2016年05月15日公開
2016年のGW、皆さんの釣りはいかがでしたか? 強風や混雑、食いの渋さに泣かされた釣り師も多かったと思いますが、よ~く釣果情報を見て下さい。あるんです、調子よく釣れて、ゆったり楽しめる穴場の釣りものが。GW大詰めの6日、多彩な魚種で“好釣”が続いている“ウイリー五目”を目当てに、神奈川県・茅ヶ崎港『まごうの丸』に出掛けた。
“ウイリー”とは……?
“ウイリー”とは化学繊維で出来た毛糸のことで、羊毛(ウール)っぽい糸「ウーリー」が、漁師や釣り人の間で“ウイリー”に訛ったものと思われる。これを釣りバリに巻いた仕掛けを“ウイリー仕掛け”と呼び、基本的には餌を付けずにコマセ(まき餌)釣りで使用する。竿をシャクってコマセを撒き、撒き餌の煙幕の中で踊るウイリーバリに、アミコマセで興奮状態になった魚は口を使ってしまうというワケだ。
面倒な餌付けもなく、厳密なタナ取りが出来なくても、何かしらの魚が釣れてしまうこの釣り、かつてはファミリーフィッシングの代名詞だったのだが、1年を通して浅場、深場の“ウイリー五目”船を出している『まごうの丸』の乗合船に乗ると、その予想は裏切られる。道具といい、準備の手際といい、何より出船20分前には、釣り人全員が釣り座で準備完了しているマナーの良さに、いぶし銀のゆとりが漂う。実に良い感じだ。
定刻の6時20分、定員36人の船に右舷5人、左舷4人という余裕の釣り座で「第十七まごうの丸」は茅ヶ崎港を出船した。
ひと流し目からクライマックス!
午前7時30分、城ヶ島沖に到着。魚群探知機で魚の反応を探す船長から「ウイリーでも食わなくないけど、オキアミの方がアタリ出るのが速いかな」とアドバイスを受けてスタート。指示ダナは、底から10~15mとやや高め。5分後にはコマセが効き始め、アマダイ釣りのゲストとしてお馴染みのトンビギス(ヒメ)から釣れ始め、メバルやアカイサキが釣れ始めた8時過ぎ、左舷ミヨシ(先頭)の実藤光一さん(入間市)のゲームロッドが鋭く引き込まれた。
上がって来たのは2kg超えのマダイ。産卵期のこの時期らしく、浅黒い“乗っ込みダイ”だ。実藤さんは3本バリ全てにオキアミを付け、船長の指示ダナで仕掛けを止めて待つ釣りをしていた。「メバルの小さいアタリも取れるように」と浅場で使うライトウイリーの軽量タックルを使っていたが、80号ビシのシャクリにも、このサイズの魚とのファイトにも充分の機能を発揮していた。
「何が釣れるかな」のワクワクも魅力
対象魚を限定しない“五目釣り”には、様々な魚と出会う楽しみがある。仕掛けを海底付近に置いておくと、たちまち釣れてくるトンビギスは、他の釣りでは“外道”と敬遠されるが、三枚におろして“なめろう”にすると乙な味だ。また、アカイサキも食味については誤解が多く、美しい皮目を生かしたカルパッチョやポアレ、この時期が旬のアサリと一緒にアクアパッツアにするなど、イタリアンやフレンチと非常に相性の良い魚だ。エラと内臓を取って2、3日冷蔵庫で寝かせれば、薄造りの刺し身はポン酢と紅葉おろしに良く合い、細作りにしてユッケにすると文句なく旨い。焼くなら何日か味噌漬けにするのも良いだろう。釣った日に食べるなら、フライにするのがお勧めだ。
メバルにカサゴ、アジ、イサキ、マダイは煮ても焼いても刺し身でも美味。この日には上がらなかったが、釣り味も魅力なキントキ、塩焼きが絶品のカイワリ、高級魚のハタや50cm超のアマダイも釣れるというから見逃せない。
釣り場を移動するたびに「ここは良い型のメバルが釣れる」、「魚探にアジの反応が…」と船長からアナウンスがあるので、タナや釣り方を工夫するのも楽しい。また、釣っている最中は勿論、それぞれの魚にはそれぞれの美味しい食べ方があり、帰りの車や家に着いてからも、あれこれ献立を考えながら楽しめるのも、五目釣りの大きな魅力と言えるだろう。
それぞれの五目釣り
当日の釣果はトンビギスを除くと25匹を竿頭に、おおむね20匹前後。この日、GW特典の抽選箱から無料乗船券を引き当てた石川喜一さん(秦野市)の釣果は、良型のカサゴを筆頭に、アカイサキ(オス、メス)、アジ、メバル、トンビギスの5魚種をGet。50年来の常連・宮崎正雄さん(相模原市)は「イカ船が満員だったから」とウイリー船に乗り替え、「いつもより渋いね」と言いながら、見事にアジやメバル、アカイサキの良型ばかりを揃えていた。
神田俊之さん(茅ヶ崎市)はアマダイを狙って低めのタナでトンビギスとの粘り強い格闘の末、良型メバルを中心に、マトウダイやアジ、アカイサキを釣り、「おかずには充分」とやりきった表情で満足気だ。
『まごうの丸』の常連さんには地元・茅ヶ崎や近隣の釣り人が多かったが、近年、入間市や飯能市からという埼玉県からの釣り師も増えたそうだ。入間市から茅ヶ崎へのアクセスは、圏央道と新湘南バイパスで約1時間にまで短縮され、川崎、横浜方面から来るより早いくらいだ。埼玉の皆さんにとって池袋が流行の玄関口なら、海の玄関口は茅ヶ崎になるのかも知れない。
この“ちょうどいい感”、分かるかなぁ~!?
“ウイリー五目”船の田中雄太船長は、1年を通して“ウイリー五目”を担当している。水深80~100mを狙う深場の釣りが、ロングランとなった今シーズンの理由を尋ねると「浅場でも釣れるけど、小さいアジばっかり釣れても困るでしょう」との答え。言われてみれば、この日の釣りを振り返ると、魚種や釣り座の釣果が偏らないよう、バランスを見ながらポイントを回ってくれていた。バラエティに富んだ魚種を、釣れ過ぎず、退屈しない釣果で。この“ちょうどいい感”が、常連さんやリピーターを離さない。この釣り、この船宿の魅力なのだろう。
今後はアジ、イサキ中心に!
今後、“深場の釣り”から、“浅場の釣り”へとシフトする『まごうの丸』の“ウイリー五目”。主役はアジやイサキになり、やがてグイグイと豪快な釣趣が魅力のイナダもターゲットに加わる。釣りは「フナに始まりフナに終わる」と言うが、船釣りは「“ウイリー”に始まり“ウイリー”に終わる」と感じられるほど、ノスタルジックな心地良さと奥深さが、この釣りにはある。初心者の方々は勿論、流行りの魚種や釣法に疲れを感じている腕利きの皆さんにも、“ウイリー五目”の丁度いい癒やし感を、是非一度味わって頂きたい。
今回利用した釣り船
〒253-0061 神奈川県茅ヶ崎市南湖6-4-16
(カーナビには「神奈川県茅ヶ崎市南湖6-18-7」で)
TEL:0467-86-5938
定休日:第1・3火曜日 釣果・施設情報 まごうの丸ホームページ
出船データ
基本料金=9,500円(氷・コマセ付き/HPに割引券あり)
(6時20分出船)
※貸し道具あり(予約時に確認)
※付け餌と仕掛けは乗船前に受付で購入のこと
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他