2016年06月01日公開
千葉県・御宿沖、三本松で“カモシ釣り”のヒラマサが釣れ出したとの情報。ワラサやマダイも交じって好調だとか。御宿から勝浦・川津地方に伝わる伝統釣法“カモシ釣り”は、伊豆の漁師の漁法が遊漁船に伝わったと聞いた。特殊な遊動テンビンとカモシ袋(布製のコマセ袋)で大物の突っ込みをかわす合理的な釣法だ。“大マサ”、“小マサ”の顔を見られたらと19日、御宿岩和田港『太平丸』に出掛けた。
カモシ釣りに嵌った釣り人たち
午前4時半集合とのことで、3時半に岩和田港に到着した。『太平丸』の船着場は港の一番東寄り(大原寄り)堤防の先だ。4時を過ぎると車が続々と集まり、カモシ釣りに嵌った釣り人10人が揃った。『太平丸』はオマツリを避けるため、予約で10人しか受けないとのこと。空の青さが増した5時20分過ぎ、大野利広船長操船の「太平丸」は岸を離れ真沖に向かった。
ミンチの溶かし具合もポイント
各釣り座には“カモシ釣り”の必需品、サンマのミンチが入ったポリバケツとコマセ注入ポンプが置かれている。サンマのミンチは海水で溶かすのだが、潮が速く波のある時は少し硬めに、ナギで流れのない時には、ドロドロの少し弛めに溶くのがコツだとか。釣り場は港から30分ほどの御宿沖・三本松。ここは今の時期、釣り開始は6時からという決まりがある(6月からは30分早く開始となるので集合時間も4時となる)。サンマのミンチは、条件に合わせ、適当な軟らかさに溶かしたら水鉄砲のようなポンプで吸い上げ、カモシ袋に注入、袋を満たす。そして、ハリにサンマの切り身やヒイカをセットして船長の投入合図を待つ。
いきなり9kgのヒラマサ2連発!2kg級のマダイも
ヒラマサ狙いは、ハリス14号で4ヒロ(6m位)、マダイ狙いは5号で6~7ヒロ(10m位)の仕掛け(1ヒロは約1.5m・仕掛けは図参照)。
「やってー!」の船長の声、指示ダナは40ヒロ(60m)、テンビンとオモリを投入、ハリスが引っ張られて海中へ。竿先を海面に着け指示ダナにハリスとクッションの長さ分をプラスして沈める。そこまで糸か出たら、大きく竿先を頭上までシャクリ上げる、一呼吸おいてサッと竿先を海面に戻す。カモシ袋のミンチがポアポアと流れ出す要領、これを繰り返しながら指示ダナまでカモシ袋を持ってくる。
開始から僅か7、8分、仕掛けが馴染んでコマセが効き出した時、右舷トモ(船尾)から2番の関口雅義さん(世田谷区)の竿先がガクガク、グィーと持ち込まれた。ドラグがジィジィ~と引き出される必死のやり取りの末、白い姿が海面に見えた。「デカイ!」。上乗りの差し出すタモに収まったのは9.3kgのヒラマサ。
そのハリを外し終わらないうち、今度は左舷トモの有井孝さん(柏市)の竿がガクガク、ジィー、格闘の末、ほぼ同型のヒラマサが取り込まれた。初っ端から9kg級の連チャンだ。
だが、それで終わらなかった、今度は左舷胴の間(中央)の山本豊さん(葛飾区)の竿にアタリ。三段引きで引き込んでいる。上がったのは色鮮やかな2kg級のマダイ、1人飛んでミヨシの関定夫さん(茂原市)にもアタリ。こちらは婚姻色のマダイ1.5kg弱か。関さん「餌のサンマを小ぶりに付け替えたら来ました」とニコニコ顔。なんとスタートからここまで20分も経っていなかった。
北東の風の中、ブリがワラサが“小マサ”が!!
時間と共に北東の風が強くなって来た。三角波が立ち、船が押されてすぐにポイントを外れてしまう。船長は魚探と周りの地形をみてポイントを流し直す。7時過ぎ、右舷2番の中村徳富さん(佐倉市)の竿が大きく撓みグイグイと引き込まれる、耐えて耐えて取り込んだのは8kg級のブリ。そして中村さんはこの後もワラサ、ブリとゲット!最後は5kg級のヒラマサも。左舷のトモから2番の飯田和男さん(葛飾区)が2kgのマダイを、右舷ミヨシの栗原正彦さん(佐倉市)が6kg級のブリをと船上を賑わせる。
終盤もヒラマサ、ワラサが!
ますます風が強くなったが、船長は釣れた航跡に沿って何度も流し直す。左舷2番の秋葉正二さん(山武郡)の竿先が真下にグイグイと引き込まれる、藍色の海中に白っぽい姿が見えた、6kg弱のヒラマサに、稲葉さん思わずエビス顔。その直後、右舷トモの松井洋一さん(九十九里町)が「やっと来たよ」とリーリング、仕掛けのテンビンを掴んで小振りながら3kg級のヒラマサを取り込んだ。時たま太ったサバが邪魔するが、潮回しの度にヒラマサが、ワラサが、そしてマダイが船中を賑わす。突然の大物らしきアタリに痛恨のバラシもあり、船長が悔しがる。
11時の沖上がり時には、船中ではヒラマサは9kg級4匹を含む計8匹(その内関口さんが9kg級を頭に3匹を釣り上げて大満足!)、ワラサはブリ級の8kg級2匹を含め5匹、マダイは2kg前後が4匹と数はまあまあもグッドサイズの釣果に、釣り人はカモシ釣りを堪能したようだった。
誰でも楽しめる“カモシ釣り”!
カモシ釣りは決して敷居の高い釣りではない。道具が特殊なだけで要はコマセ釣りだ。サンマミンチを溶かす要領とコマセワークのコツをマスターすれば、後は船長の指示ダナを守り、小まめに仕掛けの入れ替えをすればヒラマサやワラサ、そしてマダイに逢えるだろう。大野船長も「これからがシーズン。今シーズンも調子よさそうですね。時には10kgオーバーも顔を見せます。貸し道具もありますのでぜひ挑戦してください」と話していた。1度釣ったら嵌りそうな“カモシ釣り”です。