2016年04月01日公開
静岡県・清水港はこの時期でも浅場でクロダイが狙えることで知られている。しかし、どうしても好不調の波がある。そのため、苦戦している釣り人が多いのだが、安定した釣果を続けている「定点団子」という釣り方があるという。3月15日、実地見分に出掛けた。
指南役と合流
午前5時、『ふじや釣舟店』でこの日の指南役、鈴木重昭さん(埼玉県坂戸市)と合流。2月に行われた「第30回清水港黒鯛釣り競技会」予選でも、“年無し”と呼ばれる超大型を1日で2枚も釣り上げているクロダイ釣りのエキスパートであり、「定点団子」の第1人者の1人でもある。早速、この日の釣り場、“貯木場・第三”へ向かった。
シンプルな団子を作る
アンカーロープ3点で船を固定。まずは団子を作る為、ベースになるオカラと小砂利を丁寧に混ぜ合わせ、サラサラな状態になるよう時間をかけてオカラの玉を潰す。これでオカラベースが出来上がる。次に“荒びきサナギ”1袋を別桶で粉末が水に浸る位海水を入れ、掻き回すと海水が茶色(サナギ色)になる。サナギのエキスが海水に溶け出すそうで、これをオカラベースと丁寧に混ぜ合わせる。水分はこれで十分。水が多過ぎても団子の握り回数を多くすれば絞れるので、気にしなくて良いとの事。
定点団子は一手間かけて
次に「定点団子」を作る。サナギを加えたオカラベースの一部にベントナイト(通称・石粉)を混ぜ、粘りを出してテニスボール大の「定点団子」を20個程度作り置きする。これを30分に1個、定期的に同じ場所に投入し、定点を作る事からその名が付いたようだ。バラした時は直ぐに1個投入するとの事。
仕掛けは、フロロカーボン2.5号の通しとチヌバリ4、5号が基本で、中小型用に3号やヒネリタイプも使用した。
ステージは静かに幕が上がる
鈴木さんは「定点団子」1個をヒシャクに入れて静かに水中に投入。ここからスタートだ。音を出す事や立ち上がる事は、出来るだけ控えて、神経質になっているこの時期のクロダイにアプローチ。まず、水深をゴム付きオモリで計測。約3.5mで着底。この数字を記憶して、ゆっくり静かに付け餌の準備。藻エビ(持参)と“生きサナギミンチ”を選択。準備が出来たのは「定点団子」投入30分後だった。藻エビ餌を付けたハリをヒシャクに入れて前方に飛ばした。飛ばす距離は水深分の3.5m、これ以上は要らない。団子の周辺に集まっているクロダイの頭上に、ゆらゆらと餌が落ちて行く「前打ち釣法」。穂先から出ているラインがゆっくりと沈んでゆくのが判る。息を殺してアタリを待つ事数回、前打ちして1m位落ち込んだ時、突然アタリ!穂先が10cm位引き込まれた。やり取りの後上がって来たのは、フッコサイズのスズキだった。
第二幕は“本命”登場!
「スズキの次はクロダイだよ」と、鈴木さんはニヤリと笑い、言葉通り次の「前打ち」で40cm弱のクロダイをゲット! ここではスズキの後にクロダイが来る事が多いそうで、スズキを1匹追加して、コマセに魚が寄って来ている事を確信。「団子釣り」を準備、この間も30分に1個「定点団子」を投入して船下の定点(ステージ)を作っている。
「団子釣り」の餌は最初藻エビを付け、団子の中に数匹エビを隠して投入するが、団子が溶けて付け餌が出ると直ぐに餌取りにやられる。付け餌を“生きサナギミンチ”に変更。半分に千切ったサナギとコーンを交互にハリに刺し、ハリ先を少し出してミンチでまとめ、それをコマセ団子で包み10~15回握りヒシャクに入れて静かに投入する。
着底して付け餌が浮き上がるとボラやフグに食われるので、逆に50cmから1mくらい送り込み、餌を底に着けて(這わせて)クロダイのアタリを待つ。アタリが出ない時は、ゆっくり聞くような感じで誘い上げ、小さくてもアタリが出たら又送り込む。これを繰り返し、団子周辺を回遊しているクロダイを狙って行く。
クロダイのアタリは他のアタリと異なり、明らかに力強い。聞いている時でも、待っている時でもアタるので油断禁物、アタリが出たら即合わせだ。この釣り方で11時頃にこの日最大の48cmを釣り上げ、午前中にクロダイ3匹、スズキ2匹を釣った。
昼食休憩で定点(ステージ)を休ませ、「前打ち」を再開。風が出てきてゴミが流れ、ラインに当たり出した。こうなると「前打ち」は厳しいので「団子釣り」に切り替え、流れて来るゴミを回避するため、竿先を水中に入れて待つとこれが的中、40cm前後が連発。2匹追加して合計5匹。
定点(ステージ)を休ませ「前打ち」にするとヒラスズキ。「団子釣り」に戻し、午後2時から納竿の3時までにクロダイ3匹を追加。「前打ち」と「団子釣り」を交互に行ない、定点を休ませる事が功を奏した。クロダイ合計8匹、スズキ3匹、ヒラスズキ1匹。産卵前のこの時期に見事な釣果である。
シンプルに、静かに、狙う!
「今日はまずまずでした。アタリは沢山ありました。産卵前は静かに釣る事。オカラ団子釣りの原点に戻ってやってみて下さい。コマセ団子は使い過ぎないように。しかし、今日はカモメとゴミが邪魔でしたね」と浮かぶカモメも気にする鈴木さん。使ったオカラは桶1個、理にかなった釣り方に納得の一日だった。
今回利用した釣り船
出船データ
集魚材は各種別売り(各自持参も可)
手釣りの仕掛け:300円(巻具は返却)
氷:105円
午前5時集合、6時出船、15時最終迎え