2015年06月15日公開
「オニカサゴが釣れているよ」と、千葉県・大原港の船宿からの情報。市場では滅多にお目に掛かれないオニカサゴ。顔が怖いからではない、一本釣りでしか捕獲されないので市場に出回るほど漁獲がないのだ。それほど貴重なオニカサゴ、釣りの醍醐味と食味を求めて関東地方の梅雨入り宣言があった11日、大原港『力漁丸』に出掛けた。
受付けは、漁協前の船着き場
周年オニカサゴを釣らせている『力漁丸』。アクアラインや圏央道が整備され都心からも行き易くなった。午前3時30分に船着き場に集合だ。漁協のある『いさばや』鮮魚販売所先の右手に『力漁丸』の看板があり、岸壁に船が係留されている。車はすぐ近くに停められるが、満車の場合には『いさばや』の周辺に駐車場がある。早めに着いたので看板の近くに駐車して居眠り。気が付くと船に灯かりが灯り、既に釣り人11人が乗り込んでいた。慌てて荷物を持って左舷のトモ(船尾)3番に入った。4時丁度、中井聡船長の操船で出船した。
デカイ餌でアピール!
港を出て真沖に進路をとる。多少ウネリはあるものの風も波も静かだ。暗かった空が薄墨を流したような空に変わり、真っ赤な太陽が水平線に昇って来た。1時間程走ってエンジンがスローになる。「準備して下さい。風もなく潮も行ってないようだから横流しするかも。オマツリしないように一斉に投入して下さい。タナは125m」と船長からアナウンス。サバやアナゴ、サケの皮、思い思いの餌を付けて投入。餌の大きさがデカイ。サバの短冊と言うより切り身、アナゴも1匹の半分ほど、デカイ餌でアピールだ。
潮が効かずオマツリ騒ぎ
潮が行ってない。出ていく道糸は船長が言った水深125mのままだ。「潮が行ってないので船で押しますよ。注意して下さい」と船長。無理に流すので案の定、あちらこちらでオマツリ騒ぎ。そんな中、投入して間もなく、左舷トモのTさん(江東区)の竿先がクンクン持ち込まれ、電動リールのスイッチON。途中何度か引き込みを見せながら海中に赤っぽい姿が見えた。しかし船長の差し出したタモに収まったのは良型のユメカサゴ。海中から夢を持って巻き上がって来るからユメカサゴか?右舷トモの武田和宏さん(足立区)も「来たー!」。リーリング開始、引き込みが強い。タモに収まったのは1.5kgオーバーのメダイ。武田さんはその後、サメの猛攻に遭う。
小振りの船中第1号からポツリポツリ
“本命”第1号は、左舷胴の間(中央)の吉村富夫さん(座間市)。先週、先々週と港まで来たが、荒天で船が出ず3度目の正直とか。先月来た時に「7匹、6匹と連続良い思いをしたので…」。虜になったとのこと。タナを聞くと常時オモリを50cm位切っていると言う。見ていると竿は常に手持ちで、時折竿を立てて誘いを繰り返している。トモのTさんも700gを釣り上げてニッコリ。これを皮切りに右舷胴の間でも同型を取り込んだ。そして右舷ミヨシ(船首)の樺島洋一さん(あきる野市)が1kgオーバーをタモに収めた。
潮も動かず、潮温低下でサメの猛攻
胴の間やミヨシでポツリポツリ上がっていた“本命”も中ダルミ。そんな中、右舷トモで「来た!」の声は武田さん。竿を持ってリーリング、クンクンと時折竿先が持ち込まれる。船長がタモを持って海面に集中、しかし、海中に白っぽい姿、何とネコザメの一荷。「ニャンコだ」とガッカリ。「“熱帯魚屋”で1匹8,000円で売っているよ」の声に苦笑い。左舷トモでも胴の間でもサメ、サメ、サメの猛攻。「底潮の潮温が下がって、潮が動かないからサメが来ちゃうね」と船長。
クライマックスが来た!
7時前、左舷トモから2番の船中紅1点の小島弘美さん(北区)が「何か来てる、来てる」とリーリング開始。トモの人や船長が見守る中、上がって来たのは、赤は赤でもユメカサゴにガックリ。しかし、ミヨシでトモで胴の間でオニカサゴが上がる。常連の“木曜組”のメンバー、ミヨシの中島誠さん(柏市)。サバをはじめアナゴ、サケの皮、ホタルイカ等いろいろな餌を用意していた。その日の食いのよい餌を探すのだとか。その中島さんの竿に2匹目の強いアタリ。「サメかな」と言いながらリーリング、「オー、オニだ、オニ!」と叫びながらタモで掬い上げられたのは1.2kgはあろうかと思われる“本命”。口の中にこぶしが入りそう。海水を張った大きなポリ容器に放り込みながら「やっと自分の釣りのタイミングがあって来た。今日はサバ餌が良いね」と一言。胴の間の吉村さんが2匹目を、樺島さんが1kgオーバーを。そして小島さんにもアタリ。小振りながら“本命”をゲット、「ヤッタ、ヤッタ!」と大喜び。
終盤に3人同時に!
9時前後に来た2回目のクライマックスが去って一段落。中ダルミの後、終盤近くに再び食いが立った。サメに悩まされていた右舷トモの武田さん。「来ました、来ました。今度はサメのアタリと違う」とリーリング。取り込まれた1kgオーバーの朱色の“本命”に「やっと釣れました」と満面の笑み。そしてミヨシと2番が前後して1kgオーバーを取り込む。続いて左舷のミヨシの中島さんが、2番目に、そして吉村さんにと3人が1kg前後を取り込んだ。左舷トモでTさんが800gを取り込む。そして圧巻は残りわずかな時、またまた左舷ミヨシ寄り3人に同時にアタリ。リールの巻き上げ音が心地よく同時に響く、中島さんとその隣が1kgオーバーを、吉村さんが1kg弱を手にした。
締めは女性に
「上がります。片づけて」と言う船長の合図にリーリングの音が響く。「何か変よ」は小島さん。巻き上げる竿先にクンクンとシグナル。海面に赤い姿がポッカリ浮かぶ。“本命”だ。「ワッー、やったー」とニコニコ顔、見事、〆をやってくれた。残念だったのは右舷のトモから3番の春木さん(江東区)とそのお隣、そして私。3人ともユメカサゴだけでオニカサゴがユメになっての沖上がりとなった。
トップは中島さんの5匹で4匹が2人、3匹、2匹が数人ずつと続いた。潮が流れない中、オデコも出たが、船中30尾の好成績。「潮さえ良ければ2桁釣果もありますよ。タナをしっかり取って小まめに仕掛けを入れ替える。竿掛けに掛けないで手持ちで誘いをかけている人が釣れますね」と船長がコツを教えてくれた。