを楽しむ釣り人たちもサイズアップに成功していた。そんな中、左舷でテンビンを楽しんでいた常連の方と、右舷でテンヤで狙っていたベテランの方に、立て続けにドラゴンサイズがヒットする!
沈黙を破りついに神龍(シェンロン)が!
10時30分を過ぎると、急に喰いが止まってしまった。周りの船も竿が曲がっている様子はない。しばらく沈黙が続いたが、正午少し前になると、周りの船でポツポツ釣果が出始めてきた。こちらの船もそろそろか…と左舷ミヨシの釣り人の竿が突然、大きく曲がった。船中が一瞬で活気づき、誰しもがその竿に集中している。周囲の釣り人が協力してタモの準備行い、息を呑んで見守っている。
「そんなに大きくないよ」と謙遜していたが、大物とのファイトで針が広がらないよう慎重にやりとりを続けている。竿を持っている本人はそのサイズを一番理解しているのだろう。「バレるなよ…」と祈るような表情だ。喰い上げの際には素早くリールを巻き、強烈な引き込みはテンションを保ちながら耐える。そして「ギラリ!」とイナズマのような銀色の魚体が水面下に輝いた。「でかい!でかい!」。周りの釣り人たちから歓声が上がった。
取り込まれたのはなんと、船宿記録を更新する「143cm」のスーパードラゴンサイズ(巻頭写真)!その姿は神龍(シェンロン)と呼ぶにふさわしいほど、神々しかった。「喰いが止まった後、再び喰い出すときが大物のチャンス」というが、まさにそれが当てはまるタイミングでの釣果である。
ちなみに、143cmを釣り上げたのは常連の方で、なんとそれまでの船宿記録保持者。前回は141cmだったというから+2cmの自己記録更新を果たしたことになる。前半はテンビンでの釣りだったが、後半テンヤにスイッチしてからの釣果であった。
大物を釣るコツは「潮境」と「定点バイブレーション」
船宿記録となる143cmを釣り上げた常連の方に、テンヤ釣りのコツについて聞いてみたところ、まず指示棚まで落としたら、細かく竿を叩くいわゆる“ノンストップバイブレーション”を行いながらリールをゆっくり巻くそうだ。〝叩く〟というより〝小突き〟に近いイメージと言っていた。そのままリールを巻いていくそうだが、リールの巻き抵抗に変化があったらそこが〝潮境〟になるそうで、その場所でリールから手を離し竿を叩き続けるという。これを〝定点バイブレーション〟と表現していた。
この〝定点バイブレーション〟に移行した後、なんと3分間ほど叩き続けるそうだ。その後叩くのをやめて、数十秒間アタリを見る。そこでアタリがなければ再度棚まで落として同じ方法を繰り返すとのこと。この話を実演と共に聞いていたところ、定点バイブレーションのあとに止めを入れた瞬間、なんと話の通りに121cmのドラゴンサイズをヒットさせた!
3分間叩くというとかなり長く感じるが、これが大物を引き寄せる秘訣なのだろう。また、どの釣り方にも言えることだが潮の変化する〝潮境〟を見つけられるかどうかも重要な要素になりそうだ。
前半は夏タチサイズの数から中盤から後半は型狙いで、竿頭は31匹、次頭30匹、ドラゴンサイズも複数釣り上げられ、今季のタチウオの好調さが伺えた。アタリがあってもなかなか掛けられない場面もあったがこれもまたタチウオ釣りの楽しさの一つだろう。
テンビン、ルアー、テンヤどの釣り方でもそれぞれにゲーム性がある。一つの釣り方を突き詰めるのも良し、別の釣り方にチャレンジしてみるのもまた良し。様々に楽しめる東京湾のタチウオ釣り、好調な今を逃さずぜひチャレンジしていただきたい!
この記事を書いたライター
マルイカ、ティップラン、ワカサギなどを中心に海水淡水を問わず釣りの帰りに温泉に立ち寄り、「釣り&温泉」をテーマに釣り歩く。