2016年09月15日公開
“ノドグロ”の別名で知られる超高級魚・アカムツ。脂がしっかりと乗ったとろけるような味と滅多に釣ることが出来ない希少さで、「いつかは私も!」と恋焦がれるアングラーも多いはず。確かにそう簡単に釣れる魚ではない。しかし、夏から秋にかけての時期は高い確率で実績が上がっている。その代表格の釣り場の一つが茨城・波崎沖だ。波崎港『仁徳丸』に出掛けた。
夏から秋限定、浅場で楽しめる
波崎沖のアカムツの最大の特徴は浅場で釣れることにある。アカムツと言うと水深200~300mの中深場の釣りで、道具立てからハードルが高い印象がある。ではなぜこの波崎沖では浅場で釣れるのだろうか?アカムツは夏から秋にかけて産卵のために浅場上がってくる。特にこの波崎沖にある水深120~130mの“寒猫根(カンネコ根)”は、この時期のアカムツが集まる絶好ポイントなのだ。
軟らかく軽いロッドがお勧め!
狙う水深が浅ければタックルもライトなものとなる。使用するオモリは120号。この重さなら汎用性の高い、ごく一般的なタックルでも対応できる。しかし、確実に希少な超高級魚を狙うなら拘りも欲しい。アカムツは口が非常に弱い魚である。120m程度の水深といえども、上げてくるのにはそれなりの時間がかかるので、その間のやり取りでハリ穴が広がらないように軟らかめのロッドが好ましい。調子は6:4から7:3程度まで。そして、重要なのは一日手持ちの釣りにも耐えうる軽さ。コマセマダイやヒラメ用のロッドなども好適だと思う。
小雨が土砂降りに
利根川河口付近に停泊している「仁徳丸」に午前4時半集合。午前3時半頃に港に着くと、既に15人ほどの釣り人が準備をしていた。さすがは人気ターゲットだ。残念ながら集合時は小雨。しかも段々と強さを増し、定刻の4時半過ぎに合計18人を乗せた「仁徳丸」は土砂降りの中、航程45分程の“寒猫根”を目指して出船した。
ある程度のアピールが効果大
仕掛けにはある程度のアピールするものが欲しい。ケミホタルや水中ライトなどは良いアピールになる。タコベイトなどでもよい。しかし、あまり色々な装飾を付けると、周りとのオマツリの原因にもなるので注意が必要だ。餌は船宿からはホタルイカが配られる。『仁徳丸』で勧めているのは胴の部分を取り外し、内臓を剥き出しにして匂いでアピール。ハリを両目の真ん中あたりに刺す。それ以外にサバの切り身、サケ皮などを持参している人もいる。ホタルイカと抱き合わせで付けると効果大だそうだ。
朝一は“高級ゲスト”が活発な動き
ポイントに着く頃には雨もすっかりと上がり、周りに目をやると、南は飯岡港から北は鹿嶋港まで合計10隻を超える船で賑わっていた。第1投は午前5時半、水深130mのポイント。黄緑色に怪しく光るライトが水中へと引き込まれる。右舷トモ(船尾)で様子を見ていると、挨拶代わりの一撃が着底した途端に訪れる。まさに瞬殺。アカムツの場合は、すぐにそれと分かる程の強い引きを見せる。そして海面付近まで30m毎ぐらいに竿を叩くような激しい引きが続く。最初の1匹もそれなりの引きを見せるが、どうもアカムツのそれとは違う感じ。期待に胸を膨らませて130mの行程を上がって来たのは良型のオキメバル。“本命”ではないが嬉しいゲストだ。その後も次々とアタリは続く。しかし、どういう訳かオキメバルから始まり、ホウボウ、アラ、ユメカサゴ、そしてサバと“本命”が上がらない。
釣行開始1時間、嬉しい“本命”!
絶え間ない“ゲスト”からのアプローチで楽しい時間が過ぎていくが、やはり“本命”が欲しい。釣り始めて1時間が経った午前6時半。左舷ミヨシ(船首)と右舷ミヨシでほぼ同時に強いアタリ。「アカムツだ!」。サイズこそ塩焼きサイズだったが、嬉しい“本命”である。アカムツは同じポイントで連続して釣れることが多いという話の通りである。希少魚の代表格でもあるアカムツ。さすがに入れ食いとはいかないまでも、“ゲスト”に交じる形でポツリポツリながらも“本命”が顔を出した。この日が初のアカムツ釣りという右舷胴の間(中央)の湯浅佳則さんも嬉しい“本命”を手にすることが出来た。
トップはなんと7匹
この日は天候も不順で、雲の流れ次第で雨が降ったり止んだり。魚の機嫌もそれに左右されてか、途中からはあれほどアタっていた“ゲスト”も釣れなくなった。しかし、ここで“腕の差”を俄然見せつけたのが左舷大ドモに座る佐藤博貴さん。シーズン中は足しげく『仁徳丸』に通うベテラン。途中から怒涛の連続ヒットを重ねた。一人でアタリを連発させるのにはやはり訳がある。頻繁に、しかもゆっくり丁寧に手持ちで誘いを続けていた。そして午前10時に43cmの良型を釣り上げた。この後も佐藤さんは“孤軍奮闘”で、終わってみれば圧巻の7匹のアカムツを釣り上げていた。
重要なのは根気良く誘い続けること
この日は、全体的にはあまり食いがいい一日ではなかったが、その中でも手持ちで根気強く誘いを続けるかどうかで釣果に差が出た。“赤いダイヤ”とも言われるアカムツ。『仁徳丸』では、11月まで浅場でアカムツを楽しむことが出来る。比較的ハードルが低いこの時期に是非チャレンジしてみては如何だろう。