2024年11月06日公開
朝の気温が一桁台になってきた晩秋の北海道。魚たちの動きも次第に鈍くなり、アングラーたちも冬の訪れを目前に感じる時期ではないだろうか。それでもアメマスなど冷水に強い魚は元気に釣れてくれる。むしろ10月~11月がベストシーズンとも聞く。そんな北の大地で今回狙うのは〝幻〟とも称される魚類、イトウ。北海道在住の私にとって身近な存在とも言えるのだが、釣り上げた経験はない。さらに事前情報は皆無。独自に情報を入手して挑んでみることにした。
たまに聞くけど、イトウってなんだ?
まず今回のターゲットであるイトウについて。ご存じの方も多いと思うが、日本最大級の淡水魚であり、2m近くまで成長する個体もいるらしい。諸説あるが、日本三大怪魚にも名を連ねている。魚類はもちろん、小さい鳥やカエルを食べることもあるという。北海道に昔から住んでいたアイヌ民族の伝説では、シカを飲み込むほどの大きさになった逸話もあるとか。漢字表記すると「𩹷(魚へんに鬼)」。まさに鬼と呼ぶにふさわしい獰猛さを持っているのだ。
よく聞く釣り場としては、北海道の道北地域の河川・湖や道東地域の湿原河川などが挙げられるが、開発などの影響で生息場所や産卵場所が少なくなり、個体数が減少しているそうだ。これにより出会える確率も少なくなり、〝幻〟というフレーズに拍車がかかっているのだろう。アングラースピリットを掻き立てる要素の多い魚でありターゲットとして人気も高いが、釣り場や釣る際のレギュレーションを遵守したり、キャッチ&リリースを徹底するなど保護を意識する必要もある。
まずは独自にリサーチ!広大な十勝川のどこにいるのか?
今回釣りをするのは十勝川。YouTubeやSNSでもイトウの釣果が盛んにアップされている河川だが、この十勝川・・・とんでもなく広い。流域面積は全国6位で北海道では石狩川に次ぐ2位。つまり、日本トップクラスの大河川なのである。ちなみに河口から水源までの流路延長は150km以上あるらしい。
私も上流域でニジマスを狙ったり下流域でアメマスを狙ったりと、割となじみのある川ではあるものの、この大河のどの場所にイトウが棲んでいるのかまったく見当がつかない。しかしながら、北海道に住んでいるアングラーの端くれとして、何としても幻の魚に出会ってみたい。そんな思いから、まずは研究論文、インターネット、SNSなどを駆使して、リサーチしてみることにした。
大まかな可能性をリサーチ!
色々とリサーチしていると、多くの情報が見受けられたが、概ね
1 水深がありゆったりとした流れ
2 若干の濁りがある
3 草木などのカバーがある
という3つの要素が多くの情報の中で共通していることが分かった。
前述した3つの条件すべてに当てはまりはしないものの「十勝川なら中流域のあそこらへんだろう」というイメージはできた。そしていよいよ釣行へ。広い川幅に対応できる8フィートのロッドを用意し、ルアーで狙っていく。
え?そんなはずじゃなかったのに!想定外の出来事が起こる・・・
事前にGoogleマップの航空写真で調べて、狙っていたポイントに入ると、雨などの影響なのだろうか流れが少し変わっている。元々1本の流れが、大小2本の流れになっていたのだ。普段の自分であれば、ビッグファイトを求めて大きい流れの方を中心にやるところだが、いったん冷静に。今一度ポイントを見直してみる。
できる限りイトウの好むポイントに近づけたい。小さい流れの方で、水量は少ないものの〝流れが緩やか〟で、〝多少のカーブや倒木などの変化のある場所〟を発見。規模は小さいものの、湿原河川チックで〝いかにも〟という雰囲気を醸し出している。このエリアを中心に攻めることにした。
まさか!?消極的なルアーセレクトが結果を生む!
イトウは水深の深いところを好むという情報もあったので、アップストリームにルアーをキャストして底をズル引きする戦法に。最初はシルバー系のシンキングミノーで攻めていたが、お察しの通り根がかりでロスト・・・。お財布事情的にもミノーは失いたくないと考え、スピナーにルアーチェンジすることにした。
ルアーケースには、黄色と赤のカラーを用意していた。秋には赤系のカラーが実績もあり、有効なイメージを持っているので迷わず赤系をチョイス。なんでこの色なのかは、以前釣りビジョンマガジンで書かせていただいた通り。
何度か流心脇をズルズル引きながら、時折トゥイッチを入れていると突然HIT!引きはそこまで強くなかったが、フリフリと頭を振るようなファイトで、いつも狙っているニジマスとは違う感じがした。
近づいてみるとなんと!20数cmのイトウであった。雑誌で見るような両手で抱えるサイズではなかったが、幻の魚に出会うことができたのだ。この後、せっかくなので大きいほうの流れでもやってみると、同じルアーでニジマスがフィッシュ。かわいいサイズだが、パワフルな引きを楽しませてくれた。
魚種により、釣り方を変えていくことの大切さを改めて実感
普段釣りをすると、より大物を求め、大きい流れやプールに注目しがちだが、今回は小さな流れの方が、よりイトウの住む湿原河川、ゆったりとした道北の流れにマッチしているだろうと、グッとこらえて小さな流れを選択をした。そして、小型ながらもメインターゲットとしていたイトウと出会うことができた。魚種やフィールドの状況によっては、むしろ小さな流れの方がポテンシャルを持っているかもしれない。そんなことを考えさせられた、今回の釣行であった。
また、普段はルアーロストが多いためミドルレンジを中心に攻めるのだが、今回はイトウということで、勇気を出して底を狙ったことも功を奏したと自負している。冷静になって、我慢の釣りを展開することができれば、出会いの幅が広がっていくのだ。また知識と経験を深めてチャレンジしていきたいと思う。