2016年10月01日公開
「天高く、馬肥ゆる秋」。この時期の長雨は、マヅメ時のような薄暗い時間帯を拡大し、潮に適度な濁りを発生させるなど、コマセ釣りに味方することが多い。しかし、今年は台風が多過ぎる。しかも週末に…。この溜息が天に届いたか、9月25日の日曜日、天気予報は風もなく曇り。「これはイケるかも知れない!」。シケ後の荒食いを夢見て、千葉県・南房総、千田港『小倉丸』に出掛けた。
条件は揃った、あとは……!
“マダイ五目”乗合船の集合は午前5時。『小倉丸』の待合所を覗くと、和気あいあいとした雰囲気で、釣り人たちと船長が談笑していた。予約順に割り振られた釣り座を見ると、両舷4人ずつのゆったりモード。夜明け前に車窓を叩いた雨は上がり、海は風もなく静穏。予約者全員の乗船を確認してちょっと早めの5時20分に河岸払いとなった。低く垂れ込めた空の下、潮はほんのり濁ってトロリと流れている。条件は揃った──あとは釣るだけだ!
ポイントまで僅か10分!
船は10分足らずで最初の釣り場に到着。水深37mのエリアからスタート。船中1匹目は左舷トモ(船尾)の矢野俊策さん(横浜市)。毎週2回は乗るという常連さんだ。小気味よい引きで上がって来たのは食べ頃サイズのイサキ。間もなく“本命”のマダイを取り込んだのは、左舷ミヨシ(船首)の島田勝美さん(南房総市)。冬のヒラスズキ・シーズン以外は毎週『小倉丸』に通うという、こちらも筋金入りの常連さん。この日、主に竿を曲げたのは中型のイサキで、これに1kgサイズのマダイが交じるという釣況だったが、釣れてくる魚はハリを飲み込んでいる事が多く、どうやら魚の活性は高いようだ。
釣り師の“引き出し”
「潮が流れないねぇ」。船長のぼやきがスピーカーから流れても、釣り人たちは笑いながらそれぞれの工夫でアプローチしていた。誰もが試すのは“ハリスの号数を落とす”もしくは“ハリスの長さを替える”。潮の流れが緩いこの日は“ハリスをやや細く、短くする”ことが効果的だったようだ。こういう時に、2段階の太さのハリスを連結する「テーパー仕掛け」は融通が利くらしい。また、“小さい餌を2匹掛けにする”、“小まめに誘いを入れる”などの小技も釣果に影響していて面白い。ただし、「船長の指示ダナは守る」。これだけは厳守。
“ゲスト”フィッシュも色々
“五目釣り”の楽しみは、“本命”以外の“ゲスト”フィッシュにある。皆さん7~10匹は釣っていた食べ頃サイズのイサキ。カツオ類の中で一番美味とされるスマガツオ。オキアミ餌にも食ってくるマハタ。肝とアラの味噌汁がお勧めのウスバハギなどが交じった。またこれからの時期はワラサやショゴ(カンパチ幼魚)などの“青物”、ポイントが深場に移るとチカメキントキやアマダイなども釣れると言う。帰りの車で「あの魚は焼いて食べよう。この魚は煮付けてみよう」、「いっぱい釣れたからフライにしちゃおうかな」と、あれこれ献立を考えるのも楽しいものだ。
実はビギナーにもオススメ
右舷3番で釣っていた陶さんは、普段、モロコなどを釣る大物師。この日は会社の友人、船釣りは初めてのフィリップさんを連れて乗船した。「釣り場が港から近いし、タナも浅いから初心者向きだと思って」。確かに、長ハリスの難しさはあるものの、アットホームなこの船の雰囲気となごやかムードはビギナーにも安心だ。結果、フィリップさんは初めての釣りにして、イサキ8匹をゲット。この笑顔に、もはや説明は蛇足だろう。
秋の“爆釣”は秒読み!
「良い濁りだったが潮が効かなかった。まだムラはあるが海が落ち着けば釣果も安定するはず」と船長。取材前日には3.9kgのマダイも出ていた。秋の“爆釣”まで秒読み段階か!?
なお、この日に釣ったイサキとマダイは、全身にしっとりと脂が回った“上物”で、旬のカボスを絞って塩で頂いた刺し身は絶品中の絶品。塩焼き、ムニエル、アクアパッツアとお勧めは枚挙にいとまは無い。まずは釣り味と食味の両面を、期間限定・秋の風物詩として、一人でも多くの太公望にご賞味頂きたい。
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他