2016年06月15日公開
“黒いダイヤ”とも呼ばれる高級魚・クロムツ。ダイヤと呼ばれる所以には値段の高さだけではなく、釣るのが中々難しい希少価値にも起因している。通常は水深200m以上の深場を狙い、道具立てにも苦労する魚だが、静岡県・田子の浦港の『鶴丸』では、100m未満の浅場で気軽に挑戦出来るという。「本当にそんな浅場でクロムツが釣れるのだろうか?」。そんな疑問を抱きながら東名高速を西へと車を走らせた。
富士山から最も近い漁港
集合時間は午後6時半。田子の浦港は東名高速道路・富士ICからも近く、都心からも2時間弱。道中、富士山の壮大な景色を楽しみながら到着。港の入口には大きく「富士山にいちばん近い港」なるフレーズが。どうりで景色がいいはずだ。『鶴丸』は、船の前に直接集合。駐車場も船の目の前なので荷物の持ち運びが楽でいい。釣りの準備をしていると6時半には、同乗の釣り人7名が集まり、定刻の7時ちょっと前に鶴牧謙二船長の操船で舫が解かれた。
クロムツが岸の目の前で
最初のポイントは、港を出て航程僅か10分。過去にも何度かクロムツを狙った事はあるが、信じられない程の近距離だ。辺りはまだ薄暗くなり始めたところ。船長から「75~85mを誘って下さい」とアナウンス。噂通りの浅い水深だ。果たしてこの浅場にクロムツはいるのか?その疑問への答えはすぐに現実のものとなり、最初のアタリが開始早々2人同時に訪れた。右舷ミヨシ(船首)の鈴木博文さんと右舷トモ(船尾)の土屋和美さんのロッドが小気味良く海面に叩かれている。上がったのは30cm程の黒くきらびやかな“本命”。まさに“黒いダイヤ”であった。
汎用性高いタックルで対応可能なのがいい
さてタックルだが、使用するオモリが80号(潮が速い場合は100号)なので、対応可能なタックルの幅が広い。マダイやヒラメ用のロッドでもいいし、イサキ、アジなどに使用しているロッドでも対応可能だ。アタリ察知を重視するなら先調子の方がいいだろう。仕掛けも基本はハリスの全長が4.5m程の2本バリで太さは5号程度。これもマダイやイナダ用の市販仕掛けで十分対応可能だ。船宿特製の仕掛けは現在開発中だそうなので乞うご期待だ。
これならば深場用で中々道具立てに思い切れない人も、気軽にトライ出来るのではないだろうか。
コンスタントにアタリは続く
最初の2匹から後も、入れ食いとまではいかないもののアタリはポツポツと続いた。この日は餌としてサンマの切り身を使ったが、7人の内3人は集魚効果を狙ってオモリの代わりにコマセカゴでオキアミを撒いていた。日によってはオキアミが効果抜群の時もあるようだ。この効果は中盤に効いてきたようで、餌もオキアミに変えた左舷トモの小俣和敏さんは、時合に入れ食い状態だった。
誘いが有効!!
釣り始めて2時間程が過ぎ、ひとしきり皆が型を見られた頃、私も竿を出してみた。2本のハリにサンマの切り身を丁寧に付けていざ投入。指示ダナの85mまで落としてゆっくりと誘いを入れる。3秒程待ってアタリがなければ、また誘いながら1m上げる。最初の1投で早速アタリが来た。小気味良い引きを楽しんでの最初の1匹。次の1投も誘う、そしてまた誘うの繰り返し。例えるならば、ゆったりとしたライトウイリーといった感じだろうか。この誘いが有効だったようで、3連続でクロムツを掛けることが出来た。誘っているとアタリが来る。しかし、どうやらこの日のクロムツはかなり奥手のようで、なかなか“本食い”をしない。掛けられなくて、そのまま次のアタリを待っていてももう来ない。逆に誘いをやめないとガツガツッと来る。なかなかテクニカルな釣りで嵌りそうだ。
クロムツを気軽に始められてお勧め!
この後も午前0時の沖上がりまでポツポツとアタリは続いた。終盤には40cm級のどっしりとした良型も上がり、30cm級を中心として全体的に型が良かった。
数の方はいかに誘いを入れるかで差が出てしまったようだ。私も体感したが、誘った直後にアタリが多い。逆に誘いをいれないとアタリが来ない。しかし、それでも全員が“黒いダイヤ”の型を見られたのだから間違いなく魚影は濃い。
今までクロムツを食べてみたいと思っていたが躊躇していた人、「道具がない」という理由で思い切れなかった人達には手軽に、しかも高い確率で“黒いダイヤ”を入手できるチャンスなので是非お勧めしたい。田子の浦から出る半夜クロムツ釣り。今が熱いです。