2015年07月15日公開
毎日鬱陶しい空模様が続いているが、早くも“夏イカ”のシーズンに入った模様。この時期、“ムギイカ”からスルメイカに成長、浅い所で貪欲に餌を追うので、イカ釣りフアンには堪らない多点掛けを楽しめるチャンスがやって来た。ベテランは、釣ったそばからイカを開く。長く伸びた船上干し(イカ暖簾)は、腕自慢の勲章だ。7日(火)、「イカの長井」で名を馳せる長井新宿港『栃木丸』に乗った。
若いスルメイカは、身が柔らかくて甘い
スルメイカは、一潮毎に成長すると言われる。この時期は30~40cmに成長した“真イカ”がメインの釣り。水深は90~130m辺りで、初心者でも釣り易く、多点掛けも夢では無い。今頃からイカ釣りに馴染んでおけば、真夏の最盛期、ベテラン並に“船上干し”が出来る。又、この時期のイカは、身が柔らかく、甘味が有り、醤油とおろしショウガで、ピリッと味を締める“糸作り”がお薦め。若いイカだから特に旨い。一度食べたら虜になるはずだ。
仕掛け投入は早い者勝ち。ヨーイドン!
午前5時、長井港に着いた。空はどんよりしているが、辺りは明るい。港にはイカ釣り船が所狭しと並んでいる。流石に「イカの長井」だ。船長と女将さんが迎えてくれた。休憩所に掛けてある釣り座表に名前を記入する。釣り教室の2人と私を含め、8人が左右に分かれて乗り込んだ。定刻6時、鏡の様なベタナギの海を滑る様に出船。航程40分程で城ヶ島沖に着いた。栃木拓船長は慎重に船を回す。程なくエンジン音がスローになり「ハイ、やっていきましょう。80mから底。水深は95m」と船長からアナウンス。同時に“ヨーイドン”で仕掛けを投入。イカは、仕掛けを早く下ろした人にチャンス有りが常識。しかし、竿をシャクッてもシャクッても乗らない。左舷トモ(船尾)より、イカ釣りのベテラン、目黒誠志さん(北区)の釣り方を傍で見せて貰った。仕掛けは18cm直結。着底後ゆっくり聞き上げ、途中“サワリ”が無くても頭上一杯まで竿を煽り、又下ろして行く時もゆっくりイカの“サワリ”を取ろうとしている。時々竿一杯に強く上下に煽り3、4回繰り返し、イカにツノの存在をアピール。無駄のない竿捌きだ。船長は、乗らないと思うとさっさと場所を移動した。
船中第1号は、釣り教室の生徒
開始から1時間、右舷ミヨシ(船首)の佐藤計さん(さいたま市)は「イカが触ったと思った直後にバレた」と言う。ツノにしっかり抱き着かせる前にバラしてしまった様だ。しかし、それが合図の様に、イカ釣り初めての釣り教室の平良徹さん(杉並区)が船中第1号のスルメイカを取り込んだ。釣れた時の感じを聞くと「先生の指導通りにやったら釣れました。底で竿先が“ズン”とした時、アレーッと考えていたら船長が“乗ってるよ”と言うので、ゆっくり巻き上げたら付いていました」と嬉しそうに話してくれた。
開始1時間で、全員オデコ脱出!
これを皮切りに、単発ながらポツリ、ポツリと釣れ出した。船長の指示は「100mから下」。目黒さんがやっと片目が開いた。目黒さんは、道糸やスプールの抵抗を極限まで少なくする為、独特のキーパーで、竿先を海面に付け仕掛けを下ろしていく。「110~130mで反応が出ているよ」と船長。目黒さんはゆっくり竿先を上げ、頭上近くで“ギシッ”と合わせた。一番下のツノに乗っていた。船長は「まだ反応が出ているよ」と檄を飛ばす。右舷釣り教室の日和田寛さん(杉並区)はブランコ仕掛けで、時折サバに捕まり、手古摺る場面も有ったが、漸くして1杯目を取り込んだ。乗り渋りの中、8時を回る頃には全員が“型を見た”。
船上干しの腸は、海に捨てないで…
突然“入れ乗り”タイムが始まった。スタートから2時間を過ぎる頃、左舷の目黒さんが5点掛けを取り込んだ。同じ左舷トモ(船尾)の佐々木正吉さん(多摩市)も5点掛け。釣ったイカが増えると、次々にイカの腹を開き、船上干しの準備。「内臓は、サバやサメが来るので、海に捨てちゃ駄目なんだ。帰るまで桶の中に入れておくのがルール」と目黒さん。
城ヶ島西沖で“入れ乗り”多点掛け
船長は「大きく移動します」と城ヶ島西沖に船を向けた。僚船が10隻程固まっていた。「ハイ、70~80m」。今度は浅い。右舷ミヨシの佐藤さん(さいたま市)は2、3回とシャクった所で「乗った」と言い、そのままリーリングに入る。数えると4点。時折、ブッシューと爽快に水鉄砲を噴いて上がって来る。「これがイカ釣りだ」と言って、直ぐに仕掛けを再投入する。そして次も4点掛け。急に乗りが良くなってきた。水深も70~90m。イカは先ほどより小型になった感じだ。左舷側を離れていたので、目黒さんに状況を聞くと、「6点掛けが有りました」。イカが固まっているのか、誰かが釣れば、他の人も乗せている。濃い群れに当たった証拠だ。右舷の佐藤さんが又も6点掛けを取り込んだ。右舷トモの半沢正吉さん(大和市)も3点掛けを達成。その後は又静寂な時間が戻り、ポツリ、ポツリの拾い釣りに逆戻り。最後に、日和田さんが単発で釣り上げたところで沖上りになった。
7点掛け、6点掛け、5点掛け!
最初に行った城ヶ島沖では苦戦したが、城ヶ島西沖に戻って、多点掛けを連発。7点掛け、6点掛け、5点掛けと「これがイカ釣り」と言う光景も目に出来た。何と言っても、多点掛けがイカ釣りの醍醐味。釣果はトップ27杯、20杯と続いた。
「今日は、潮が濁り過ぎ。潮次第で状況は一変するよ。ツノのサイズは14cmと18cmを持って来て、状況で使い分ければ良い。これからは水深が深くなって行くので、18cmで良いかも知れない。直結仕掛けは“サワリ”を感じたら静かに巻くだけ。多点掛けをしようとして竿を揺するのはダメ。“サワリ”が分からないとイカを捕るのは難しい」と、船長はスルメイカ釣りの“勘どころ”を教えてくれた。
夏の風物詩、“イカ暖簾”、これからがシーズン本番、是非出掛けて頂きたい。