2016年11月15日公開
イカ釣りは“面白い”と同時に“難しい”。水深200m前後の深い海の底から、ツノに触ったイカのアタリを取り、身切れをさせずに巻き上げて、長く絡みやすい仕掛けに付いたイカを手際よく取り込むには、それなりの経験と技術が求められる。実のところイカ釣りは劣等生の当方。「石花海(せのうみ)で調子よく釣れている」との情報を得て、静岡県・御前崎港の『博栄丸』へと武者修行に出掛けた。
走行距離の割に運転ラクラク♪
『博栄丸』が出船する御前崎港は、東名高速・相良牧之原ICからバイパスで20分少々。首都圏からだと距離としては200km以上あるのだが、ほとんどが高速道路での走行なので体感的には決して遠くない。サービスエリアで休憩しつつ、のんびり深夜のドライブを楽しみながら御前崎港へと向かった。
心配された西風も止み、雲は切れて夜明け前の空には冬の星座が燦然としていた。集合時間になるとクルーザータイプの「博栄丸」が集合場所の岸壁に着岸し、軽トラックの荷台を利用した受付で乗船の手続き。予約者全員の乗船を確認して河岸払いとなった。
イカ釣りあるある
ナギの海を走ること1時間余り。到着したのは水深150m、石花海・合ノ瀬(あいのせ)エリア。竿入れの午前7時を待ってスタートした。しかし、竿先を叩くのは元気なサバのアタリ。時折、イカがツノにグッと乗るアタリがあるのだが、巻き上げの途中で別のツノにサバが掛かり、イカを振り落としてしまう。こんなイカ釣りによくある困った状況の中にあっても、末席で竿を出す上乗りの大船長だけがポツリ、ポツリと“本命”を取り込んでいた。
2時間の沈黙、からの…!
そんな膠着状態が破れたのは8時50分。右舷胴の間(中央)で釣っていた高木正彦さん(岐阜市)が、釣り人としてはこの日1杯目となるヤリイカをゲットした。「底でツノが動かないようにしていた」と言う“静かなアプローチ”がこの日は功を奏した。ここから徐々にイカたちの活性が上がり、9時30分頃には水深200m前後で入れ掛かりの一幕もあった。
石花海のヤリイカ釣りはちょっと違う
イカ釣りと言えば、8:2くらいの先調子の竿で、シャクリながら広い層を探るのがポピュラーな釣り方だが、ここ石花海の釣りはちょっと違う。船中の約半数は、7:3から6:4のやや軟らかい調子の竿を使って、オモリを海底に置いたまま(あるいは引きずりながら)仕掛けをフワッ、フワッと煽ってツノを踊らせるような誘いを入れる釣法が多く見受けられた。私もこれをまねて、ムーチング・ビシ竿(死語?)のような調子の2.4mの竿で試してみたが、これがこの日の状況にはピッタリで、ズン!ズン!ズン!で3点掛けと、竿先に出る“目で見るアタリ”の取りやすさや、イカを掛けてからサバを避けて、高速で巻き上げる際のバラシ予防にも効果があったようだ。もしこのテの竿をお持ちなら、いつものイカ竿にプラスαして、船に持ち込むことをお勧めしたい。因みにこの日、サバの多い時でも直結仕掛けを使う釣り人は居なかった。
この日の釣り模様
この日、竿頭を競ったのは左舷大ドモ(船尾)の佐藤邦昭さん(浜松市)と、その隣の大場勝一さん(袋井市)。砂地の海底でオモリを引きずる釣りの佐藤さんと、アタリヅノを探して頻繁に仕掛けを入れ替える大場さんは、いつも一緒に釣りを楽しんでいるとのこと。この日もダジャレを言ったり、冗談を言ったり、オマツリしたりと、何をしていても楽しそうだった。
結果、30杯で竿頭となった大場さんは、オモリで底をトントン叩いたり、オモリを底に置いて仕掛けを弛ませては張るという釣法を使い分けながら、着実に数を伸ばしていた。
「悠々として急げ」が石花海流
今シーズンのヤリイカについて大澤洋輔船長に聞いた。
「今年は例年よりスタートが早かったけど、まだ数や型にムラがある」とのことで、石花海名物の“パラソル級”と呼ばれるビッグサイズが釣れるのはこれからのようだ。数を釣るコツは「なるべくおろしたてのツノを使う」、「仕掛けをシンプルにして、なるべく“金具”を用いない」、「仕掛けの投入を早くする」、「釣れているタイミングに釣れなかったら、50mくらい巻いて再び落とす」、「釣れる時合に古い仕掛けを使わない」の五箇条と、「朝に釣れなくてもメゲない」ことが大切だそうで、確かにこの日もバリバリ釣れるタイミングは、開始から2時間以上経った後のことだった。「悠々として急げ」と言ったのは開高健だが、このペース配分を持って挑むのが、石花海のヤリイカには得策のようだ。
これからの季節、ひと潮ごとに大きくなる石花海のヤリイカ。寒さや海況は厳しくなるが、充実の装備とコルク張りのデッキが温かい「博栄丸」で、ヤリイカ釣りを快適に楽しく、満喫していただきたい。
今回利用した釣り船
出船データ
乗船料金:1万3,000円(氷付き)
集合:船着場へ5:30(釣り場により変動あり、予約時に確認を)
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他