2016年09月15日公開
度重なる台風来襲にうんざりしていたが、早くも秋の気配。そんな中、千葉県・洲崎港『北山丸』から、オニカサゴが本格的なシーズンインとの朗報。それでは“鬼退治”とばかり、キビ団子ならぬサバの短冊とスーパーで購入した生サンマの開きを持って勇んで出掛けた。結果は、潮が速く釣りにくかったにも関わらず1.2kgを頭に計7尾(内小型3尾は放流)にウハウハ、気分は桃太郎!
鮮魚店ではお目に掛かれぬ高級魚
オニカサゴ(和名・イズカサゴ)の呼び名に相応しく朱色の魚体に大きな口、毒をもった多数のトゲが背ビレ、胸ビレ、頭や顔周辺にある。鮮魚店やスーパーではまずお目に掛からない高級魚だ。深海からの“ゴンゴン”のシグナルの釣り味もさることながら魅力は食味。白身でプリプリとした食感、刺し身は勿論、煮付け、唐揚げ、塩焼き、シャブシャブ、鍋料理と何にしても絶品な魚である。料亭で食べればオニカサゴ釣りに何回も行けそうな値段を取られる。
オニカサゴに魅せられて
台風の影響にお盆休みも重なって半月ぶりの出船とか。午前3時に『北山丸』看板下の駐車場に着くと既に2台の車が停まっていた。前泊の釣り人の車のようだ。車の中でひと眠り、人の声に目が覚めると、数人が宿前の明かりの下で釣り談義。集合時間の4時30分には10人が集まった。待合所に明かりが灯り、大船長の北山辰蔵さんが軽トラックで目の前の岸壁に。若船長の北山茂樹さんが船に明かりを灯すと、僚船も一斉に明かりを灯し、港がパッと明るくなった。釣り人は氷とサバの短冊のパック(餌)をもらって船に向かう。予約乗合船は「北山丸」で、操船は茂樹若船長。辰蔵大船長は「第八北山丸」で5人の仕立船とか。乗合船も私を含めて5人、右舷のトモ(船尾)が空いていると言うのでそこに入れてもらった。白みかけた空の下、定刻の5時に南西の風の中、真沖に向かった。
速い潮、“鬼退治”なるか?
右舷3人、左舷2人の大名釣り。30分程でポイントへ。台風の影響を心配したが、南西風が多少吹いているだけだった。根の点在するポイントで船首が風上に向けられた。「やって下さい。タナは120m、段々深くなっていきますよ」とのアナウンス。2本バリの吹き流し仕掛けにサバの短冊を付けた。150号のオモリに引かれて、銀色の短冊は海底へ引き込まれて行く。PE3号の道糸が大きくトモに流れる。上潮(海面に近い潮)が速そうだ。120mの着底には少し時間が掛かる。潮が速いのも先日の台風の影響か。その上、タナが取り難い二枚潮、電動リールのメーターが138mを示した。
それでも1.2kg級!
オモリの着底を確認しながら糸フケを取り、オモリが海底を叩いたところから竿先をスーッと50cmほどシャクリ上げ、今度はゆっくりと落とし込んで行く。これを2、3回繰り返していると竿先に“ゴンゴン”のアタリ。少し間を置き、引き込みを待つ。胸の高鳴る瞬間だ。引き込みを待って竿を大きく煽り3、4回手巻きでリーリング。するとグングンの引き込み。電動リールのスイッチON。途中カグガクと引き込む。「これは“本命”だ!」の確信。リールがピッピッとなって後5mを知らせる。竿を立てて道糸を掴むと、海中に朱色の影が見えた。船長が差し出すタモに無事収まったのは、正真正銘の1kgオーバー。おまけに上バリに300g級も掛かっていた。こちらは“再会”を願って放流。
釣り仲間と『北山丸』の「大カサゴに嵌った」と言う胴の間(中央)の松久正喜さん(杉並区)が「仕掛けが途中で止まっちゃったよ」と叫ぶ。竿先がグングン引き込まれている“本命”とは違いそうだ。丸々と太ったサバが1尾、2尾取り込まれた。
サバに悩まされるも…
松久さんの仲間でミヨシ(船首)で竿を出していた志平達夫さん(武蔵野市)の竿先を揺るがしたのもサバ。大きいものはマサバ、少し小振りはゴマサバとサバの猛攻だ。そして松久さんの竿先に今度はサバとは違うアタリ。クンクンという引き込みに皆の視線が集まり、船長もタモを持って海中を見つめる。海中が赤っぽい、「“本命”か」と期待したが手の平大のレンコダイだった。左舷トモでも常連の本多正樹さん(千葉市)が「下ろしている途中でサバが食っちゃうよ」とボヤく。操舵室の魚探の画面を見るとサバの影がビッシリ。「サバが居るような所じゃないとカサゴも食わないよ、頑張って!」と船長のゲキが飛ぶ。
月に2、3回は来ると言うミヨシの福永孝さん(横浜市)も「“本命”のアタリはないよ、サバばかりだよ」と嘆き節。私も130mを探っているにも拘らず40cm近いサバ。底でもサバだ。気を取り直して、今度は持参したサンマを短冊に切ってハリに付けた。すると、仕掛けが底に着き、誘いをかけると直ぐにアタリ。巻き上げ途中も潮に引かれて大きさの予測つかなかったが、700g級をゲットした。しかし、相変わらずの二枚潮でオマツリ連発。
コツはタナ取りをこまめにすること
皆さんその後もサバに悩まされる。私は終始竿を手持ち、小まめにタナを取り直しながらサバを避け、オモリで底を叩いたのが功を奏したのか“ゴンゴン”のアタリが続き、放流サイズ(300g級)を含め7尾をゲットした。この日はオモリが海底に着いたのを確認して誘い上げていると、潮が速くオモリが浮き上がってしまう潮況。こうした時には、面倒でも直ぐに巻き上げて仕掛けの入れ直しをしてタナを取ることが重要。北山茂樹船長も「タナ取りがキモ」と言う。また、支給された餌のサバの短冊は身の部分が多く付いているので、2mm位にまで削ぎ落としてヒラヒラさせた方が食いはいい。これからは、型も数も狙えるシーズンになる。