2016年01月15日公開
昨年から“好釣”が続いている東京湾のアジ。100匹を超す憧れの“束釣り”はおろか、180匹以上と2束釣りに迫る記録も釣果情報を騒がせている。しかも水深20mにも満たない浅場をお手軽なLT(ライトタックル)で楽しめると聞いて、東京湾・LTアジに力を入れる大田区羽田の『かめだや』へ出掛けた。
例年より数が釣れる今期のLTアジ
東京都と神奈川県の境、多摩川に架かる大師橋の袂にある『かめだや』。地元では朝の散歩道やジョギングコースにもなっている土手を越えると、大師橋と首都高の高架を臨む白銀の桟橋が見える。遊漁船と屋形船の船着場だ。冴え渡る朝の空気と冬の朝日を浴びて、清々しい気分で乗船すると、隣は連日好釣果を出しているシロギス乗合船。どちらも束釣りが射程距離にある釣り物だけに、準備をする釣り人たちの表情も明るい。右舷4人、左舷4人のゆったりとした釣り座で7時30分に河岸払い。船はこの時期にしては暖かい、微風ベタ凪の東京湾へと滑り出した。
快晴の下、錨を降ろして
走ること30分弱。最初のポイント“川崎沖”(水深16m)に到着、錨を降ろしての“掛かり釣り”からスタートした。日の出の頃は空を覆っていた雲も流れて空は快晴。船のエンジンが停められると、海の上はこんなにも静かなのかと驚かされる。
船中初獲物は右舷ミヨシ(船首)の三浦政義さん(川崎市)が釣り上げた。これを皮切りに、船中の誰かの竿が曲がるという賑やかな状況に突入。20cm前後のアベレージサイズに交じって27cm、29cmと尺(約30㎝)に迫るアジも上がるが、大型は釣れる水深もタイミングもアベレージサイズと全く同じで、大きさを選んで釣ることは難しい。一方、アジと同じくらいアタるのがイシモチ(和名・シログチ)で、これは何匹か釣るうちにアジとの釣り分けやアタリの違いがわかり始める。そんなこんなで釣り開始1時間後には船中全員が“本命”アジの釣果だけで“ツ抜け(2桁)”を達成。このペースで午後3時まで釣れれば束超えの釣果もナルホドと頷ける。
もはやお馴染み、LTのアジ釣り
船のアジ釣りと言えば、かつては130号のアンドンビシによる“ビシアジ釣り”が定番だったが、この10年で釣法は一変。軽量な竿とリールを片手で持って出来る“ライトタックル(LT)・アジ”が台頭しつつある。この日回ったポイントの水深は16~20mでビシは40号。電動リールやバッテリー、道具としてはかなり重たいロッドホルダー(竿掛け)も持たずに釣行できる身軽さは魅力的だ。テンビンから先の仕掛けは、沖の大アジ釣りと全く同じ。ライトタックルの“ライト”は“道具が軽い”と言うことで、浅場で小さな魚を釣るという意味ではないので誤解のないように。また「アジってこんなに引くんだ!?」と感じるほど釣り味も格段にアップするのもこの釣りの魅力。ビシアジではわからなかった微妙な“アタリ”や、細かい“タナ”の違いも判別できるので、やり込めばアジ釣り本来の奥深さも充分堪能できる。
『かめだや』は首都高速道路・横羽線「羽田ランプ」から近く、車でのアクセスの良さもさることながら、JRや京浜急行の蒲田駅、川崎駅まで船宿の送迎バスもあるので、電車釣行も可能。様々な釣りで腕を磨いたシルバー層の太公望にも自信を持ってお薦めしたい。
潮止まりでしばし休憩!
“入れ掛かり”に沸いた1時間後、潮の流れが緩むにつれてアジの食いもまばらになってきた。近くのポイントへ移動するが大きな好転はなく、掛かるのは中型のサバかイシモチという時間帯が暫く続いた。時々パラパラっとアジの食いが立つ時もあるのだが後が続かない。その間、船長はお湯を沸かして希望者に配ったり、常連さんと談笑したりと、のどかな時間が流れる。こんな時間帯は釣った魚を開いて沖干しを作ったり、イシモチのエラを切って血抜きをする格好の下ごしらえタイムにもなる。
潮が動き始め、次なる釣り場へ
沖上がりの1時間前、風が吹き始め、潮も朝とは逆方向に流れ始めていた。これを見た船長は20分程船を走らせた。沖から見るとピラミッドのように見えるアクアラインの風の塔を臨む次なるポイントは水深20m。多少ゴロタ(障害物)の沈む堤防沿いを流しながらの釣りだ。先程のポイントとアベレージサイズこそ変わらないが、25~27cmの良型が頻繁に交じり始め、取り込みにタモを使う釣り人が増えたその時、左舷トモ(船尾)で大型が竿を引き絞った。丁寧なやり取りで海面に現れたプラチナ色の魚体は間違いなく“尺超え”と見て取れる大型!
スケールをあてると33.5cmの大アジだった。船長によると、ここは過去に38cmのモンスター級も上がった浅場の“大場所”。大型のバラシも目立ったこのエリアは、まだまだ大物をストックしている模様。今後の釣果情報がますます楽しみだ。
こいつぁ春から景気が良いわい
この日の竿頭は88匹、33.5cmの船中最大魚も釣った福本功さん(調布市)。「前回乗った時は120匹釣ったのに」と悔しそうだったが、十分驚きの釣果だ。
そこで、野口勝弘船長に“数釣りの秘訣”を聞いてみた。「アジの食いが立っている時は兎に角手返し良く魚を取り込んで、コマセカゴにまだ半分コマセが入っていたら、継ぎ足さずに再投入したり、魚を外してもハリから餌の取れない赤タンで釣るのも効果的ですね。釣れている時も釣れない時も、とにかくコマセが途切れないように釣ることが大切。仲間内で全員の仕掛けを同時に上げない(誰かのコマセカゴが常に海中にある)ように理想的なサイクルを意識するのも秘訣ですね」。因みに周りでアジが釣れているのにイシモチばかり釣れる時はタナが低い可能性がある。逆にイシモチが釣りたければ、タナを少し下げれば良いとの事だった。
船長の「底から2m」というアナウンスは、2mの船宿仕掛けを基準に指示しているので、自分の使っている仕掛けや、潮の流れを計算して“アジの釣れる水深”を見極めるのが数釣りの第一歩と言えるだろう。船中全員が束超えをする日もあるという東京湾・羽田『かめだや』のLTアジ。2016年の初釣りを景気よく飾りたいあなたに是非お薦めだ。
【おしらせ】
2016年2月28日(日)にマコガレイをターゲットにした「江戸前 釣り大会 ~カレイ2016~」が開催される。魚の大きさを競う大会なので初心者にもチャンスあり!5万円の商品券ほか豪華賞品の当たる抽選会もあるので、腕に覚えのある方は勿論、ファミリーやカップルでの参加もオススメだ。申し込みは『かめだや』へ!
今回利用した釣り船
出船データ
出船時間:午前7時30分(沖上り:15時)
乗合料金:9,500円(コマセ・氷付き)
※女性・中学生以下割引有り
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他